決死の防衛線(デッドロック)と、王の蹂躙
「ヒィィィッ! 助けて、助けてぇぇっ!」
熱気で皮膚を焼かれ、結衣や生存者たちが次々と倒れ伏していく。
「貴様ァッ!! 蒼太様の神域を汚すなァッ!」
炎帝の前に立ち塞がったのは、蒼太にバフを与えられた権田と資源回収班だった。彼らは恐怖で足の震えを堪えながら、鉄パイプを構えて突撃する。
だが、炎帝は嘲笑うことすらしなかった。
「ゴミが」
炎帝が視線を向けただけで、権田たちの武器は飴細工のようにドロリと溶け落ち、彼らの身体は全身に重度の火傷を負って吹き飛ばされた。
「が、あぁぁぁぁっ!?」
「権田さん! ……おのれ、七大帝!!」
凛が白銀のシステムブレードを抜き放ち、音速を超えた踏み込みで炎帝の首を狙う。蒼太の『防衛騎士長』の全ステータスを解放した、必殺の一撃。
しかし――剣の刀身が炎帝の首筋に触れる直前。
「ふん。速いが……『冷たい』な」
炎帝の周囲を覆う【万物融解】の概念オーラが、システムブレードの処理すらも焼き尽くし、刀身を根本から溶かし落としてしまった。
「え……っ!?」
「ただの剣撃で、王の炎を斬れると思ったか?」
ドンッ!!
炎帝の拳が、凛の腹部を捉えた。
「が、はっ……ぁ……!」
防衛バフを貫通する圧倒的な火力。凛の身体がスーパーの壁をぶち破って店内に吹き飛び、血を吐いて崩れ落ちた。
「凛……ッ!! 権田……!!」
指令室から飛び出してきた蒼太は、地獄と化した店内の惨状に息を呑んだ。
誰も炎帝に傷一つつけられない。
『システム上書き……くそっ、弾かれる!』
蒼太はスマホから炎帝のデータをハッキングしようとするが、炎帝が放つ膨大な魔力のせいで、遠隔からのアクセスがすべて『タイムアウトエラー』になってしまう。
「お前が主か。……無力だな。結界という殻に引きこもっていただけの、ただの脆弱な人間ではないか」
炎帝が、絶望してへたり込む結衣の髪を掴み、蒼太を見据えて笑った。
「システムを書き換えるには……もっと近づいて、直接『ローカル領域』から叩き込むしかない……!」
蒼太は、これまで一度も安全圏から出ようとしなかった己の弱さを呪った。
彼はスマホを強く握りしめ、炎帝が放つ死の熱風の中へ、自らの足で踏み出した。




