怠惰の極み・Ver3.0の無駄遣い(インドア・ビーチ)
「あー……。ちょっと外、寒くなってきたな」
昼下がり。ポテチを齧りながらアニメを見ていた蒼太が、窓の外を見てボヤいた。
季節はいつの間にか秋に差し掛かり、新宿の街にも冷たい風が吹き始めている。
「確かに、少し肌寒いですわね。蒼太様、アタシが温めてさしあげましょうか? こう、肌と肌を密着させて……」
カーミラが再びすり寄ってくるが、蒼太はそれを手で制し、スマホを取り出した。
「いや、いいこと思いついた。せっかくVer3.0にアップデートしたんだ。このペントハウスの『空間設定』をいじってみよう」
蒼太が【アーキテクトVer3.0】の管理画面を開き、コンソールにコマンドを打ち込む。
【対象エリア:メガ・マート最上階フロア(広さ:約5000平米)】
【環境データを上書き(オーバーライド)。設定:『常夏のプライベートリゾート』】
『ピイィィィィン……ッ!』
蒼太がEnterキーを押した瞬間、ペントハウスの床や壁がデジタルノイズと共に変形し始めた。
高級な絨毯は真っ白でサラサラの「白砂」へ。
広大なリビングの半分は、透き通るようなエメラルドグリーンの「海(温水プール)」へと書き換えられ、天井には擬似的な「夏の太陽」が輝き始めたのだ。
「えええええっ!? なにこれ、海!? 部屋の中に海ができた!?」
結衣が目を丸くして叫ぶ。
「神の遣いを倒して得たシステム権限を、まさか『室内海水浴場』を作るために使うとは……。蒼太様のスケールの大きさには、ただただ平伏すばかりです」
ルシスがなぜか感動したように深くお辞儀をしている。(彼は完全に蒼太を神格化しているため、どんな怠惰な行動も肯定するバグに陥っていた)。
「よし、お前ら! 今日はここで常夏のリゾートを満喫するぞ。仕事は全部権田に投げとけ!」
蒼太の一声で、女性陣の色めき立つ声が上がった。
数十分後。
「そ、蒼太様……。こ、このような破廉恥な布面積で、蒼太様の御前に立つなど……」
凛が、顔から火が出るほど真っ赤になりながら、フリルのついた清楚な白いビキニ姿で現れた。鍛え上げられたしなやかな腹筋と、恥じらいの表情のギャップが破壊的だ。
「アハハハッ! 凛ちゃんはウブねぇ。リゾートってのは、これくらい大胆に攻めないと!」
一方のカーミラは、そのグラマラスな肢体を惜しげもなく晒す、過激な真紅のマイクロビキニで登場した。彼女が歩くたびに豊満な胸が揺れ、完全に「大人の魅力」で空間を支配している。
「あはは、アタシも着替えたよー! 蒼太さん、泳ごう!」
結衣も元気いっぱいのスポーティな水着で駆け込んでくる。
「いや、俺は泳がない。浮く」
蒼太はアロハシャツにサングラスという完全に舐め腐った格好で、海の上に浮かべた巨大なフラミンゴ型の浮き輪に寝そべり、防水仕様にしたタブレットでゲームを始めていた。
世界を滅ぼす神の降臨まで、あと半年。
しかし新宿の最上階では、最強の引きこもりと美少女たちによる、人類の存亡を完全に無視した最高にハッピーな水着回が繰り広げられていた。




