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神域のアーキテクト 〜世界が滅亡したので、スマホで自宅を絶対安全要塞に書き換えます〜  作者: kiro


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クラウド破産の危機と、物理最強の『欲帝』



「……んあー、よく寝た」


天帝との三日三晩に及ぶ死闘デスマーチから一週間。


メガ・マート最上階のペントハウスで、蒼太はようやく長いスリープモードから目を覚ました。


「おはようございます、蒼太様! お目覚めのコーラと、ベーコンエッグです!」


「あ、結衣ちゃん。サンキュ……ん? なんか外、めっちゃ賑やかじゃないか?」


結衣から受け取ったコーラを飲みながら、蒼太は全面ガラス張りの窓から外を見下ろした。


新宿区を覆う巨大な青いドーム(絶対防壁)の内側。そこはもはや、崩壊した東京とは思えないほどの活気に満ち溢れていた。


道行く一万人の市民たちは、安全な寝床とエコプラントで生産された美味い食事によって完全に健康を取り戻し、笑顔で談笑している。娯楽施設や温泉旅館からは絶えず賑やかな声が響き、街全体が巨大なテーマパークのようだった。


「いやー、平和だ。天帝と不可侵条約(冷戦)を結んだおかげで、大規模な攻撃も来ないし。これで一生、ダラダラ生きていけ――」


バンッ!!


「そ、蒼太様ぁぁぁっ!! 大変です、緊急事態です!!」 


ペントハウスの扉が勢いよく開き、軍団長の権田が滝のような冷や汗を流しながら転がり込んできた。その後ろには、難しい顔をした凛とルシスの姿もある。 


「どうした権田。天帝が条約破って攻めてきたか?」


蒼太が眉をひそめる。しかし、権田の口から出たのは予想外の言葉だった。


「い、いえ! 敵ではありません! この新宿の……『維持費』です!!」


「は?」


蒼太は慌てて自分のスマホを取り出し、【アーキテクトVer2.0】のステータス画面を開いた。

そこに表示された現在のAPアーキテクトポイント残高を見て、蒼太は「げっ」と声を漏らした。


炎帝を倒して手に入れた、数億に及ぶ莫大なポイント。


それが、信じられない猛スピードで、秒単位でゴリゴリと減り続けていたのだ。 


「な、なんだこれ!? なんの攻撃も受けてないのに、なんでこんなにAPが減って……」


「原因は、一万人の市民たちです」


凛が進み出て、申し訳なそうに報告した。


「蒼太様が作られた温泉や娯楽施設、そして無限の食料生産。これらは全て、システムが『魔石エネルギー(AP)』を変換して無償で提供している状態です。一万人が毎日三度も風呂に入り、一日中クーラーを効かせ、和牛を腹一杯食べていれば……」


「……インフラのサーバー維持費だけで、ポイントが吹っ飛ぶのか!!」 


蒼太は頭を抱えた。


IT業界で言うところの、いわゆる『クラウド破産(従量課金の恐ろしさ)』である。絶対安全な防壁の維持だけでも莫大なリソースを食うのに、一万人の贅沢な生活費まで全て蒼太の「自腹ポイント」で賄っていたのだ。


「このままでは、あと一ヶ月でAPが枯渇し、防壁もインフラも全て停止シャットダウンしてしまいます!」 


権田の悲鳴に、蒼太は即座に決断した。


「……甘やかしすぎたな。今日からこの街は『ギルド制』に移行する。タダ飯は終わりだ」


蒼太はスマホを操作し、新たなルールを街全体に一斉送信した。


【通知:基本インフラ(最低限の食事と安全)以外のサービスを有料化(サブスク化)します】

【市民は結界外の魔物を討伐し、魔石を納品して『Sポイント(独自通貨)』を稼いでください】


「権田! 市民たちに武器を持たせろ。温泉に入りたければ、外で魔石を掘ってこいと伝えろ。ルシスと凛は、市民の討伐クエストのサポートに回れ!」


「「「ハッ!!」」」


こうして、新宿の市民たちは「最高に快適な生活」を維持するため、喜々として外のダンジョンへと魔石狩りに出る狂戦士プレイヤーへと変貌していくのだった。


一方、その頃。


新宿の異常なまでの「豊かさ」に、血走った目を向けている勢力があった。


新宿から南東に位置する、六本木ヒルズ。

その最上階、血と臓物にまみれた玉座の間。


「……アハハハッ! なぁにそれ。無限に湧き出る和牛? 枯れない温泉? 最高じゃなぁい!!」


崩壊した高層ビルの頂上で、一人の妖艶な美女が狂喜の声を上げていた。


彼女の足元には、つい先ほどまで彼女に逆らっていた「レイドボス級の巨大な竜」が、原形を留めないほどの肉塊となって転がっている。


七大帝が一人、『欲帝よくてい』カーミラ。


露出の多い真っ赤なドレスを纏い、グラマラスな肢体から色香を漂わせる彼女だが……その細腕は、巨大竜の返り血で真っ赤に染まっていた。


「カーミラ様……新宿を支配する『相田蒼太』という男は、天帝様と引き分けた規格外のバケモノです。迂闊に手を出すのは……」


控えていた側近が震える声で進言するが、カーミラは側近の顔面を「裏拳」で軽く弾いた。


ドゴォォンッ!!


それだけで側近の身体は音速を超えて吹き飛び、壁を貫通して即死した。


「うるさいわね。天帝だかシステムだか知らないけど、アタシの『欲しい』を邪魔する奴は、全員ぶん殴って奪い取るだけよ」


欲帝カーミラ。


彼女は洗脳や魔法を得意とするタイプではない。彼女のスキル【無限貪欲インフィニット・グリード】は、「自らの欲望(食欲・物欲・支配欲)が強ければ強いほど、基礎ステータス(筋力・耐久・速度)が青天井で倍増していく」という、極めてシンプルかつ最凶の『物理戦闘特化スキル』だった。


天帝が「ルールの王」なら、カーミラは「純粋な暴力の頂点」。


魔法もハッキングも通じない、圧倒的な物理質量と運動エネルギー。それが欲帝の正体だった。


「新宿の美味いご飯も、ふかふかのベッドも、アタシのモノ。……結界ごと、アタシの拳で粉々に砕いてあげるわ」


カーミラは、血に濡れた唇をペロリと舐め回した。


彼女が率いる、六本木の狂気と暴力に支配された「物理最強の略奪軍団」が今、豊かな新宿の富を喰い尽くすために進軍を開始しようとしていた。


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