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第七話 イントロダクション Dパート

もう2話やそこらは続きそうですね。

戦闘を一回もせず章を名乗るような事はしません。


http://ncode.syosetu.com/n1050bk/

【空と海の掌握者コンダクター 】を公開開始しました。

文庫一冊分の量のある第一章を年内に順次公開の予定です!

十月は毎日公開! 十一月~十二月は、水曜土曜の週二回更新。

年末までに、完結する予定です。是非、読んでみてください!

「人違いだろう……そこを通してくれないか!」

「何を言うか! その光輪――薄れたとはいえ、神の祝福を受けた聖騎士でなければ、何者だと言うつもりだ!」

 なにぶん、客観的には神殿から逃げるような形で任務なかばに、カデストにまで流れ着いたのは、かなり前の事だしな。名前は思い出せないが、オレの光輪を『視』る事ができるのなら、聖騎士見習い時代の同期のようだ。

「え? クラウスというのが、ご主君の名前なのですか? あの、聖騎士っていうのは……。『あの』聖騎士の事なのでしょうか?」

 後ろではイレーネがおどおどしながら、アデールに聞いていた。あぁ、そうだとも。護衛人としても、中途半端なオレではあるが、宗徒や巡礼者を守るために、聖なる力を分け与えられた聖騎士だ。任務を失敗した事により、神聖魔法は使えないが、まだ破門されたわけでも、名簿から除名されたわけでもない――。


「誰だかは知らんが、いまは護衛の任務中だ。これで失礼する!」

 オレは、アデールとイレーネを指さして、その場を立ち去った。納得はしていない表情だったが、その男にも同行者がいた事と……アデールが領主である事を示すクリスタルを見せた事により、どうにかその場をごまかす事ができた。だがもし教会に報告でもされた日にはどのような事になるのか、想像もつかなかった。




「へぇ。クラウスって言うんだ。ケイン家って聞いた事あるわね」

 アデールは察してしまったのか、きらりと瞳を輝かせた。というか運営が何を考えていたか、オレの先祖の、英雄として呼ばれた、伝説の聖騎士たる者の家系である、ケイン家を名乗らせて、聖騎士見習いとしてスタートさせたのが、そもそものはじまりだったのだ。

 だからこのゲームが始まって、オレはまだ一度も転生を経験していない。何度かそれも考えたが、また介入される可能性もあった。

 見知らぬ他人を助ける事によって悪業値が下がる特性もあり、長く続けるのには有利だから、恐れているのはスキルの上限値の低下のデスペナぐらいだ。なのにその制限地域を往復させられるとは。


「聖騎士とは世界に二十人しか存在できないのではないのですか? ならば、まさしく主君と呼ぶにふさわしいではありませんか!」

 イレーネは片ひざをついて、古風な従属の作法を披露してしまう。聖騎士の魂や気概を失ってはいないがつらいな。


「おかげで、おなかの子どもも、相当なプラスアビリティや補正が見込まれるのよね。最初会った時は到底そうは見えなかったけど」

「クラウスと呼んでもいいが、ケイン家については触れるなよ? ところで、カデストに鉱石を取りに行く件だが、装備を調えたら、すぐに出発しよう。なにせ、時は金なりだからな――」

 幸い、さっきの男には家がバレていないので、そうそう見つかる事もないだろうが、ある程度の期間は街を離れておくべきだろう。

「ふーん……そのつもりだったからいいけど。買い物はしましょ」




「ふむ……時間をかければもっと金になったかもしれんがな――」

 『名前付き』を倒した時の戦利品は、銀貨にして一千枚になった。もし、あの宝剣を売る事ができたら金貨一千枚は固かったろうな。まぁ、そんな事をあのアデールが認めるわけもないんだがな。

「ねぇ、イレーネ。あなたは長弓使いだそうだけど、敵が接近した時のために、何か武器とか持つ必要ないの? 護身用の短弓か石弓とかはどうかしら?」

 アデールは、イレーネの接近戦時の弱さの強化を考えたようだ。まぁ、それはオレも思っていた事だが、指摘してどうなるなら、これまでにも、どうにかしたんじゃないのか?

「あの……矢筒をたくさん持っていきたいんです。それに敵と直接戦うような事態になったら負けだと言われて修行していますので」

 想像した通り、イレーネも一筋縄ではいかない指針を持っているようだが……。

「ポリシーはわかるけど、そのポリシーで自分だけが死ぬならいいんだけど、護衛をしないといけない人の事がすっぽり抜け落ちてるんじゃないの? それじゃあプロとしての意識も心構えもないわ」


「お、おい……アデール。なにも、そこまで言ってやるなよ――」

 まぁそう思っていた事もたしかで、そんなだから護衛ギルドから干されたんじゃないのかと思ったのも事実なんだが、それを直接、イレーネに指摘する心臓の毛はオレにはなかったという事だ――。

 いろんな意味で思うんだが、本当にアデールってすごいよな――。


「いえ、アデール殿のおっしゃる通りです。このイレーネ、開眼の思いです。どうか、何とぞ御指導くださりますよう、願います!」

「えぇっ? それで、納得して方針変えてしまうのか、イレーネ」

 なんだか、ものすごい勢いでイレーネがアデールの手駒化しているような気もするんだが、パーティーや警護対象のためには、その方がいいんだよな。だからここは目をつぶっておく事にする――。


「じゃあ、そうねぇ……長弓使いだったら、伝説の『狙撃手』にして、一流の軽戦士と言われた英雄にあやかって、ククリナイフでも装備したらどうかしら? 山の中を通る時にもいろいろ便利だし」

「そ、そんな……。それは恐れ多い気もするんですが、実のところあこがれている事もありますし、お言葉に従わせていただきます」

 アデールが言ったのは、オレの祖先の戦友というか、指導者的な立場にあった人間の事だが、どうやら完全に知られているようだな。まぁ、それは差し置いても悪い判断じゃあないかもな。


「保存食とポーションを補充して……。ってクラウス。あんたが、ククリナイフを買ってあげなさいよ。安物じゃダメなんだからね?」

「ああ……。わかったよ。オレたちの命もかかっているしな――」

 武器屋にちょうど、木目状の模様をもつ、強靱きょうじんな素材のククリナイフを見つけ、その値段に硬直してしまう。これを見なかった事にしたかったんだが、イレーネの瞳が輝いてるしな。

「さすがに、いい値段がしやがるな。手入れはちゃんとするんだぞ」

 しめて、銀貨一千枚なり――。補充した矢やポーションなども入れると総額で一千枚は使ったから、残金は銀貨二千枚まで減少した。


「今回はいいとしても、次からはこういう消耗品は、経費として認めてくれるんだろうな? そこを絞られたら手取りがなくなるぞ?」

「わかっているわよ。わたしだって、保存食とかは買っているし、荷物運搬用の馬車まで購入したのよ? 分担的にはすぎるぐらいよ」

 ひとつ言えば倍になって帰って来るが、たしかに筋の通った事しか言わないのも事実だし、当分は従っておくしかないだろうな――。


「ふぅ……そろそろ夕方か。時間がたつのも早いもんだなぁ――」

 昼食は、セラエノ公爵家で心ゆくまでいただいたというのに、腹はいまにもなり出してしまいそうだ……。

「そうねぇ。本当は明日の朝にでも出発した方がいいんだけど、家具や寝具がなくて、寝袋で寝るぐらいなら、少しでも進んだ方がいいわねぇ……。そうだ。忘れるところだったわ! 護衛人ギルドよ」


「ん? 独立してやっていくんなら、護衛人ギルドは関係ないだろ」

「バッカねぇ……世の中なんでも、助け合いなのよ? もし、カデスト領へ陸路で行きたい依頼人がいたらどうするのよ? そこは、売り込んでおくに決まっているじゃない! 向こうだって、断るしかなかったんでしょうから、どっちも損はしないのよ? ったくぅ」


「な、なるほど……そこまでの考えは及ばなかったな。幸い、顔役の紹介状もあるし、領主のおまえさんの顔もあるなら、大丈夫か」

「あったり前でしょう? 大船に乗ったつもりでいなさいよねっ?」

「アデール殿の商才たるや、我々には到底至らぬ境地! どこまでも、お供つかまりますぞ!」

 イレーネはアデールの信奉者だな。実際、アデールの言う通りに護衛人ギルドと話をつける事ができたのだから、文句も言えん……。




「あとはそうねぇ……カデストの街では食べられないような、新鮮な野菜とか果物を買っていこうかしらね。空荷で旅をするなんて、わたしの辞書には載っていないのよ? せいぜい覚えておく事ね」

 そこからは、ずっとアデールの主導で旅の準備を進めていった。



「うーん……さすがに、これから出発するには遅くなりすぎたか!」

 夕食を食べ終えて、二番街の明かりの中を歩いていくと、これから暗闇の中を切り開いて進もうという気概はさすがに持てずにいた。

「何を言ってるのよ? 早くしないと、生鮮食料品がしおれちゃうじゃない! 商人には朝も昼もないわ! いまから出発するわよ!」

「おい……正気か? まぁ、制限地域の手前までしか行けないから、危険って事もないかもしれんがなぁ……」

「人間、楽を覚えると、低い方へ流れていくものよ――。本当なら荷台の大根をかじってでも出発するつもりだったけど、初日の夜だから、結成式をしたんじゃないのよ。ほら、泣き言タイムは終了よ」

 結成式という名目で、オレたちは相互に『盟友登録』をする事になってしまった。これにより倒れた仲間を残して、その場を逃げ去るようなまねはできなくなった。一種の運命共同体と言っていい。まぁ、名前を隠すためだけに拒否していたのだから、もう拒む事はできない空気ではあったが、誰かと盟友登録をするだなんて事は、オレにとっては初めての事だった。

 もし、あの時に『ヤツ』と盟友登録を結んでおけば、制限地域に一人取り残されて、スキル上限の減少を選ばないがために……もう一つの選択肢……辺境の地への強制移動を選ぶ事もなく、聖騎士の名を辱めるような事にならずに済んだと思うと、後悔が募った――。


「さ、さすがアデール殿……ご領主でありながら、そのお覚悟――そうでなければお金はたまらないのですね? 拙者、感銘いたした」

 イレーネまでその調子では、オレ一人が反対しても無駄な事だし、早くこの街を離れたかった、オレとしても同意するしかない――。

 オレたちはセラエノの街の西門が閉まる直前に馬車をくぐらせた。




アデールは近江商人の血でも引いているんでしょうかね(笑)

今回はずっとアデールのターンでしたね。

ちなみに作者は別に商売に明るいワケじゃないです。

もしそうなら、こんな苦労をしていないというか(汗


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