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呪われし探偵

 あるところにとても優秀な探偵がいました。旅をしている探偵は行く先々で殺人事件を解決し、警察の間でも有名になりました。

 けれども探偵には二つ程、大きな問題がありました。

 一つは睡眠時間がとても長いこと、もう一つは事件が起こる度に危険な目に遭っていることです。

 ある時は怪我をし、ある時は海に落ち、ある時は逆上した犯人に殺されそうになりました。

 けれども探偵はそれでも探偵でいることを辞めませんでした。

 そんな探偵の前にある時、死神が現れました。探偵は嬉しそうに叫びました。

「これでようやく呪いが解けるぞ!」

 けれども死神は首を横に振って言いました。

「すまぬが探偵よ、我が迎えに来たのはおまえではないのだ」

「……それじゃあ、今度は俺から誰を奪う気なんですか」

「おまえが飼っているそこの亀だな」

「そう、か……こいつはずっと生きてくれると思ってたのに」

 悲しむ様子の探偵に、死神は問いかけました。

「探偵よ、おまえは何故自らの死を望むのだ。起こる殺人事件を解決する使命を持つおまえは、他人から必要とされているぞ」

「違う!俺がいるから、殺人が起こるんだ!」

「……ほう?」

「若い頃、俺は偶然会った魔導師に強く願ったんだ。『探偵としてたくさんの事件を解決したい』って。だから行く先々で常に犠牲者が――」

「待ってくれ」

 死神が突如話を止めました。

「何か、変なことでも?」

「おまえ、解決したい事件において殺人とは断定していないな」

「あぁ、そうだ。むしろ殺人事件のみを望むなんて人としてどうかしているじゃないか」

「確かに。するとおまえの置かれている環境は妙でないか?」

「……言われてみれば、俺の周りで起こる事件が殺人ばかりなのは、俺の願いと矛盾するな」

 探偵は死神に指摘されて初めて気がつきました。

「フフフ、気づいてしまったようですね」

「誰だ!」

 探偵と死神は声の主を見ると、揃って驚きました。そこには双方知っている存在が浮いていたのです。

「あなたはあの時の!」

「黒魔導師よ、おまえがこの探偵に呪いをかけたのだな?」

「ええ、そうです。大した努力もせず魔の力に頼ろうとしたのですから、当然の報いですよ」

 黒魔導師は蔑むような目で探偵を見ました。一方探偵は何も言い返せず、無言で俯きます。

「……おまえ、呪いを解く気はないのか」

「あるわけ無いでしょう?若い頃の過ち一つで、永遠と苦しめばいいのです」

 そう言うと黒魔導師は消え去ってしまいました。

 死神は探偵に尋ねます。

「探偵よ、おまえは死を望んでいたな?」

「……そうだ。でも、もうやめだ」

 探偵はゆっくりと顔を上げ、宣言しました。

「俺はもう死にたいなんて考えない。しっかり呪いと向き合って、これからも探偵として生きていく」

 死神は優しい笑みを浮かべて頷きました。

「あぁ、それがいい」

 それから細い指で水槽を指差します。

「今回は特別だ。そこの亀を奪うのは、また別の機会にしておこう」

「ありがとう」

 こうして探偵はわざと危険に飛び込むことをやめ、大量の睡眠薬を服用することもなくなりました。

 そしてこれまで以上に優秀な探偵として、名を馳せたそうです。

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