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戦場掃除

翌日、日が登るのと同じくらいには城を出立し、戦場掃除を開始する。

重太と弥太は今頃、城の一室でぐっすりと休んでいる事だろう。

あの後、部屋に戻って体を休めている間に、二人は眠ってしまった。

それを起こすことなく置いてきてしまった。

後で怒るかもしれないが、まだ元服前の身である以上、必要以上の刺激は必要無いと私が判断したためだ。

このような場所に馴染まれても嫌だし、精神的にやられてしまっても困る。


夜陰もあって、わかりづらかった物が、朝日に照らされ視界に入る。

何というか、これは精神的に来るものがある。

地面を染める真っ赤な鮮血。

転がる遺体。

刀で斬られたか、槍で飛ばされたか、それとも矢で撃ち抜かれたか。

様々な形の肉片があちらこちらにある。

独特な臭いが辺りを支配している。

思わず吐き気が込み上げてくる。

それは私だけでは無いようで、戦場でのある種の興奮状態から解き放たれた兵士達も同様のようだ。

それでも、こらえて仕事に精を出すしかない。

本来なら近隣の住人にやらせたりするようなのだが、残念ながらそんな金は今の城にはありません!

そりゃ、兄上に相談すれば何とかしてくれそうだけれど、何でもかんでもというわけにはいかないだろう。

さすがに元服して大人の仲間入りを果たした訳だし。

それに、昨日、三人に私が中心になって行うといってしまった訳だから致し方ない。


兵達を5人組に分けて、事にあたらせる。

ただ分散してやるだけじゃなくて、チームとして行動させることで効率を上げようという作戦だ。

その際、刀や槍に鎧兜などの装備品は、片っ端から回収させていく。

その辺に転がしておいても無駄になるだけだし、それこそ他の誰かに回収でもされたら事だ。

それを手に、こちらに向かってこられたら大変だ。

また、全ての兵達を散会させたわけではない。

大きな穴を掘る必要があるからだ。

そこに亡くなったもの達を集め、土に埋める。

そこらに放置しておけば、腐敗するのは目に見えているからだ。

共同墓地というにはあまりにも扱いが悪いが、ここは許して欲しい所だ。

次々に運ばれてくる遺体が、戦いの凄惨さを伝えてくる。

出来るだけ戦いたくは無いが、それでも戦うからには勝たなければならない。

そうなると、やはり遺体は生まれる訳で、何とも罪作りな時代だと思わせる。


ある程度片付いたかなという辺りで、城より伝令が飛んでくる。

定満からの使いのようだ。


「ご苦労様。いったいどうしたの?」

「はっ、定満様よりこれを預かってきました。」


差し出された書状を受け取り、つらつらと読んでいく。

そこに書かれていた事に驚かされた。


「すぐに城に戻るわ。皆、後頼んでもいい?」

「はっ、かしこまりました。」

「大変な作業を途中で抜け出すことになって、何だか申し訳ないわね。」

「構いません。それよりも大事が待っているのでしょう。直ぐにお戻りを。」


手近にいた者に伝えると城に戻り、定満の元に直行する。

何せ、昨日戦った連中が手の平を返すように、あっさりとこちらの軍門に降ってきたからだ。

しかも、こちらからの調略を受ける前からだ。

さすがに呆れてしまう。

そりゃ、自分の保身を考えれば当然の事なんだけど、それなら始めから兵を出すなよと言ってやりたくなる。

敗れた長尾平六郎の立場が無いではないか。

しかも、どうにも降るから所領を安堵しておいて欲しいと、ぬけぬけと言っているようだ。

どうにも虫が良すぎる。

はっきり言って私は反対だ。

だが、栃尾城の近隣を制圧していくのには許した方が手っ取り早い。

でも、そんな連中は信用に置けない。

下手をすれば、敵方に呼応して裏切られるかもしれない。

この事を定満に伝える。


「確かに、その危険性はついて回るやも知れませんな。」

「そうでしょ。確かに、こちらに味方につけるのは大事な事だけど、信用ならないんじゃどうしようも無いでしょ。」

「では、こやつらの首を取りますか?」

「それは短絡的というものよ。所領安堵は認められないけれど、出ていくならば命は取らないってところが妥当よね。」

「相変わらずお優しいですな。下手をすれば、命を狙われるやも知れませんのに。」

「だとしてもよ。益の無い殺生なんてそれこそ御免よ。それに景家が、平六郎の所領の接収が終われば、反抗のしようも無いでしょうし。」

「益が無い訳では無いのですが。ふむ・・・ではそのように。」


何か思うところがあったのか、直ぐに承諾したものの何か奥歯に物が引っ掛かったような返答だ。

おそらく思い描いていた展望と違ったんだろう。

投降を受け入れると考えたんじゃ無いだろうか。

だけど、頭ではその方が良いかもと考えても心がついてこない。

心がついてこないものは、大抵後で良くない事が起こる気がするし、自分でも後悔することにも繋がる。

定満には悪いけれど、ここは我を通させてもらうこととした。

ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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