役員たちの過剰な福利厚生(ハーレム)と、完璧な執事
神の宣告から数日後。
新宿セーフゾーンの最上階、ペントハウスの巨大なキングサイズベッドで、蒼太は昼過ぎまで爆睡していた。
「んんっ……。ふわぁ……」
寝返りを打つと、シーツの中に「何か」柔らかくて温かいものが潜り込んでいるのに気づいた。
「おはようございます、蒼太様ぁ……♡」
「うおっ!?」
顔を真っ赤にして飛び起きると、そこには極薄のネグリジェを纏った『欲帝』カーミラが、シーツに包まりながら艶然と微笑んでいた。
そのグラマラスな谷間が、無防備に蒼太の腕に押し付けられている。
「よく眠れましたか? アタシ、蒼太様の体温が心地よくて、つい潜り込んじゃいました……。朝ごはん、出来てますよ? 和牛のシャトーブリアン・ステーキ(朝食)と、アタシ……どっちから先に食べますか♡」
「朝から肉と七大帝は胃もたれするわ! 自分の部屋に戻れ!」
バンッ!!
蒼太がツッコミを入れた瞬間、ペントハウスの扉が蹴り破られ、お盆を持った凛が鬼の形相で踏み込んできた。
「この淫乱女ァァァッ!! 蒼太様の神聖な寝室で何という破廉恥な真似を! 今すぐその首を刎ねて防壁の養分にしてやります!!」
「ちょっと凛ちゃん! ご飯ひっくり返るから落ち着いて!」
後ろから、結衣が慌てて凛を止めている。
「ふふん、堅物騎士は引っ込んでなさい。蒼太様みたいな偉大な王には、アタシみたいな大人の女の『お世話』が必要なのよ!」
カーミラが蒼太の腕にさらに胸を押し付け、凛が「きぃぃぃっ!」とシステムブレードを抜きかける。
かつての暴君と誇り高き騎士が、主人公の「正妻(お世話係)ポジション」を巡って毎朝のように繰り広げる、レベルの高すぎるキャットファイトだ。
「……お騒がせしております、蒼太様」
修羅場と化したベッドルームの隅の影から、漆黒の軍服を着たルシスが、音もなくスッと姿を現した。
彼の手には、完璧な温度に冷やされたプレミアム・コーラと、蒼太が昨日「食べたいな」とボヤいていた期間限定のポテトチップスが、銀のトレイに乗せられていた。
さらに、片手ではすでに巨大モニターの電源を入れ、蒼太が見たがっていたアニメの最新話を再生待機状態にしている。
「朝風呂の準備も整っております。湯加減は、蒼太様のお好みの39.5度に設定いたしました。お召し替えはこちらに」
「……お前、マジで優秀だな。一家に一台欲しいわ」
「もったいなきお言葉。我がすべては、蒼太様の安眠のために」
ルシスの完璧すぎる「執事ムーブ」に、キャットファイトをしていた凛とカーミラがビクッと肩を震わせた。
「くっ……! またルシス殿に出し抜かれた……! 私は料理の彩りを気にするあまり、お持ちするのが遅れて……!」
「アタシなんて色仕掛けしかしてないじゃない! ちょっとルシス、アンタ男子のくせにヒロイン力高すぎない!?」
「幻影の君主たるもの、主の欲望を先読みするのは当然の処理です」
強すぎる三幹部たちが、蒼太を甘やかすためだけに本気で競い合う。
究極のニート生活は、彼らの過剰な忠誠心によって、さらにダメ人間へと加速していくのだった。




