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憲政との話し合い

「憲政様、よろしいですか?」

「お?誰じゃ?」

「景虎にございます。」

「おお、景虎殿か。よう参った。」


私が憲政様の元に訪れると、快く迎い入れてくれた。

おや、歓迎ムード?

まあ、悪いようには扱ってはいないはずだし、それは当然よね。

今のところ、全ての望みを叶えてあげられた訳じゃないけど、それでも心象が悪くなるような事はしていないものね。


「それで、此度はどうしたのじゃ?」

「実は、憲政様にお願いしたい事がありまして。」

「ほう?この儂にか?なんじゃ、言うてみい。」

「長尾家では、現在上洛を考えておりまして。ただ、私達だけでは、経験も拙く、礼儀作法も曖昧な者もおりまして。そこで、関東管領である上杉憲政様の御威光に、おすがりすべきではないかと考えまして。」

「つまり、上洛に付き合って、京まで上れと?」

「はっ、是非にも。」


いや、是非にもは言い過ぎか。

別に付いて来てくれなくてもいいんだけど。

それでも、上杉という名跡のネームバリューって、意外と力を持っているしね。

ただ飯食らいなんだから、そのくらいの仕事はしてほしいわよね。


「ふむ・・・京か・・・」

「どうでしょう?」

「一度、公方様に拝謁するのも良いかもしれぬか。しかし、遠いのう。」


きたきた。

やっぱり見返り無しでは請け負ってはくれないか。

ま、当初の予定通りか。

そっと、お金の入った小袋を差し出す。


「勿論、ただとは言いません。」

「そうか。なら、良い。」

「それと、もう一つ考えていることがありまして。」

「ん?まだあるのか?」

「はい。実は越後に学問を学べる施設を作りたいと考えておりまして。その学校の名を“上杉学校”と名付けたいと考えております。」

「なんと!」


久々に顔を出した事だし、二度三度と顔を合わせるのも面倒な話なので、新しく考えていた事をぶちあげてみた。

何故、越後に学校を作ろうと考えたか。

簡単な話である。

文官がどうしたって足りない。

お陰で私の自由時間がほとんど無い。

戦馬鹿はいくらでもいるというのに。

いや、彼らだって、やる気になれば様々な事案を解決まで持っていけるはずではある。

ただ、そのやる気を引き出す事が出来るかと言えば、別の話。

それなら、適性のある者を掬い上げてしまえばどうかと考えたのだ。

さらに、低い識字率も何とかしたい。

これがきっかけで、無駄な知識を付けて反乱でもされれば事だけど、そんな事を言い始めたら何も始められない。

むしろ、事情が分からないからこそ、反乱すると思うし。

ちゃんとした知識を持っていれば、話をすることで理解を得ることだって出来ると思うのよね。


「して、何故学校を?」

「やはり、民の生活の向上を考えてでしょうか。武士であっても、そうでなくても学べる環境を作っておきたいのです。」

「その志しは良い。しかし、仰々しく“上杉学校”とは・・・」

「いえ、勿論考えあっての事です。かの名高い“足利学校”に至る為の道すじをつくってあげたいのです。基礎的な学問を“上杉学校”で学び、さらに専門的な知識を“足利学校”で学ぶ。これが定着させたいのです。」

「それで?」

「“足利学校”に至るほどの者を育て上げられれば、それは憲政様の御威光に寄与するものと考えております。その為の“上杉学校”なのです。」

「ほう?儂の為になると。」

「越後の民からの支持も、得ることが叶いましょう。」

「ふむ。あいわかった。名付ける事を許そう。」

「ありがとうございます。」


どうやら、受け入れてもらえたようだ。

まあ、ただ上杉の名を貸すだけで評判が高くなるのなら、それもそうか。

始めは、上杉の名を利用しようとは考えてはいなかったが、越後のみならず、各国から優秀な人材を獲得するにはどうしたら良いか考えた結果、長尾の名前では家格が足りないのではないかと思ったのだ。

その点、上杉の名であれば、足利家の重臣のお家柄。

その名であれば、不足は無い。


「つきましては、憲政様には名誉校長の役職に着いて頂きたく。」

「何?儂に命令するつもりか?」

「そうではありません。折角学校を作るのですから、憲政様にはその長となって頂きませんと。しかし、学校の雑務にお手を煩わせる訳にもいきません。その為の名誉校長なのです。」

「とことんまで、儂の名を利用して箔付けしたいようじゃの?」

「浅学のこの身で思い付く事など、たかがしれておりますれば。無論、就任していただければ、些少ながら返礼も致したく。」

「あい分かった。思うがままやってみればいい。」

「はい、ありがとうございます。」


名誉校長の職も受け入れてもらえた。

あえて名誉校長に就任させたのは、名前の利用もそうだが、横やりを防ぐ意味合いもある。

何か思い付きで、学校を引っ掻き回される訳にはいかないものね。

その為にも、学校の運営には口を出せない“名誉校長”に据えた訳なのだから。

あくまでも、運営は現場で作業に従事する者達に決めさせたい。

その方がモチベーションの向上にも繋がるはずよね。

まあ、大目標のようなものは、こちらで決めるけど。

双方がニヤリと薄い笑みを浮かべる。

そして、私は憲政様から前から辞した。

ブックマークや評価を頂けると、物凄くモチベーションが上がります。

また、様々な感想を頂けるとありがたいです。

今後ともお付きあいのほど、よろしくお願いします。

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