ハロウィン当夜の悪魔姉妹
ハロウィン、それは仮装をした人々が街に溢れかえる日のことです。
それは商店街も例外ではなく、ジャック・オー・ランタンが置かれていたり、仮装をした人々があちこちにいたりしました。
「一年ぶりの人間界、この日をどんなに待ち望んだことか!」
興奮気味にそう口にしたのは姉のディブル。
「姉さんは本当に人間界のことが好きなのね、私よりも」
不満げにそう口を尖らせるのは妹のアーブルです。
悪魔の姉妹である二人は年に一度、ハロウィンに人間界を訪れるのが毎年の恒例となっていました。
アーブルの言葉にディブルは立ち止まり、振り返ります。
「あらアーブル、あなたお留守番でも良かったのよ?」
「姉さんが私のいないところで楽しんでるのは嫌なの」
「そうなのね」
ディブルは適当な相槌を打つとまた前を向いて歩き出しました。
賑やかな商店街を、ディブルは鼻歌混じりに歩いていきます。一方アーブルは無言でその後に続いていましたが、ふとその足を止めました。
「甘い匂い……」
匂いの元を辿ると、そこには一店の和菓子屋がありました。その店頭には見たこともないものがずらりと並んでいます。
「アーブル?置いていきますわよ〜」
ディブルの言葉に我に返ったアーブルは、慌ててその後を追いかけました。
「そろそろ魔界に戻らなくちゃね」
アーブルが呟くと、ディブルは言いました。
「ああ、それなんだけれど、わたくしちょっとお土産を買いたいの」
「今年も?」
「だって年に一度しか来られないんだもの。だから待っててちょうだい」
ディブルは早口でそう言うと、どこかへ走って行ってしまいました。その行動にアーブルは呆れつつ、毎年のことだからと許しました。
「待たせたわね、アーブル」
程なくして戻ってきたディブルは、大きな紙袋を抱えていました。アーブルは尋ねます。
「今年は何を買ったの?姉さん」
「その前に言うことがあるでしょう?」
「えっ?」
頭に疑問符を浮かべるアーブルに、ディブルは笑顔で言いました。
「ハロウィンに言うセリフ、あるじゃないの」
「あ、えっと、トリックオアトリート?」
「はいどうぞ」
渡された紙袋に入っていたのは、先程アーブルが和菓子屋で見かけたものばかりです。
「姉さん、わざわざ買ってきてくれたの?」
「そりゃあ、わたくしあなたの姉ですもの」
「姉さん……!」
「さぁ、帰りましょう」
「はい、姉さん」
二人は背中の羽を広げ、魔界へと飛び立ちました。
「それにしても」
ディブルが地上を見下ろしつつ呟きます。
「ハロウィンの夜は本当に良いですわね。変に目立つことがなくて」
「それは、確かにそうね。他にも魔界から来てる子達がいたりして」
「ありえますわね。なんなら来年は他のみんなも誘おうかしら」
それを聞くとアーブルは拗ねた様子で言いました。
「なによ、姉さん。私と二人きりは不満なの?」
「そうは言ってないじゃない。あなたが一番よ、アーブル」
「それなら良かった」
「あら見て、アーブル。あそこのお店、もうクリスマスの準備してますわ。早いわねぇ」
「もう、姉さんたら。でもそこが好きよ」
自由気ままな姉のディブルを、妹のアーブルはなんだかんだで許してしまうのでした。




