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クソザコナメクジから始まる最弱勇者~スライムすら倒せない俺が世界を救うって本当ですか?~  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 勇者見習い編

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第38話 三流は誰か――誇りが覆した格の差

 

 洞窟の奥で、空気が張り詰める。


 火皿の炎が揺れ、影が歪んだ瞬間――

 それが、合図だった。


「やるぞ……!」


 ケイトの声に、モナカとアスティが即座に反応する。


「了解ですっ!」

「お任せですわ!」


 山賊達が一斉に襲いかかる。


「囲め!」

「逃がすな!!」


 だが――


「モナカ!」


「はいっ!」


「――ライト・フラッシュ!」


 閃光が弾け視界を焼く。

 山賊達が目を押さえ動きが止まる。


「今だ!」


 その隙を逃さず、俺達は一気に踏み込んだ。


「前衛はアタシに任せて!!」


 その声に反応するように、

 魔剣が低く、嘲るように唸る。


『ビビってるくせに前に出るとか、最高だぜ!』


「う、うるさいわね!!」


 だが。


 プラティナの一撃は――

 重かった。


 剣が振り下ろされるたび、

 空気が震える。


「なっ……!?」


 山賊が、盾ごと吹き飛ばされる。


「……っ!?」


 プラティナ自身が、一番驚いていた。


(な、なに、この力……!?)


 体は、引っ張られる感覚。

 剣に、導かれているような――

 そんな、不安定な強さ。


 魔剣が笑う。

『どうだ?呪いの力も結構良いものだろ?』


「……チッ。使えない部下ばっかりねぇ」


 首領が一歩前に立つと、空気が一瞬で変わる。


「じゃあ――まとめて片付けましょうか」


 湾刀がしなるように振るわれプラティナを吹き飛ばす。


「きゃ……!」


 壁に叩きつけられ、息を詰まらせるプラティナ。



「どうしたの?もう終わりかしら?」



「プラティナさん!!」

 アスティが叫ぶ。


「アタシは…まだ大丈夫。それよりも回復役を守りなさい!」


「もう遅いわよ!」


 今度は庇ったケイトが吹き飛ばされる。 


「ゲホ…ゴホ。やっぱり強ぇ…」


 ケイトの口から血が溢れる。


(このままじゃ……)


「はぁ……まったく。無茶しよるなぁ、ほんま」


 気怠そうな声が、背後から落ちる。


「ヘカテ……!」


 ヘカテが小さな魔道具が、足元に投げる。


 バチィィン!!


 激しい閃光と轟音で首領が目を押さえてよろめく。


「しっ…しまった……!?」


「今や! 長くは持たん!」


「ありがとう!」


 俺は、迷わず駆け出す。


 ステルスマントで気配を殺し、背後へ回る。


 ――だが。


「舐めんじゃないよ。」


 首領が振り向きざまの一閃。


「――っ!」


 咄嗟に受けるが、体勢を崩され思い切り吹き飛ぶ。


「ケイト!!」


 その時――


「……アタシを、忘れてもらっちゃ困るわ」


 プラティナが立ちあがる。


 傷だらけで、息も荒い。


 それでも闘志は折れていない。


「騎士は……仲間を置いて退かない……!」


 魔剣が、低く笑う。


『いい顔じゃねぇか』


 プラティナが一歩、踏み出す。


「呪いの剣だろうと、ニセモノだろうと……

 今のアタシには――これしか無いのよ!」


 魔剣が、低く笑った。


『ハハッ!』

『言うじゃねぇか、落ちこぼれ聖騎士!』


 剣から、不穏な力が溢れ出す。


 首領が、初めて本気の警戒を見せる。


「へぇ……面白い。その覚悟、嫌いじゃないわ」


 二人が対峙する。


 その時。


 俺の中で――

 また、あの“謎の感覚”が、静かに目を覚まし始めていた。


 ――逃げない。


 その瞬間。


 《スキル発動》

 《下剋上等》


「……いける」


 根拠のない確信。


「プラティナ!俺に続け!」


「分かったわ!」


 プラティナが隣に並ぶ。


 震える腕。

 それでも、剣は下がらない。


「行くぞ!」


 同時に踏み込む。



「援護するわ。」


 アスティが即座に動く。

 魔法の短剣が宙を舞い、狙うのは首領の足元。


≪ホーリー・ダガー!!≫


「フフッ……甘いわよ!」

 首領が避けた、その刹那。


「――そこや」


 ヘカテが低く呟き、腕輪型の魔道具を起動させる。


 ギィィン……!


 空間が歪み、首領の動きが一瞬だけ鈍った。


「拘束陣や。数秒が限界やけど……」


「回復と強化です。……これが今出来る精一杯です!」


 モナカの声と同時に、淡い光が広がる。

 俺とプラティナの身体を包み、鈍っていた感覚が一気に研ぎ澄まされる。


「皆、ありがとう!!」


 ――その刹那。


「はああああっ!!」


 ケイトとプラティナが飛び込む。


「これで……終わりよ!!」


 横薙ぎの一閃。


 二つの刃が交差する。


「――がっ……!」


 首領の身体が大きく仰け反り、

 そのまま膝をついた。


 血が、床に滴る。


「……はぁはぁ……」


 荒い息。


 だが――


 その口元は、まだ笑っている。


「……やるじゃない…」



 ゆっくりと顔を上げ

 視線は、真っ直ぐにプラティナへ。


「昔のアタシなら……負けなかったのにねぇ」


 くすり、と小さく笑う。


「”四勇騎(あいつら)”に届くには……まだまだ足りないけど」


 一瞬、目を細める。


「――それでも」


 視線が、俺達全員をなぞった。


「仲間で補う、か……」


 その言葉には、ほんのわずかに――

 懐かしむような響きが混じっていた。


「……ふふ」


 自嘲するように、肩を震わせる。


「結局……」


 血を吐きながら、ぽつりと零す。


「三流だったのは……アタシの方ね……」


 身体が、ゆっくりと傾き――


 そのまま、地面に崩れ落ちた。


 辺りが静寂に包まれる。


「……終わった……?」


「ええ、ですわね」


「ほんま、無茶しよる……」


 ヘカテが肩をすくめる。



「……勝った……」

「アタシ達……勝ったのよ……」


 プラティナは、その場に座り込み――

 大きく息を吐いた。


 俺は、剣を下ろし、ただ立ち尽くす。


(……まただ)


 あの感覚。


 けれど――


 俺はまだ、それを知らない。


 弱さを抱えたままでも。


 ――格上は、倒せる。


 その事実だけが、

 確かにそこに残っていた。








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