表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/130

比叡の山を登る

半月ぶりです。

天皇陛下への拝謁も済み、河原者とも会うことが出来た。

次に何をすべきだろう。

公方様と後は会うだけだけど、待ち時間をそのまま遊んでいるのもね。

京の待ち巡りも、一応してみた。

荒れに荒れた下京と、それなりに活況の残る上京。

面白いと感じる者もいるかもしれないが、私にはとても楽しめる状況では無かった。

応仁の乱より続く、中央政権の瓦解による混乱が今なお続いていると考えさせられる。

このような状況を打破する為には、幕府の建て直しがもっとも早いと思うのだけど、どうなんだろう?

京より遠く離れた地域では、今も将軍の威光は十分に発揮されている。

日本各地で戦端が開かれているが、将軍が仲立ちすることで治められている事も多い。

今、力が無いなら、先祖を倣って一時京より落ち延びて、巻土重来というのもありなのかもね。

今は、六角家が後ろ楯についているから、大丈夫だと思うけど。


さて、それほど楽しみを得られなかったものの、それでも収穫はあった。

やはり、京は日本の中心地であった。


「これ、いいものね。」

「お客さん、わかりますか!そりゃ、唐物の茶碗ですよ。」

「うん、悪くない。」

「悪くないのか?」

「聞くなよ。」


フラフラと京の街を散策していると、出物と呼べるような茶碗を扱う店を幾つか見ることが出来た。

それらを幾つか購入し、兄上にお土産として持って帰ることにした。

勿論、全部が全部というわけじゃないけど。

それでも、兄上に幾らかの迷惑をかけてしまったのも事実なので、そのお詫びも兼ねてというわけ。

そんな私の後ろで、護衛という名目で付いてきていた貞興と繁長がなにやら話している様子。

二人には、さすがに目利きは出来ないようね。

もう少し、審美眼を養わせなきゃいけないわね。

ただ、武威を誇るだけではない、一段違った男になってもらわないと。

とはいえ、興味の無いことを押し付けて、敬遠されるような事にもなりかねないから、その辺は慎重にしないと。


「さ、次に行くわよ。」

「「はーい。」」


それからしばらく。

京の都を散策し続け、屋敷に戻った頃には、夕刻になっていた。

日が傾いて来ていたからこその帰還となった。

にこやかに、兄上に昼間獲得してきた茶碗を差し出すと、しげしげとそれを見つめている。


「へぇ、唐物か。」

「ええ。兄上が好きじゃないかと思って。」

「うん?確かに嫌いじゃ無いよ。結構良さそうな物を貰っちゃって悪いね。」

「お気になさらないでください。」

「そうかい?いや、それじゃありがたく。ところで、京の都は気に入ったのかい?」


兄上の質問に対して、気に入ったという程でも無いけれど、嫌いでも無いと答える。

戦乱の世であるがゆえの悲哀もあるが、それでも洗練されたものも同時に存在するこの場所は、意外と嫌いにはならなかった。


「ま、気に入ったかどうかはさておき、もしかして結構暇なんじゃない?」

「そうですね。公方様待ちなところがありますから。」

「なるほどね。そこで質問なんだけど、いいかな?」

「ええ、何でもおっしゃってください。」

「景虎は、いつ頃比叡山に向かうんだい?」

「え?」

「ん?」


比叡山?

あー、そういえば京に到着した頃、そんな話もあったような・・・

いや、確かにしていた。

天皇陛下や公家衆、公方様以外にも顔を出すべきだと確かに言われていた。

うん、まんまと忘れていたわね。


「あー、どうしましょうか?」

「どうするもこうするも、行ってきたらいいよ。比叡山の宝物なんかは見れないかもしれないけど、それでも仏教の一代勢力なんだから。それに、歴史もある場所だからね。」

「あ、じゃあ、そうします。」

「話している時は素直にしてるんだけどね。すぐに別な事に意識をやってしまうのは、悪い癖だよ?」

「うっ、気を付けます。」


よもや、小言を言われるはめになるとは、思わなかった。

いや、言われるような原因を作った私がいけないんだけど。

兄上も、もっと早くに言ってくれたら良かったのに。

それはそれとして、急に向かったとして迎え入れてくれるだろうか?

なんの連絡も私からはしていない。

あくまでも、お寺なんだから気にしなくてもいいようにも思えるけど、相手はあのビッグネームの比叡山延暦寺。

何か気に入らない事があれば、強訴という名の強権発動すらするという武闘派集団。

私なんかが気軽に行ってしまって良いのだろうか?

いや、よくないわよね。

うん、きっとそう。


「あ、心配は無用だよ?一応連絡はしておいたから。」

「あ、そうなのですか?」

「宗派は違えど、天室光育和尚の名は結構知られていてね。その弟子でもあることを告げたら、是非いらしてくださいとの事だよ?いつ行けるかまでは明言していないから、さすがにお偉方は相手が出来ないとは言っていたけどね。」

「大丈夫ですよ、兄上。徳の高い方のお話を聞くのも大事ですけど、それ以上に仏様に手を合わせる事の方が大事なんですもの。」


そうして私は、ようやく比叡山を登る事となった。

観光地として、現代では有名な場所。

どうして失念してしまっていたのかしらね。

色々ありまして、遅くなりました。


ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
押してくれれば一票入るようです。どうぞよろしく。 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ