男が言った。
唐突に、
思いつきました。
「だから俺は、死のうと思ったんだ。」
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「クビだ。」
老人が唐突に言い放つ。
老人の目の前に居る男が固まった。
「邪魔だよ。早く出ていきたまえ。」
何時までも男が動かないので老人が凍り付くような視線を向けて男に言う。
男は漸く事態が飲み込めたか、震えながら
「な……何故…ですか?」
「いちいち理由を説明せねばならんのかね?」
「そ、そんな。私がいったい、何をしたと言うんですか!?」
そう。男は納得がいかなかった。男は自分が何もしていないと知っているからだ。
「先日不正のリベートがあったとニュースになったのは知っているだろう。」
「知っていますが。」
「だからだよ。」
男は今度こそ大きく目を見開く。
「まさか、私を身代わりにするおつもりですか!」
「そんなことは一言も言ってないさ。」
「しかし!!」
「煩いぞ。大体君は誰だね。うちに君のような社員は居ないのだが。」
「しゃちょ「摘まみ出せ。」ぅごっ!」
腹にパンチを喰らって男は崩れ落ちた。
その日から、地獄だった。
正に泥水を啜る様な生活と言う奴だろう。
その日暮らしだ。
ある日男は、唐突に憎くなった。
自分を隠れ蓑にした会社が。
自分を見捨てた社会が。
何もできなかった自分自身が。
男は復讐することに決めた。
自分を隠れ蓑にした会社に。
自分を見捨てた社会に。
何もできなかった自分自身に。
計画は始まり、先ず男をクビにした老人が死んだ。
次に会社が潰れ、次々と人が無差別に死んでいく。
捕まらぬまま月日が流れ、被害者は200人を越えた。夜出歩かないことがついに法律で定められた。
日本は恐怖に取り憑かれ、誰もが信用できなくなっていく。
男はそろそろ最後にしようと思った。
最後に自らの妻を、親戚を、親を殺して終わりにしようと思った。親戚を殺し、親を殺し、
これで最後だ。家族のもとへと向かう。
流石にあからさま過ぎたのか警察が待っていた。
皆殺しにしていった。
全員死んだので、死体を積み上げ、インターホンを押して待つ。
妻が出てきて悲鳴をあげた。
逃げさせる筈もなくナイフで内臓を穿つ。
妻もあと数分で死ぬ。
男はやりとげた。
復讐を。
社長を殺し、会社を殺し、
人を殺し、社会を殺し、
親戚を、親を、妻をも殺し、やりとげたのだ。
そして全て、やりとげて、しまった。
だから。
だから。
だから。
「だから俺は、死のうと思ったんだ。」
誰も居なくなった玄関先で、男が言った。
又連載も書きたいと思います。




