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神域のアーキテクト 〜世界が滅亡したので、スマホで自宅を絶対安全要塞に書き換えます〜  作者: kiro


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過剰要件(オーバーエンジニアリング)と、第一回・新宿料理対決



「……あー、なんか最近、肉ばっかり食ってんな」


昼下がり。ペントハウスのふかふかなソファでタブレットをいじりながら、蒼太はふと呟いた。


エコプラント(農業ビル)から毎日供給されるA5ランクの霜降り和牛は確かに絶品だが、毎日ステーキやすき焼きばかりでは流石に胃がもたれてくる。


「たまにはこう、普通の……手作りの家庭料理オムライスとかハンバーグが食いたい気分だ」

何気ない、最強の引きこもりのボヤキ。


しかし、その一言は、ペントハウスに待機していた三幹部(+ヒロイン)たちの耳に、**『最優先の緊急タスク(クエスト)』**として受信された。


「……ッ! 蒼太様が、手料理を所望されている……!」


凛がハッと顔を上げ、騎士の目をギラつかせた。


「アタシの手料理……! つまり、アタシの愛を胃袋に直接インプットしろっていう蒼太様からの熱烈なラブコールね!?」


カーミラが恍惚とした表情で頬を染める。

「ふふふ……私が完璧な栄養素をコンパイル(構築)した、至高のディナーをご用意いたしましょう」


ルシスまでエプロン(漆黒のフリル付き)を取り出し、なぜかやる気満々だ。結衣だけが「あーあ、また始まった」と苦笑いしている。


「よし! ならばこの権田、僭越ながら『第一回・蒼太様争奪お料理コンテスト』の審査員長(実況)を務めさせていただきます!」


どこからともなくマイクを取り出した権田の宣言により、謎の料理対決が幕を開けた。


「いきます! 蒼太様への忠誠、この一太刀に込めて!」


システムで具現化された最高級キッチンのまな板の上には、新鮮な玉ねぎと人参が置かれている。


凛はエプロン姿で、なぜか白銀の『システムブレード(プラズマ刃)』を上段に構えていた。


「えっ、凛? 包丁使わないの?」蒼太がツッコミを入れる間もなく。


「タスク実行! 『概念みじん切り(ソニック・チョップ)』!!」


シュババババババッ!!


音速を超えた無数の斬撃が、まな板の上の野菜に叩き込まれた。


しかし、攻撃力が高すぎるプラズマの刃は、野菜を「切る」のではなく、分子レベルで「消し飛ばして」しまったのだ。


「……あ、あれ? 野菜が、チリに……」


「バカ。ただの野菜に防御貫通攻撃なんか当てたら、データごと消滅するに決まってんだろ。はい、凛はリソース(食材)の無駄遣いで失格」


「そ、そんなぁぁぁぁっ! 私の家庭的なアピールがぁぁっ!」


凛が灰になった玉ねぎの前で膝から崩れ落ちた。



「フフン、騎士サマは不器用ね。料理っていうのは、もっとこう……情熱的ダイナミックにやるものよ!」


カーミラがドンッ! とキッチンに置いたのは、エコプラントの牧場から丸ごと一頭分持ってきたのではないかというサイズの、超巨大な牛の骨付き肉(推定100kg)だった。


「いや、デカすぎだろ。どうやって火を通すんだよ、それ」


「アタシのスキル【無限貪欲】による、純粋な運動エネルギー(摩擦熱)よ!! オラオラオラオラァッ!!」


カーミラが巨大肉に向かって、目にも止まらぬ音速の連続パンチを叩き込む。


凄まじい摩擦熱が発生し、肉の表面が一瞬で香ばしく(というか黒焦げに)焼き上がっていく。

「さあ蒼太様! アタシの愛の結晶、特大の『欲帝ローストビーフ』よ! 召し上がれ♡」


「……カーミラ。これ、表面は炭になってるけど、中身完全に生のままだぞ。ただの生肉のワイルドすぎるだ。俺の胃腸のスペックじゃ消化しきれないから却下」


「嘘でしょぉ!? 原始的で一番美味しい食べ方なのにぃ!!」


カーミラが泣きべそをかきながら巨大肉を抱きしめた。




「お待たせいたしました、蒼太様」


ルシスが銀のトレイに乗せて恭しく運んできたのは、非常に美しい造形の、黒と紫を基調とした『三段重ねのケーキ』と『優雅なティーセット』だった。見た目は高級ホテルのアフタヌーンティーそのものである。


「おっ、ルシス。お前のはまともそうじゃん。甘いものも悪くないな」


蒼太が感心してフォークを手に取ろうとした、その時。


『ギョロリ』


「……ん?」


「どうかされましたか、蒼太様」


「ルシス。今、このケーキの一番上の段にある黒いベリーみたいなやつ……俺のほう見てウインクしなかったか?」


蒼太がドン引きして指摘すると、ルシスは爽やかに微笑んだ。


「お気づきになりましたか。さすが蒼太様。それはただのケーキではありません。魔王軍の幹部クラスの魔石をベースに、私の幻影魔法で『擬似的な生命(AI)』をコンパイルした、自律思考型・暗黒物質ダークマターケーキです。自ら蒼太様の胃袋へ飛び込み、完璧な栄養素に分解されます」


「食い物に自我を持たせるな! 呪われそうだから絶対食わねえよ!!」


「な、なんと……。完璧な要件定義レシピだと思ったのですが……」


ルシスがシュンと羽を落として落ち込んだ。

――結局、過剰なステータスを持つ三幹部たちの料理は、全て『オーバーエンジニアリング(技術の無駄遣いによる仕様エラー)』という結果に終わった。



「はい、お待たせ蒼太さん」


ドタバタと騒ぐ彼らをよそに、結衣がごく普通のフライパンと包丁を使い、コトコトと手際よく作った料理をテーブルに置いた。


それは、ふわふわの卵に包まれ、ケチャップで可愛らしく『ソウタ』と書かれた、完璧な王道のオムライスだった。


「……おおっ! これだよこれ! 結衣ちゃん、最高!」


蒼太は目を輝かせてスプーンを手に取り、一口頬張った。


「うまっ! 玉ねぎの甘味とチキンライスのバランスが完璧だ! やっぱり結衣ちゃんは新宿の良心だな!」


「えへへ、お粗末さまでした」


結衣が少し照れくさそうに笑う。


「あわわ……! またしても結衣殿に、正妻のヒロイン・ポイントを奪われた……!」


「キーッ! なんでアタシの肉より、そんなチマチマした卵ご飯の方が喜ばれるのよぉ!」


大騒ぎする凛とカーミラをBGMに、蒼太は平和すぎる手作りのオムライスを完食した。


最強の力を持っていようとも、最後は「普通の温かさ(デフォルトの設定)」が一番落ち着く。


神の宣告から数日。新宿のペントハウスは、今日も愛すべきポンコツ幹部たちと、最強の引きこもりによる幸せな笑い声に包まれていた。


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