第36話:神の最終通告(サービス終了予告)と、半年間の有給休暇
砕け散ったモデレーターの破片が光の雪となって新宿に降り注ぐ中、空に開いた真っ暗な亀裂の奥から、これまでとは比較にならないほど重く、底知れない「声」が響き渡った。
『……特権階級天使のロストを確認。まさか、一介のユーザー(人間)がシステムの深淵(Ver3.0)に至るとは』
その声は、感情を持たない機械音声でありながら、明らかな「怒り」を孕んでいた。
新宿を覆う青い結界がビリビリと震え、一万人の市民たちが本能的な恐怖に震え上がる。凛、ルシス、カーミラの三幹部でさえ、顔を強張らせて臨戦態勢をとった。
『相田蒼太。そしてバグに汚染された者たちよ。これ以上の局所的な修正は無意味と判断した。……
半年後。我が本体が直接この星に降臨し、地球という記憶媒体ごと、貴様らを物理的にフォーマット(完全初期化)する』
空の亀裂が、ギリギリと音を立てて閉じていく。
『猶予は半年。せいぜい、終わる世界で無意味な足掻きを続けるがいい――』
パチンッ。
亀裂が完全に閉じ、新宿の空に再び赤い太陽が戻ってきた。
圧倒的な絶望の宣告。半年後に、世界そのものを創り出した『神の本体』が直接全人類を滅ぼしに来る。普通の人間なら、恐怖で発狂してもおかしくない終末へのカウントダウンだった。
「……半年後か」
ペントハウスのバルコニーで、蒼太はスマホを見つめながらポツリと呟いた。
三幹部が固唾を飲んで蒼太の次の言葉を待つ。
「マジかよ……!!」
蒼太の顔が、これまでにないほどパァァッと明るく輝いた。
「えっ? 半年も何もしなくていいの!? 次の納期(世界の終わり)まで、半年も敵が攻めてこないってことだろ!? うおおおおっ、最高じゃん! 超大型の有給休暇獲得だ!!」
「「「……はい?」」」
凛、ルシス、カーミラの三人が、揃って間抜けな声を上げた。
「半年あれば、積んでたゲーム全部崩せるし、アニメも2クール分リアタイできる! よしお前ら、今日から半年間は絶対防衛戦(残業)禁止! 全員でダラダラするぞ!!」
絶望の宣告を、完全な「長期休暇のお知らせ」として受け取った最強の引きこもり。
神との決戦を半年後に控えながらも、相田蒼太の悲願であった『何もしない究極のニート生活』が、ついに幕を開けたのだった。




