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神域のアーキテクト 〜世界が滅亡したので、スマホで自宅を絶対安全要塞に書き換えます〜  作者: kiro


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最強要塞の迎撃システムと、神の誕生


ゴゴォォォ……ッ!!


四腕の巨人が、天を突くほどの巨大な四つの拳を高く振り上げた。


その影が、コーポやすらぎ全体と、駐輪場にへたり込む生存者たちをすっぽりと覆い隠す。


「ひ、ひぃぃぃっ!?」


「あ、悪魔だ……! 終わりだ、俺たちは潰される……ッ!」


生存者たちが顔を引きつらせ、頭を抱えて悲鳴を上げる。


地面に這いつくばらされたままの権田も、見開かれた目で迫り来る死の質量を見つめ、絶望に顔を歪ませた。


(俺の、俺の人生が……こんなボロアパートの前で終わるのか……!) 


ズドォォォォォンッ!!!


隕石が墜落したかのような、凄まじい轟音が新宿に響き渡った。


巨人の四つの拳が、アパートを粉砕すべく、容赦なく振り下ろされたのだ。


周囲のコンクリートが衝撃波で吹き飛び、土煙が舞い上がる。


――しかし。


「……え?」


生存者の一人が、恐る恐る目を開けた。

痛みはない。体が潰されてもいない。

彼らが見上げた先には、信じられない光景が広がっていた。


「ゴ、ルァ……!?」


巨人が、困惑したような低い呻き声を上げた。

巨人の拳は、アパートの屋根に触れることすらできていなかった。


コーポやすらぎを覆う、淡い青色のワイヤーフレーム。その薄皮一枚の【絶対領域バリア】の上で、15メートルの巨体のフルスイングが、ピタリと静止していたのだ。 


アパートの瓦一枚、窓ガラス一枚すら割れていない。


「……あーあ。ホコリが舞って、洗濯物が干せなくなったじゃないか」


2階の共用廊下。サンダル履きの蒼太が、ため息をつきながらボリボリと頭を掻いていた。

「な……防いだ? あの化け物の攻撃を、無傷で……!?」


権田が、地面に顔を擦り付けたまま震える声で呟く。

蒼太のスマホには、無機質な通知が連続で表示されていた。


【警告:神域に対する超高質量の物理干渉を確認】

【設定ルール第1項により、ダメージを完全に無効化(0)しました】


「うーん……でも、あいつデカすぎて太陽の光を遮ってるし、なんかテレビの電波も悪くなってきた気がするな」


蒼太は、鬱陶しそうに巨人を睨みつけた。

彼の平穏な休日(有休)を脅かす者は、上司だろうがレイドボスだろうが許すつもりはない。


「そういえば、さっきアパート全体を『要塞化』したんだよな。何か迎撃機能とか追加されてないか……?」


蒼太がアプリの画面をスクロールすると、新たに【要塞武装コマンド】という項目が追加されていた。


そこには、厨二病心をくすぐる物騒な名前が並んでいる。


・自動追尾型プラズマミサイル(消費AP:100)

・絶対零度・空間凍結波(消費AP:500)

・神域拡張・存在消去レーザー(消費AP:1000)


「存在消去……名前がシンプルでいいな。ポチッとな」

蒼太が画面をタップした、次の瞬間。


『ピイィィィィン……ッ!』


空気が震えるような高周波の音が鳴り響き、アパートを包んでいた青いワイヤーフレームが、一瞬にして屋上の給水塔の先端に収束していく。 


圧倒的な光のエネルギーが極限まで圧縮され――


「ギャァァ……!?」


本能的な死の恐怖を悟った巨人が、逃げようと背を向けた。


だが、遅い。

「うるさいから、消えて」


蒼太の冷たい声と共に、給水塔から極太の青白いレーザーが放たれた。

轟音すらなかった。


光の奔流が巨人を飲み込んだ瞬間、15メートルの岩のような肉体が、音もなく『粒子』となって空中に融解していったのだ。


背後にあった廃ビルごと、文字通り「空間から消し飛んで」いた。

光が収まった後、アスファルトの道路には、スイカほどの大きさがある虹色に輝く【超特大の魔石】だけが、ゴトリと転がっていた。


「…………」

「…………」


静寂。

圧倒的な、死の静寂だった。


自衛隊の総火力を結集しても倒せなかったであろうレイドボスを、ボロアパートの引きこもりが「うるさい」という理由だけで、指先一つで消し去ったのだ。


「す……凄い……っ!」


静寂を破ったのは、部屋の中から駆け出してきた凛だった。


「蒼太様! 今のはまさか、神話に伝わる『天の裁き』……! ああ、やはり貴方様は、この狂った世界を救うために降臨されたのですね!」


凛が目を輝かせてその場に跪き、祈りのポーズをとる。


それに釣られるように。


「か……神様……」


「助かった……俺たちは、助かったんだ……!」


「おおお、救世主様ぁぁぁ!」


駐輪場にいた十数人の生存者たちが、次々と蒼太に向かって土下座を始めたのだ。


彼らの目にはもはや、蒼太は冴えない青年ではなく、後光が差す絶対的な全能の神として映っていた。


「ひぃっ、あ、相田……いや、相田様……! ど、どうか俺を許してくれ! 俺が悪かった! 奴隷でもなんでもするから、俺を殺さないでくれぇぇっ!」


100倍の重力で地面に這いつくばっていた権田も、プライドなど完全にへし折られ、涙と鼻水を流しながら命乞いを始めた。


「えぇ……。なんか急に宗教みたいになってきたんだけど。俺、そういうの面倒だから帰ってくれないかな……」


本気で嫌そうな顔をする蒼太。

だが、事態は彼をさらなるスケールへと巻き込んでいく。


『ピコンッ』


【虹色魔石を自動回収しました。アーキテクトポイント(AP)を 100,000 獲得】

【称号『新宿の支配者』を獲得しました】

【APが一定値に達しました。神域を『商業施設(近隣のスーパー・ホームセンター等)』まで拡張接続することが可能です】 


「……ん? スーパーと繋げられる? ってことは、ポテチもコーラも、一生無料で手に入り放題ってことか……!?」 


蒼太の目が、今日一番の輝きを見せた。


最強の引きこもり生活を極めるため、彼は自覚なきままに「絶対安全の巨大都市国家」を築き上げる道へと足を踏み出そうとしていた。


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