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祝福のオルゴール

 昔々、あるところにオルゴール職人の女性がいました。

 女性は幼い頃に知らないお姉さんから貰ったオルゴールを持っていました。

 最初は繰り返し曲を聞いていましたが、壊れてしまってからはただの宝物箱として使っていました。

 ある日のこと、店に一人の老婆がやってきて、女性に尋ねました。

「おまえさん、どうしてオルゴール職人になったんだい?」

 女性は答えます。

「それは、幼い頃に貰ったオルゴールを直そうと――あっ」

 そこで女性は忘れかけていたオルゴールの存在を思い出しました。

 閉店後、女性は夜な夜な壊れたオルゴールの修理に取り掛かりました。

 壊れた当時は直せなかったけれど、職人になった今なら直せるかもしれない。

 それからしばらくして、女性はオルゴールを完全に直すことができました。

 木でできた箱はニスを塗り直してピカピカになりました。

 丁寧にネジを回し、流れ出した曲を久々に聞きながら、女性は呟きました。

「あのお姉さん、元気かしら……」

 その瞬間、ひゅうっと冷たい風が吹き、女性は外に一人ぽつんと立っていました。その両手の上には直したオルゴールが乗っています。

「ここは……」

 見覚えのある景色に女性が記憶を遡ろうとした時、どこからか幼い少女の声が聞こえてきました。

「もうっ!パパもママも妹たちのことばっかり!」

 少女の顔を見た女性は驚きました。

 なんとそこにいたのは幼い頃の女性自身だったのです。

「そういうこと、だったのね」

 女性は少女に近づくと、優しく声をかけました。

「可愛いお嬢さん、どうして泣いているの?」

「あのね、今日はわたしのおたんじょうびなの。でもパパもママも『忘れてた』って。しかも『お姉ちゃんなんだから一年くらいがまんしなさい』なんて言うのよ!」

「それはあんまりね。それならこれ、私からのプレゼントよ」

 女性はオルゴールを差し出しました。

「わぁ!もらっちゃっていいの?」

「もちろんよ。お誕生日おめでとう」

 女性は笑顔で言いました。

 それから少しすると、大人の声が二つ飛んできました。

「あっ、パパとママだ!」

「あなたを探しに来たのね。安心して。これからはきっと大切にしてくれるわ」

「うん!お姉さんまたね!」

 少女はオルゴールを大切そうに抱えながら走って行ってしまいました。その背中を見つめながら女性は呟きます。

「じゃあね、昔の私」

 その瞬間、ひゅうっと暖かい風が吹いてきて、気づくと女性は部屋に戻ってきていました。

 机の上に置いていたはずのオルゴールはなくなっていました。

 女性は一人呟きます。

「お姉さんは私自身だったのね。そしてきっと、あの人も」

 それから女性は、誕生日の歌を口ずさみながら紅茶を淹れに行きました。

 しんしんと雪が舞い落ちる、そんな冬の日のことでした。

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