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少年

拾った子は、名を重太と名乗った。

どうやら男の子のようだ。

まだ幼いということと、満足に食事を取ることが出来ていなかったのだろう。

痩せぎすの体からは、性別を伺う事は出来なかった。

食事を与えると、それこそ貪るように食べていた。


「誰もとらないから、ゆっくりお食べなさい。」


そう私が言っても、頷くだけで止めることをしなかった。

気持ちは分からないでもなかった。

私が見つけるまでのしばらくの間、食べるものもなくフラフラとさ迷っていたというのだから。

もうダメだと覚悟して、最後にたどり着いた寺の門でたまたま私が見つけたという事だった。

重太は猟師の息子だという。

だが、ここのところ獲物も取れず、兄弟の食扶持を何とかするために家を飛び出したというのだ。

なんという時代なのだろうか。

子供が満足に食事をすることも出来ないというのは。

様々な事を教わってきていたし、越後という国が貧しいという事も理解しているつもりだった。

だが、あくまでも“つもり”だったようだ。

私がこれから何が出来るのか。

今はまだ何も出来ない。

御兄様にお願いして、ようやくこの子の分の食料を得ることが出来ているだけだ。


段々と回復していくと、重太を天室光育和尚に引き合わせる事になった。

どうにも、和尚がニヤニヤと笑みを浮かべていて不気味に感じた。


「その子が虎千代殿が拾ったという子供か?」

「ええ、その通りです。重太といいます。さぁ、重太。ご挨拶なさい。ここ、林泉寺の和尚様ですよ。」

「重太といいます。助けてもらってありがとうございます。」

「ああ、私は何もしてないよ。別に、寝床くらいなら適当に空いている部屋を使えばいいだろうし、食事の方は虎千代殿が何とかしてくれるという話だからね。」

「えっ!そうなのですか?」

「まあ、そうは言っても全て御兄様のお力にすがっているだけで、私はなにもしていないけどね。」


何故か、キラキラとした目で重太がこちらを見てくる。

だから、私が何かしたわけではないというのに。

それを見て、よりいっそうニヤニヤと笑う和尚。

その笑みを是非とも止めていただきたい。


「まあ、しばらくのんびりとするといいよ。体の調子が戻ったなら、寺の仕事を手伝ってもらう事になると思うよ。」

「ありがとうございます。」

「ああ、チャンとお礼が言えるのは良いことだね。これからの事は虎千代殿に全てお任せするから、よろしくね。」

「はい、それは勿論。」

「うんうん。それじゃそんな感じで。」


こうして、あっさりと重太は受けいれられる事になった。

寺のトップが認めた以上、他の僧侶達からは表面上は不満がでなかった。

しかし、飢えた子供が受け入れられたという話は直ぐに噂として辺りに伝わり、幾人かの子供が寺に受けいれられる事になる。

といっても、たまたま私が寺の門の辺りを掃除する当番の時のみの話ではあったが。

子供が増える度に御兄様に手紙を出す。

そのうちに怒られそうなものだが、気のいい御兄様は文句も言わず助けてくれた。

他の者達は見てみぬふりをしていたようだ。

というのも、人を受けいれようにも食料の宛がある者は、私以外にいなかったからだ。

助けたくても助けてやれない。

和尚の行った行動は、ある種の成約になっているようだ。

何でもかんでも受け入れていては、寺の運営はたちいかない。

それもあって私の評判は上がっていくが、他の者はそういうわけにはいかず、大分恨みを買うような形になってしまっていたらしい。

段々と、ギスギスする先輩の僧侶達との関係に悩むことになる。


結局、私が面倒を見ることになったのは、重太を筆頭に弥太という男の子が一人。

それに妙、結、香という女の子が三人だ。

男の子と女の子達を同じ部屋に住まわせるというのはどうかということで、別の部屋を用意してもらった。

彼女達は、離れに住まわされる事になった。

重太と弥太は私と同じように過ごし、女の子三人は飯炊きなどを手伝うことで生活していくことになる。

重太も弥太も頭が良いのか、教えられたことをスポンジが水を吸い上げるが如く知識を得ている。

これから成長していけば、腕っぷしもついてくるだろうし、今後私の元を巣立つ時が来ても、安心出来そうな気がする。

女の子は、受け入れられないような話も出たようだが、まだ幼い事もあったのと「まあいいんじゃない?」という和尚の一言で方がついてしまった。


とはいえ、ある程度の区別のような物は必要となったのだろうか?

食事は、僧侶達と共に取ることを許されず、別室にて取ることになった。

また、僧侶達は米を食べていたが、子供達は雑穀を混ぜた物とされていた。

おかずも多少の格差がつけられた。

食事一つとっても差をあえてつける事で、不満を押さえようとしたのかもしれない。

それでも子供達は喜んで食べていた。

ちゃんと一日二食取れるなど、これまでの生活ではあり得ないという話だった。

子供達の笑顔を見ると、それだけで心が温かくなるようだ。

全てを助けることは出来ないけど、何とか自分の手の届く範囲にいる子達は、この子達は何としても守っていこうと決意を固くした。

それからしばらくは平穏に過ごしていたのだが、あるとき事件が起きた。

ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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