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神域のアーキテクト 〜世界が滅亡したので、スマホで自宅を絶対安全要塞に書き換えます〜  作者: kiro


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ブラック上司の襲来と、絶対領域(強制土下座)


ズシン……、ズシン……。


遠くから響く地鳴りのような重低音と、アパートの外から聞こえる人々の悲鳴で、蒼太はスマホから顔を上げた。


先ほどアプリで『アパート全体の要塞化』を実行した際に放たれた、天を衝く青い光の柱。どうやらあれが、新宿中の生存者と、そして「厄介なもの」の注意を強烈に惹きつけてしまったらしい。


「蒼太様! 外に多数の難民と……後方から、巨大な魔物の気配が接近しております! 先ほどの神々しい光の波動に当てられ、群がってきたのでしょう。私が斬り捨てて参ります!」


カップラーメンの汁まで完食し、すっかり体力を回復させた凛が、真剣を手に立ち上がる。


彼女の目は「神(蒼太)の安眠を妨げる不届き者は生かしておかない」という、狂信者のそれに仕上がっていた。


「いやいや、物騒なこと言わないで。ちょっと外見てくるから、君はアニメの続きでも見てて」


蒼太はため息をつきながら、サンダル履きで玄関を出て、2階の共用廊下から下を見下ろした。


アパート「コーポやすらぎ」の入り口にある小さな駐輪場。そこには、薄汚れたスーツや作業着を着た十数人の男女の集団が押し寄せていた。彼らは背後の大通りを何度も振り返りながら、目に見えない壁(結界)を必死に叩いている。


「おい! 誰か中にいるんだろう! この光ってるバリアみたいなのを解除しろ! さっきの光……ここは安全地帯セーフゾーンなんだろ!?」


集団の先頭で血走った目をしている小太りの男を見て、蒼太は思わず「げっ」と声を漏らした。


男の名前は権田ごんだ。つい昨日まで、蒼太に48時間連続のデスマーチを強要していた、ブラックIT企業の直属の上司だった。


「チッ、どこの馬鹿がこんな立派な結界を張ってやがる……。早く開けろ! あの『四腕の化け物』が追いついてきちまうだろが!」


権田の言葉通り、大通りの奥からは、ビルを薙ぎ倒しながら進む巨大な影が迫っていた。彼らはあの大怪獣から逃げる途中、藁にもすがる思いでこのアパートの「光」を目指して走ってきたのだ。


苛立つ権田がふと上を見上げ、2階の廊下から見下ろしている蒼太と目が合った。


「……あ? お前、相田か!? なんでこんな所に……いや、ちょうどいい! おい無能! お前がその結界の持ち主を説得しろ! そして【火炎魔法Lv1】に覚醒したこの俺を、リーダーとして迎え入れさせろ!」


世界が崩壊し、背後に死が迫っていても、権田の中のヒエラルキーは昨日と変わっていなかった。相田は自分の奴隷であり、命令すれば這いつくばって言うことを聞くと思い込んでいる。

「いや、ここ俺のアパートですけど。それに土足厳禁なんで、無理ですね。俺、今日は有休なんで帰ってください」


「は……? てめぇ、状況分かってんのか!?」


蒼太の気の抜けた返答に、権田の顔が怒りで真っ赤に染まる。


パニックと持ち前の傲慢さが相まって、彼は背後の巨大な脅威を一時的に忘れ、手のひらにバスケットボール大の火球を膨れ上がらせた。


「誰に向かって口答えしてんだ! 世界が変わったんだよ! スキルを持った俺が王だ! お前みたいなゴミは、結界を開けて俺の靴を舐めて――」

権田が、威嚇のために火球をアパートの階段に向けて放とうとした、その瞬間だった。


『ピコンッ』


蒼太のスマホから、無機質な通知音が鳴る。


【警告:『神域』の所有者に対する明確な敵意・および攻撃意思を確認しました】

【設定ルール第3項:『俺に敵意を持つ者は強制排除する』を適用します】


「死ねやぁっ!!」


権田が腕を振り抜いた――が、火球は結界に触れることもなく、フッとシャボン玉のように消滅した。


「……は?」


間抜けな声を上げた直後。


「ガァッ!?」


見えない巨大な手で頭を鷲掴みにされたかのように、権田の体がアスファルトに激突した。


ドゴォォォン!! という凄まじい音と共に地面にクレーターができ、権田はカエルのように四つん這いで、見事な『土下座』の姿勢で固定されたのだ。


「あ、ぐ……っ!? な、なんだこれ……体が、重い……っ!?」


「あーあ。言わんこっちゃない」


蒼太が設定した『強制排除』のルール。それは対象のステータスを強制的にゼロにし、神域内での重力を局所的に100倍にするという、文字通りの神の御業チートだった。


「ご、権田さんが、指一本触れられずに地面にめり込んだ……!?」


後ろに控えていた生存者たちは、魔法を使おうとした権田が一瞬で這いつくばらされたのを見て、恐怖で震え上がった。いつの間にか蒼太の後ろに立っていた凛も、「やはりこのお方は……!」と熱い視線を送っている。


「ひぃ、ふー……っ! あ、相田ぁ……! き、貴様、何を……っ!」


地面に顔を擦り付けながら、権田がギリギリと歯ぎしりをする。


だが、彼らが蒼太の理不尽な力に圧倒されている間に、本当の絶望はすぐそこまで迫っていた。


ズズンッ……!!


背後のビルが真っ二つにへし折られ、太陽の光が遮られる。


「あ……あぁ……」


生存者の一人が、へたり込んで失禁した。

権田たちが逃げ惑っていた元凶。

自衛隊のヘリを落とし、新宿の街を火の海に変えた張本人。


全長15メートルに及ぶ、岩のように隆起した筋肉を持つ『四腕の巨人レイドボス・クラス』が、蒼太のアパートを見下ろすように立ちはだかっていた。


巨人は、鬱陶しいほどに輝くアパートの結界を不快そうに睨みつけ、四つの拳を高く振り上げる。


「ちょっと、今アニメのいい所なんだけどな……」


蒼太の平穏な引きこもり生活は、開始早々、最大の物理的脅威を迎えようとしていた

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