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おかしな夜空

 ピィナは妖精の女の子です。

 ある晩のこと、お腹が空いていたピィナは空に魔法をかけました。

「お空にあるもの、ぜーんぶ美味しいお菓子になっちゃえ!」

 ピィナはまず雲を食べてみました。

「ふわふわしてて、綿あめみたい」

 星はラムネに、月はアイスクリームになっていました。

 ピィナがお菓子になった空を堪能していると、どこからか灰色の雲が風に乗って流れてきました。

「あら?この雲なんかまずそう。でも一応」

 好奇心が強いピィナは灰色の雲を少しちぎって口に入れてみました。

「んっ!?」

 その瞬間、パチッと口の中で何かが弾けたような感覚がしました。どうやら雷雲だったようです。

「あぁ、驚いた。でもなかなか面白い食感だったわね」

 雷雲の味が気に入ったピィナ。もっと食べようともう一度手を伸ばします。

 ところがその瞬間、魔法が解けて本物の雷雲に戻ってしまいました。

 バチィッと大きな音がして、ピィナは思わず手を引っ込めました。

「痛い!なんでこのタイミングで魔法が解けちゃったのかしら?」

「私が魔法を解いたからよ、ピィナ」

 そこに現れたのは大妖精のエミリアでした。

「ピィナ、お空を勝手にお菓子にしちゃだめよ。みんなのものなんだから」

「……ふんっ」

 エミリアに叱られたピィナは機嫌が悪くなって、その場から逃げるように飛び去りました。

「なによなによ!エミリアのやつ、大妖精だからってえらそうに!」

 急いで森の中にあるお家に帰ったピィナは、ひとしきり怒りを爆発させました。そしてその後すぐにまたお腹が空いてしまいました。

「またお空をお菓子に変えちゃおうかな。でもそれするとエミリアがうるさいし……」

 それでもピィナは空腹が我慢できず、また空に魔法をかけようと家を飛び出しました。

 ところが、魔法をかけることはできませんでした。

「はい、ピィナ」

 なんとエミリアがいて、その両手には大きな灰色の塊を抱えていたのです。ピィナにはそれがお菓子にした雷雲だとすぐにわかりました。

「……なんのつもりよ」

「一緒に食べましょう。そうしたら独り占めでなくなるじゃないの」

 ピィナはそれを聞くと、深いため息をついて言いました。

「何をバカなことを言っているのよ。みんなのものを勝手にお菓子にして持って来たら、大妖精として良くないんじゃないの?」

「まぁ、誰かには怒られるかもしれないわね。でもいいの。それであなたの笑顔が見られるのなら」

 そう答えたエミリアはにっこり笑っています。それに対しピィナはフッと口角を上げました。

「全く、あんたには敵わないわね」

「え?私達って戦っていたの?」

「気にしないで。こっちの話よ」

 それからピィナはエミリアに家に入るよう促しました。エミリアの顔がぱぁっと輝きます。

「いいの!?いつもは嫌がるのに」

「今夜だけ特別よ、特別」

「えへへ。ありがとう、ピィナ」

「なんでお礼を言うのよ……まぁいいわ。早く入って食べましょ」

「そうね!」

 こうして、夜は更けていきました。

 そしてこのことがきっかけで、ピィナは少しだけエミリアのことが嫌いでなくなったようです。

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