表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/130

いざ河原へ

何はともあれ、天皇陛下にお目にかかる事も済んだ。

しかし、名誉な事ではあるけど、気疲れが凄い。

私が出なくてはならない場面を除いて、他の人物に対応してもらいたいものよね。

それこそ、私の代理でなら、兄上こそがそれに相応しいと思うのよね。

多分今なら、趣味“風流”とか言えそうなくらいに没頭してるものね。

そんな人なら、公家の方々と相対しても、失礼をすることも無いんじゃないかしら?

仮に何かミスをしたとしても、兄上ならそれも取り返す事だって出来ると思うし。

兄上は優しいだけじゃなく、自分の欲に対しては、結構腹黒いところを出すから。

そういう意味でいうと、朝秀では、まだちょっと早いかしらね。

勿論、いずれは一切合切任せていく事になるでしょうけど。


さて、拝謁も終わったとなれば、やりたい事がある。

それは河原者らとの面会だ。

せめて、天皇陛下に拝謁を終わらせてからと、兄上から言われていたから後になった。

どんな人達がいるのか楽しみではある。

何せ、食生活が違うのだ。

肉食ばかりではないだろうが、となれば体格なども違う可能性もある。

骨格はそうそう変わることは無いだろうけど、かえって違いが分かるかもしれない。

いや、そんなことはどうでもいい。

体格がどうとかは、この際いい。

それよりも大事なのは、ただ肉を食べるというだけでなく、肉を食べる者達も忌避する牛馬を食べているであろう事だ。

牛の旨さは、それこそ現代の食生活をしていたら、間違いなく知っている事だし、馬も当然美味しいに決まっている。

天皇陛下にお目にかかる事も大事なら、美味しい物を得るのも、また大事。

並列にしたら、不敬とされるんだろうな。

当然、自分の中では扱いが違う。

でも、人に聞かれたら、勘ぐられないとも限らない。

極力、このルンルンな気持ちを知られないようにしておかないと。


というわけで、河原者がいるであろう所へ向かう。

私の後ろには、貞興と繁長の二人が付いてきている。

多人数にしなかったのには、理由がある。

相手に過剰な警戒をさせるべきではない。

見ず知らずの人間が、多人数で寄せてきたら、どんな人でも警戒するだろう。

どころか、悪感情で仲間を呼ばれてとなると、第一印象は最悪となり、交渉も何も無くなってしまう。

こちらが逃げるにしても、この二人ならば何とかなるだろう。

特に、戦いについて従事してきた者で無いのなら、一喝するだけで終わるかもしれない。

いつどこで命を落とすか分からない世の中で、切った張ったで命を磨り減らす(当人達はそう思って無いだろうけど)生き方をしているのだ。

そうそう対抗は出来ないだろう。

もっとも、そこまで悪いことにはならないと思っているが。


河原者と呼ばれるだけあって、川の近くに居を構えているようだ。

もっとボロボロかと思ったが、以外としっかりしている。

いや、掘っ立て小屋と言って差しつかえは無いのだろうけど。

それでも、忌避される存在と呼ばれるとは、その家を見る限りでは分からない。

やはり、あくまで立地がよろしくないのだろう。

だとしても、彼らがこの場所を離れるつもりが無いから、この場所に住んでいる。

いや、引っ越す事が出来ないのか。

なんにせよ、暮らしぶりはそれほど悪そうには見えなかった。

たまたま私が見た場所が、たまたまそうだったとも考えられるが。

私がそんな様子を見ていると、貞興がボソリと呟く。


「言うほど、悪い暮らしはしてないじゃんか。」


この言葉に、私は心を締め付けられるような気がした。

最近、忘れてしまっていたが、もともと貞興は生まれもしらない孤児だった。

運良く私がその命を掬い上げる事が出来たが、一つ間違えばの垂れ死んでいた。

そんな明日食べる物にも困る生活と比べれば、天と地の差があるのだろう。

どころか、親兄弟だっているのだ。

それを考えれば、幸せな生活をしているように見えてもおかしくはない。

繁長の「そうか?」という一言を聞くと、やはり生まれは違うのだなと実感させられる。

何だかんだと言っても、繁長は本庄家の御曹司には違いないのだから。

その辺の暮らしぶりを、比べるまでも無いだろう。

しかし、そんな生まれの境遇こそ違えど、仲良くしていてくれているのが、何より私は嬉しかった。

願わくば、二人の友情が長く続いて欲しい。


ゆっくりと歩いて行くと、なんとも言えない臭いが立ち込めている。

一言で言えば臭い。

はた目には、街外れにありがちな小屋に見えるが、それに近づいていくにつれて、強烈な臭いが襲ってくる。

さすがに、この臭いをその辺で撒き散らされれば、確かにたまったもんじゃない。

だからこその河原という訳か。

下賎だなんだというより、この臭いの方が問題なんだろう。

しかし、この臭いの原因は?

このような臭いを放つ要因は何だろう?

それも、彼らに会ってみれば、答えが分かるか。

ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
押してくれれば一票入るようです。どうぞよろしく。 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ