表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/130

直江津の港

結の結婚式もつつがなく終わり、夏を経て秋を迎える。

現在、最も危険視している武田家の動きもとくに無く、比較的安穏たる日々を過ごすことが出来た。

さて、となるとようやく待ちに待っていた一大プロジェクトを執り行うことになる。

上洛である。

越後という片田舎の武将が、京というあらゆる文化の中心地へと行こうというのだ。

しかも、その道中には他国が道を塞いでいる。

かねてより長尾家に対して、臣下の礼をとる越中はいい。

が、越前の朝倉に、近江の浅井。

まあ、これら二家は交易なんかでも相互に利益を上げている訳だし、長尾家と領土が隣接している訳でもない。

その為、あえてちょっかいを出してくるとは思ってはいない。

勿論、警戒は必要だけど。

それよりも、一向宗の楽園状態の加賀の方が問題よね。

素直に通ろうとしても、何らかの抵抗があるに決まっている。

そりゃ、国を上げての一大プロジェクトにもなるわけよね。


それで、今回は官位を貰った私達の側から、お礼参りということで向かうわけだけど、あまり兵を連れていくと他国を刺激しかねない。

最悪、暴発されれば、幾人もの兵が命を落とすことにもなりかねない。

そこで、今回京へ向かう為のルートとして、陸路では無く海路を用いようということになった。

しかも、少人数で。

つまり、越前をのんびりと観光しながらの上洛というわけにはなりそうだ。

京を倣ったような、美しい町並みがあると評判の越前を見ることが出来ないのは残念だけれど、それはまたのお楽しみという事にしておこう。

まあ、そもそもこの時代の京を見たことがある訳じゃないから、見比べてというのも無いか。


「朝秀、いよいよね。」

「はい。準備は万端です!」

「うん、よくやってくれたわ。武田の連中と戦になったときは長重を連れていっちゃって申し訳なかったわね。」

「いやいや、先代が色々と助けてくださったので、大丈夫でした。」

「そうなの?それでも苦労したことには、かわりないでしょ?」

「はっ!ありがとうございます。」

「それと兄上にも、ちゃんとお礼を言わないとね。」


そう私と朝秀が話をするのは、直江津の港。

実乃が丹精込めて造り上げた港は、なかなかに立派なものとなっていた。

吃水線の深い船でも入ってこられる立派な港になっている。

この場に実乃がいれば、激賞してあげるところだけれど、生憎とこの場にはいない。

上洛をするにあたり、定満、景家と共に越後に残り、私が不在の間領国を運営させるつもりだ。


さて、今回上洛についてくるのは、大熊朝秀は勿論として、その補助の役をしていた長重。

この二人は外すことは出来ない。

特に、朝秀の気合いの入り方がすごい。

先導役として、存分に働いて欲しい。


後学の為にもと考えて、貞興と繁長の悪ガキ二人に、その面倒を見るというよりお目付け役として、今では長尾家の鬼教官と恐れられている泰重。

小川殿が、繁長が付いていく事に不安を感じていたようだが、泰重が共に行くことを知ると安心したようで、しきりに泰重に頭を下げている姿を見ることになった。

私も、いつも裏方で助けてくれる泰重を連れていきたいと思っていた。

実際のところ、羽根を伸ばすという事にはならないかもしれないが、それでも見聞を広げるのは幾つになっても大事な事だ。

泰重が、越後を一時的にとはいえ離れることで、訓練を受けていた兵達にとっても息抜きになるのかもしれないわね。

帰ってきた時に弛緩した空気を出していたら、容赦なく訓練を課しそうだけども。


さらに護衛として、また乱破として、段蔵と蔵人も付いてくる他、その配下達も幾人かついてくる事になっている。

いつも私の側に居てくれている蔵人はともかく、新婚の段蔵も連れていく事になってしまった訳だが、段蔵本人は京へ上ることを楽しみにしているようだった。

元々武士でも何でも無かったのが、一転キッチリ武士として京に行けるのだ。

しかも、関東管領の配下として行く事になるのだ。

私の考えも分かってはいるけれど、やはり喜びというものがあるようだ。


そして勿論、上杉憲政も行く。

何せ、彼の名前を利用しての上洛となる。

上杉の威を借る長尾といった図式ではあるけれど、名より実を取ると考えれば、別段問題にはならない。


「それで、海路を利用するのはいいけど、船は?」

「こちらです。蔵田殿が用意してくれました。」


そう言う朝秀の後ろについていく。

どんなプランで京に向かうのか。

一応の話しは聞いてはいるものの、実際目にすると違って感じられたりするが、果たしてどうか。


「へぇー、大きいわね。って、これ商船?」

「そうです。お忍びということで、大々的に船を用意するよりも、元々運航している船を利用するのが良いだろうと。それに、船を操る者達も普段からこの船を運航していますから、腕は確かです。」

「ふむふむ、なるほど。」


蔵田五郎左衛門にも話を通していたわけか。

まあ、その方がルートの選定しやすかったのだろう。

色々と方々に、苦労をかけてしまっているようだ。

それを言い出したらきりがないのはわかるけど。


「うん、よく考えられてるわね。」

「そうですか?」

「お忍びということもあるけど、ただ船を用意するよりも、元々運航している船を利用するなら、利用に発生するお金もおさえられるでしょ?」

「ああ、なるほど。そこまで考えが至っていませんでした。」

「そうなの?まぁ、結果オーライかな。それじゃ、早速行きましょうか。」


そうして、私達はついに念願の上洛を果たすべく旅に出る事になった。

ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
押してくれれば一票入るようです。どうぞよろしく。 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ