真の忠誠と、残る六つの玉座
「蒼太……様……!」
完全なる回復、いや、以前よりも遥かに強大な力を得て立ち上がった凛が、涙を流しながら蒼太の元へ駆け寄った。
その後ろから、結衣や権田たちも信じられないものを見るような目で追ってくる。
「あんた、無事だったの!? あの炎のバケモノは……!」
結衣が泣きじゃくりながら蒼太のスウェットの袖を引っ張る。
「ああ、炎上対策(クレーマー処理)は終わったよ。ちょっと手こずったけどな」
蒼太はいつもの気怠げなトーンで笑った。
だが、凛たちは知っている。
彼が安全圏から一歩も出ない冷徹な支配者などではなく、自分たちを庇うために、自らの身を焦がして最前線に立ち、命がけで死闘を繰り広げてくれたことを。
「蒼太様……。貴方様は、我々のようなちっぽけな命のために、御身を危険に晒して……」
凛がその場に膝をつき、深く、深く頭を垂れた。
「これまでは、貴方様の理不尽なまでの神の力に恐れを抱き、狂信しておりました。ですが……今は違います。貴方様こそが、私の魂が仕えるべきただ一人の主君。この命、この剣、未来永劫、蒼太様のために振るうと誓います!」
「俺たちもです! 蒼太様ぁぁっ! 一生、地獄の底までついていきます!!」
権田をはじめとする生存者たちも、全員が号泣しながらアスファルトに額を擦り付けた。
これまでの「恐怖と打算が混じった服従」から、自らを盾にしてくれた王に対する「絶対の忠誠」へと、彼らの心が真に一つになった瞬間だった。
「……やめろよ、暑苦しい。俺はただ、自分の家と、俺の快適な生活を壊されるのがムカついただけだ」
蒼太は照れ隠しのようにそっぽを向いたが、その表情はどこか柔らかかった。
(まあ、悪くないか。こいつらがいれば、魔石集めも自炊も全部任せられるしな)
蒼太が改めてスマホを天に掲げると、要塞化したメガ・マートを中心に、新宿区全域をすっぽりと覆う『多重構造の絶対防壁』が展開された。
第1段階の覚醒を経たこの防壁は、もはや七大帝の攻撃だろうと、システム・ゴッドのデバッグだろうと、そう簡単には破られない神の領域と化していた。
――しかし、世界は彼を放置してはくれない。
新宿から遠く離れた、東京の各所。
六本木ヒルズ、浅草寺、東京湾の海上要塞、そして池袋のサンシャイン60。
それぞれの場所で絶対的な支配を敷いていた『七大帝』の残る六人の王たちが、一斉に新宿の方角を睨みつけていた。
『……炎が消えた。あの戦闘狂が、敗れただと?』
『新宿の結界……先ほどとは次元が違う。あれはまさか、「覚醒」に至ったのか?』
『面白い。炎帝の領地ごと、あのイレギュラーを喰い尽くしてくれるわ』
覚醒を果たした引きこもりSEと、東京を分割支配する本物のバケモノたち。
そして、いずれ訪れる「世界の管理者(神)」による再起動。
真紅の魔石を手に入れ、最強への階段を一つ登った蒼太の前に、真の覇権戦争の嵐が吹き荒れようとしていた。




