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龍の王子と創造の主

 あるところにシロンという名を持つ龍人族の王子がいました。

 シロンは宮殿の中があまりにも退屈なので、時々町へ遊びに行っていました。

 ある日のこと、町へやってきたシロンは怪しく光るゲートのようなものを見つけました。

 シロンは少し迷いましたが、退屈しのぎにはなるだろうとゲートを潜りました。

 するとその先には見たこともない空間が広がっていました。

 元の世界に戻ろうにも、ゲートは消えてしまっています。

 シロンが途方に暮れていると、扉が開いて一人の女性が入ってきました。女性はシロンがいるのを見ると、驚きの声をあげました。

「なんでシロンが私の部屋にいるの!?」

「俺の名を知っているのか?」

「知ってるも何も、作者だもん」

「サクシャ……?」

 初めて耳にする言葉に、シロンは疑問符を頭に浮かべました。

「とりあえず元の世界に帰さないと」

 女性は慌てて部屋にあった機械の電源ボタンを押しましたが、びくともしません。

「壊れちゃったか……」

 落胆する女性に、シロンは声をかけました。

「おい、人の娘」

「あ、えっと、どうしたの?」

「ここはどこなんだ。そしておまえは誰なんだ」

 尋ねられた女性は、少し迷った後にこう答えました。

「私はちとせ。ここはあなたの世界の外だよ」

 ここがどういった世界なのかシロンにはよくわかりませんでしたが、少なくともちとせは悪い存在ではないのだろうと思いました。

 シロンはそれからしばらくの間、ちとせと暮らすようになりました。その間に彼はちとせの優しさや真面目さに好意を抱くようになりました。

 ある日のこと、ちとせが言いました。

「シロン、機械を直してもらったから元の世界に帰れるよ」

 シロンはちとせと離れることを嫌がりましたが、強引にゲートを潜らされてしまいました。

 ゲートが消えた後、シロンは涙を零しながら呟きました。

「せめて最後に、ちとせに俺の想いを伝えたかった」

 一方その頃、ちとせはシロンを強引に帰したことを悔やんでいました。

 彼女は自身が生み出したキャラクターであるシロンのことを心から愛していたのです。

 それを察した発明家の弟は、ちとせに内緒でシロンのいる世界へ飛ばす機械を開発し、彼女を送り出しました。

 何も知らないまま異世界へと飛ばされたちとせは、そこでシロンと再会しました。

 ようやく彼女と結ばれる。

 そう思ったシロンでしたが、ちとせは困った顔で言いました。

「作者の私がここにいるわけにはいかない。すぐにでも帰らないと」

 けれどもシロンは自分のことが嫌いだからだと思い込み、その心に闇を宿してしまいました。

 闇を宿したシロンは、ちとせの心を支配しようと彼女に迫ります。

「ちとせよ、俺のものになるんだ」

 ちとせは涙を浮かべながら言いました。

「だめだよ。私はここにいるべきではないの」

「ちとせ……やはり俺のことが嫌いなのか?」

「それは違う!私はあなたのことをずっと愛しているの!」

 シロンはそれを聞くと、穏やかな笑みを浮かべました。

「そうか……ならば、おまえの本当の願いを教えてくれ」

「私の願いは――この世界の、物語の一部になること。作者じゃなくて、登場人物になりたい!」

 ちとせが叫んだ瞬間、世界は瞬く間に崩壊し、そして再び組み上げられていきました。

 それから時は過ぎ――

 姉を異世界へ送り出した弟は、かつて姉が書いた物語の内容が変わっていることに気がつきました。

 それはシロンという名の龍人族の王子がチトセという龍人族の娘と結ばれる恋愛物語でした。

「姉さん、ずっと向こうに憧れてたんだな」

 弟はそう呟くと、物語が書かれたノートの隅にメッセージを書き込みました。

 幸せになるんだよ、と。

 それと時を同じくして、チトセは思わず空を見上げました。

「チトセ、どうした?」

「今ね、誰かが『幸せになるんだよ』って言ってくれた気がしたの」

 チトセは隣にいたシロンにそう答えると、再び空を見上げて「ありがとう」と呟きました。

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