DDoS攻撃(万物融解)と崩れゆく絶対防壁
翌日の正午。
新宿の空は、赤を通り越して「白く」発光していた。
「あ……ああ……ッ」
権田たち生存者が、絶望に顔を歪めてへたり込む。
メガ・マートの駐車場を覆う青い結界の外。アスファルトをドロドロに溶かしながら、一人の男が歩いてきた。
七大帝が一人、『炎帝』。
真紅の外套を羽織ったその男から放たれる熱量は、異常だった。彼が歩くたびに周囲の瓦礫が発火し、空気が陽炎のように歪む。
「約束通り、身代金を払いに来てやったぞ。俺の【万物融解】という名のな」
炎帝が軽く手を振った。
ただそれだけで、太陽の表面温度にも匹敵する極大の火柱が、メガ・マートの結界に直撃した。
『ガァァァァァァッ!!』
「なっ……!?」
店内指令室のモニターを見ていた蒼太は、血の気を失った。
これまでどんな攻撃も無傷で弾き返してきた『絶対安全の結界』が、不気味なノイズを上げて赤く明滅し始めたのだ。
【警告:外部からの異常な熱量を検知】
【分散処理の限界を超過。DDoS攻撃(過負荷)により、結界の維持プロセスが遅延しています】
【AP残量:12,000,000……9,000,000……6,000,000……!】
「嘘だろ!? APが、秒間で数百万単位で削られてる……!」
相手の火力が、システムの演算能力を物理的に上回っている。このままでは数分でAPが枯渇し、結界が割れる。蒼太は震える指でスマホを叩き、結界の修復コマンドを連打するが、画面には無情にも『処理中』のアイコンが回り続けていた。
「蒼太様! 結界が破られます! 私が討って出ます!」
「待て、凛! お前じゃ勝て――」
蒼太の制止の声は、凄まじい轟音にかき消された。
パリィィン……ッ!!
ついに、スーパーの正面口を覆っていた青いワイヤーフレームが、耐えきれずに砕け散った。
「終わりだ。随分と脆い城だったな」
超高温の熱風が店内に吹き荒れ、商品棚が一瞬にして燃え上がる。絶対安全の楽園は、たった一人のバケモノの暴力によって、呆気なく崩壊した。




