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目覚めと出会い

ここは…どこだろう。

足元には瓦礫が広がっていた。

崩れた建物の隙間から、赤い炎が揺らめいている。

遠くでは、燃え上がる炎が夜空を赤く染めていた。

見覚えのないはずの光景。

それなのに、なぜか胸が締め付けられる。

まるで、この景色を知っているかのように。

「なぜ、あなたはそんなことをするの?」

ふいに、女の声が聞こえた。

優しく、それでいて悲しげな声だった。

「それが…俺の役目だからだ」

男の声は静かだった。

迷いを押し殺しているような、そんな声。

「じゃあ、どうしてそんなに苦しそうなの?」

返事はなかった。

「ねえ…一緒に帰ろう」

少しの間を置いて、女は続ける。

「京都へ」

その言葉を最後に、二人の声は少しずつ遠ざかっていった。

炎の赤も、瓦礫に覆われた街も、すべてが闇の中へ溶けていく。


男は、目を覚ました。

頭を押さえながら、呟く。

「うぅ、頭が痛い。…ここは…山?」

目を覚ました場所は、屋外だった。

朝方なのだろうか。

ひんやりとした風が頬を撫でる。

静かな空気に、一瞬だけ身を委ねそうになる。

だが、そんな余韻に浸っている暇はなかった。

ゆっくりと身体を起こし、辺りを見回す。

知らない木々。

知らない空。

知らない地面。

見覚えのあるものは、何一つ存在しなかった。

「昨日まで何をしていたんだっけ?」

夢のことも気になるが、今は現状把握のほうが優先だ。

どうやら、遭難しているようだ。

「頭が痛い…二日酔いか?」

昨日までの記憶を辿ろうとするも、頭痛が襲ってきてそれどころではない。

頭痛が思考の邪魔をする。

「山の頂上を目指したらいいんだっけ…?」

思い出せないものは仕方がないと割り切って、行動指針を考える。

遭難したら山の頂を目指すとどこかで聞いたことがあるので、立ち上がり山頂らしき方へ歩き始める。

その時、ガサガサっと前方の茂みが揺れる。

風に吹かれたような感じではない。

音がした方向を振り向いた瞬間、二頭の生物が姿を現す。

一頭は、鹿だった。

いや、鹿と呼ぶにはあまりにも異質だった。

全身を覆う毛は、雪のように真っ白。

その姿は、まるで森に降り立った精霊のようにも見える。

しかし、その美しさはどこか不自然だった。

細く伸びた角は黒く染まり、鋭く枝分かれしている。

瞳は冷たい青色に輝き、こちらに助けを求めるような視線を送ってくる。

鹿を追いかける形で現れたのは、大きく突き出た黄色い牙を持つ化け物。

その姿は、イノシシを彷彿とさせる。

だが、決して、ただのイノシシではない。

それは、人の知る生き物とはかけ離れた異形の存在だった。

「フー…フー…」

荒々しい息遣いが響く。

そして、赤く濁った瞳がこちらを捉えた。

目が合った瞬間、本能が告げる。

逃げろ、と。

遭難時の生存方法なんて、知ったことか。

二頭の化け物に背を向け、獣道を下る。

振り返る余裕はなかった。

ただ、少しでも距離を離すために足を動かす。

伸びた枝を払い、藪をかき分けながら進む。

やがて、視界が開けた。

木々の隙間から光が差し込み、閉ざされていた森の景色が一変する。

ようやく、開けた場所へと辿り着いた。

その時、女の声がした。

「グラちゃん、こっちこっち。」

魔道士の格好をしているのに、どこか異質な雰囲気を纏う少女。

異質な雰囲気の正体はすぐに分かった。

長い爪には派手なネイル。

耳元にはシルバーのピアスが輝いている。

暗い茶色の髪は、左右に大きく跳ねたツインテール。

そこには赤色のアクセントが入っていた。

大きな金色の瞳。

つまり、ギャルがいた。

ギャルは、こちらに気がついた。

「なに?追われている感じ?ウケるー。」

気だるそうに口を開き、ケラケラと笑う。

「助けてくれ!」

ギャルの態度に若干イラッとくるが、そんな事を言っている場合ではない。

魔道士っぽい服装をしているんだ、きっと戦えるだろう。

と、期待して助けを求める。

その瞬間、近くの茂みから人間が飛び出してきた。

髪はピンクがかった紫色で、整えられたソフトモヒカン。

彫りの深い顔立ちに、目立つ青ひげ。

どう見ても屈強な戦士のような見た目だった。

しかし、服装だけが、その印象を大きく裏切っていた。

花柄のぴったりとしたタイツ。

身体のラインがはっきり分かる黒いタンクトップ。

その上から、鎖帷子を思わせる女性用の衣装を身につけている。

筋骨隆々の大男が、可愛らしい装飾の服を着ている。

いわゆる、オカマというやつだった。

オカマは、前かがみの体勢で砲弾のように現れたかと思ったら

ドスッ

腹部に強烈な衝撃が走った。

息ができない。

何が起きたのか理解する前に、身体から力が抜けていく。

視界が徐々に暗くなっていく。

「あー。グラちゃん、そっち外れだわー。」

「あらヤダ本当ね。」

オカマとギャルの会話が徐々に聞こえなくなっていく。

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