第37話 落ちこぼれ聖騎士と呪いの剣、それでも誇りは折れない
絶体絶命。
張り詰めた空気を――
「――そこまでよッ!!」
高く澄んだ声が、戦場を切り裂いた。
「……!」
主人公と首領、双方の視線が跳ねる。
崩れた壁の向こう。
煙を裂いて現れたのは――銀色の影。
長い銀髪。
立った耳と、揺れる尻尾。
傷だらけの鎧。
それでも、背筋は折れていない。
「プラティ……ナ……?」
「ええ。牢を抜け出したわ」
息を整えながらも、剣を構える。
「騎士を舐めないでほしいわね」
その姿を見て――
首領が、ゆっくりと目を細めた。
「……へぇ」
空気が、変わる。
「その立ち方……なるほどねぇ」
指先で顎をなぞりながら、愉快そうに笑う。
「どっかで見たと思ったら・」
「“グローリア家”の型じゃないの」
――ざわり。
周囲の山賊達がざわめく。
「マジかよ……ジェリダ最強の聖騎士と謳われる人物と同じじゃねぇか。」
プラティナの肩が、わずかに揺れた。
首領は、にやりと口角を上げる。
「昔ねぇ、ちょっとだけやり合ったことがあるのよ」
「ま、結果は――アタシの“完敗”だったけど」
軽く肩をすくめる。
だがその目は、笑っていない。
「Sランク冒険者だった頃の話だけどねぇ」
空気が凍る。
(……Sランク……?)
直感が告げる。
――今までの相手とは、次元が違う。
「でもさぁ、アンタは違うわねぇ」
視線が、プラティナの剣へ落ちる。
そして――
「――あら?」
にやり、と歪む口元。
「うふふ…可哀想にねぇ。
名門グローリア家の落ちこぼれが、最後に手にしたのが“それ”?」
プラティナが、息を呑む。
その手にあるのは――
黒く禍々しい刀身。
呪いの魔剣
『エグセ・カリバー』
「真似事はできても、
中身は所詮、三流以下ってわけねぇ」
周囲が爆笑する。
「はははは!」
「聖騎士が呪い武器とか終わってんな!」
笑い声が突き刺さる。
「……っ」
耳が震える。
尻尾が、強張る。
それでも――
プラティナは剣を握り直した。
「……たとえ、呪われていようと」
声は震えている。
だが――折れていない。
「アタシは……騎士よ」
一歩、踏み出す。
「守ると決めた仲間がいる」
「それだけで、剣を振る理由は十分だわ」
一瞬。
洞窟の空気が止まる。
――だが。
「ぶはっ!!」
嘲笑が、再び弾けた。
「聞いたかお前ら!」
「呪いの剣に振り回されながら誇りだってよ!」
「騎士気取りの三流のくせに!」
プラティナの顔が、悔しさに歪む。
その時――
「……黙れ」
俺は、一歩前に出た。
「剣が本物かどうかなんて、どうでもいい」
首領の視線が、ゆっくりと向く。
「あら? 坊やも吠えるの?」
「プラティナは俺達を守って戦ってる」
言葉を、叩きつける。
「それだけで、立派な騎士だ」
一瞬。
首領の目が細くなる。
「……気に入らないわね」
にたり、と笑う。
「――その“誇り”、へし折ってあげる」




