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1話 異世界に落ちた堕天使

女神の前で意識を失ったルシフェルは淡い夢を見ていた。

自らの心臓が、いやそこに宿る魂が溶け、何か別の、自らの魂と似た何かと混ざり、変質していく。

これが女神が寄越したスキルなのだろうか。

そう思っていると意識も魂に取り込まれ、ルシフェルは光の玉となった。

そして女神の居た世界から、まだ見ぬ、新たな世界へふわふわ落ちていった。


今まで感じた事の無い、空気や風を肌と鼻で感じ、そして耳にも聞きなれない鳥のさえずりが届いた、そして目にもそれは届く。

目を開くと鬱蒼とした森の中、石のタイルを四角く敷き詰められた祭壇のような場所に立っていた。

奇妙な草木が堂々と育ち、無数の羽を持つ蝶のような虫が飛ぶ光景て、過去に見た映画を思い出す。

少し目線を上げると木々の間に大きな城が見える、とりあえずあの城に行けばいいのだろうか?


「クク・・・二度も堕天を経験するとはな・・・」

ヨシオは異世界へ落ちて来た事に興奮していた。

すかさず、自分のもやしの様な体と、女神に酷評を受けた顔、不健康そうなボサボサの黒髪を確認する。

「見た目に変異は、無いか。」

ふと自らの魂に混ざりこんだ力を意識しようと試みる。それは希望通りに右の目から感じる事が出来た。

「ククク・・・面白い・・・邪眼も無事取り戻した様だ。どれ、試してやろう。」


すると背後から声が聞こえた。

「また勇者が来おった!」

「うおっ!?」

ビクッ!と驚きながら後ろを振り返ると、チビ、デブ、ハゲを三拍子備えた、騎士服に身を包む中年の男が居た、その姿を見てヨシオは間違いなく雑魚だと確信した、力を試す絶好の機会だ。


「良い所に来たな虫け『ズドン!』・・・は?」


突然騎士服の男が急接近し鳩尾に拳を減り込ませて来た。全く反応出来なかったヨシオは防ぐ事も出来ずに「は、むぅうぅー・・・」と小鹿の様に震え、断末魔を上げ、涙目で相手を睨みつける事も出来ずに気絶するしかなかった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ヨシオは鳩尾から伝えられるじんじんした痛みで微睡みから目覚めさせる。

《じーんじんじんじーんじんじんじんじー》

「俺の腹はセミかっ!うざっ!」

朦朧としながらも変なセリフ付きで跳ね起きた。


「あ、あれ?」

見た事の無い部屋で、自分の現実を確かめる。

ピカピカとは言えないが偶に掃除しているような感じで、ヨシオの居るベット、簡単な机とシェルフに明かりが置かれているだけの小さい部屋。駄目だ、理解出来そうにない。それはヨシオの両手には手錠が掛かっているためだ。


「起きたか?」

不意に部屋のドアが開かれる。

姿を見せたのはさっきの男だ。

よく見ると濃ゆくも凛々しい顔付、チャームポイントは極太眉毛と長いヒゲだろうか?


「・・・ッ!」

突然殴りかかって来た狂人の出現にヨシオは内心パニックになり、背中を冷や汗が伝って行く。


「ああ、いきなり殴ってすまんな。俺はダッカード、中級騎士だ、この辺の警備をしている。ここはお前が居た森からも見える城の中だ。」

男は名乗りながらニヤニヤと笑う。


「さっさとこれを外せ!」

ジタバタしながらそう言うと男はニヤニヤした笑みを消し、真面目な顔になった。

「落ち着け、よその世界から来た奴はとりあえず拘束する決まりになっている。もう少しすれば外してやるから、我慢しろ。」

「は?お前、俺が異世界から来たってわかるのか?」

ヨシオは戸惑う。何故この男は異世界の事を知っていて、自分が異世界人だと知っているのか?


「そりゃ、お前の着てるのは向こうの服だろ?後、名乗ったんだからダッカードと呼べ」

「知ってるのか!?お前は俺以外にもこの世界に来た奴を見た事があるのか!?」

「ダッカードと呼べと言っただろう?」


イラつきが目に見えるようだ、馬鹿め。堕天使の転生体である我に指図するとは・・・でもちょっと怖いからダッカードさんと呼ぼう・・・そうしよう・・・


「えっとダッカード・・・さん?は俺以外にこの世界に来た人を見た、事が?」

「唐突に下手に出てきたな、まあ良い。見た事が有る所じゃなく、毎日見るぞ?」

「知り合いが居るのか!?」

「いや?お前の世界で若くして死ぬと、こっちに来るか向こうで生まれ変わるんだろう?」

「そうだ.そんな事まで知って居るとはな、ククク・・・」

こいつはやはり消さねばならないかも知れない、我々の秘密を知りすぎている、やはり魔眼で・・・


「お前の世界で毎年何人、若い奴が死んでると思ってるんだ?ゴロゴロおるぞ?」


「は?」


「当たり前だろ?2択なら、お前の世界で死んだ若者の半分がこちらの世界に来る。」


「はあ!?選ばれた奴だけとかそんなんじゃっ!?」


「そんな訳無いだろう?しょうもない事故やら、首吊りで此方に来るような奴ばかりだ。そんな奴らが選ばれし者とは思えんがね。」


そういえば俺もがんも詰まらせてこっち来てるもんなぁ・・・とヨシオは遠い目をした


「そうだ。お前名前はなんて言うんだ?」


ついに異世界で初めて名乗る時が来たか。仕方ない、目に焼き付けるがいい!散々練習した名乗りを!

「我か?我の名はルシフェル・ドラゴニア!堕天使の転生体にして闇に魅入られし邪眼を有する者!」

高らかに名乗りを上げた!完全にキマった!そう、俺は山田良男の名前を捨て新しい名で生きて行くのだ!


「うわぁ・・・ま、まあまた来るから大人しくしておいてくれ・・・」

ダッカードはそそくさと部屋から出て行った。


「ちょっ!話ぶった切って帰んなよ!?」

あ、あれっ?反応がおかしいぞ?我を恐れたのかな?こっちに来る前の周りの反応とかわらないぞ?


「そ、そうだな・・・」

ダッカードは渋々帰って来た、先程の名乗りで怯えているな、明らかに様子がおかしい。


「とりあえず、この手錠はいつまで付けられなきゃならないんだ?付けられている意味もわからん。」


様子がおかしかったダッカードは咳払いして調子を整えた。

「向こうから此方に来る奴らは訳が分からん。全て破壊してやるだの暴れたり、鍛えもしていないのに街を出て大量の魔物を引き連れて引き返して来たり、スキルを過信して英雄になると言って周りを巻き込んで自爆とかな。まあ、お前が安全な人物だと証明されるまでだな。」


森で魔眼を使っていたらまずかったんだろうなぁ、あの時の腹パンに感謝しとこう、だが後でやり返してやるとヨシオは心に誓った。


「いつになれば証明される?」


「今日中には。スキルや、過去、死因、願望、お前の全てを暴く魔法にかけられる。それで駄目なら牢屋行きだ。」


その言葉にヨシオは目の光を失う。

「やり直したい過去と微妙な死因だけ何とかなんないっすか・・・」


「無理だ。異世界の奴が来た時の楽しみの一つになっているからな。」

ダッカードは部屋に入って来た時と同じ様にニヤニヤ笑った。




暫くすると、悪夢のような時間が訪れた。


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