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クソザコナメクジから始まる最弱勇者~スライムすら倒せない俺が世界を救うって本当ですか?~  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 勇者見習い編

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第35話 呪いの剣と聖騎士

 

 案内人の大魔導士ヘカテが指を指す。

 「あれが、奴らのアジトや。」


 山賊のアジトは、山腹を(えぐ)った洞窟だった。

 焚き火の煙と、酒と、血の臭い。

 淀んだ空気が、奥へ奥へと溜まっている。


 ――長く居ていい場所じゃない。


「……行くぞ」


 ケイトが低く告げる。


 その一言で、仲間の呼吸が揃った。


 踏み込む。ケイト一行。


「まずは…これや。」


 ヘカテが無造作に転がした魔道具が、床で弾けた。


 閃光と轟音。


 その後に遅れて、衝撃がアジトを揺らす。


「な、なんだ!?」


「目が……っ!」


 山賊達の視界を奪われ、音に怯む。


 それだけで、十分だった。


「今だ!」


 ケイト達が一気に流れ込む。


 狭い通路。逃げ場はない。


 モナカとアスティが横に立つ。

 連携は滑らかで、迷いがない。


「左、三人!」


「任せてください!」


 ≪ホーリー・ライト≫


 主人公は前で剣を振るう。


 混乱する山賊に追い打ちをかけるようにヘカテが

 照明を壊し、退路を塞ぐ。


「敵は何人だ!?」


「わからねぇ!」


 混乱は、連鎖する。


「盗った物は返してもらう」


 ケイトの決意を秘めた一言。


 それが、合図だった。




 一方――

 囚われのプラティナは、鉄格子の向こうで

 外から響く轟音に気付く。


(……何かが起きてるみたい)


 胸が、強く脈打つ。


(もしかして……!)


 その瞬間。


 ガチャリ、と音がして――


 見張りの男が、前のめりに倒れ込んだ。


 鍵が、転がる。


(今だ)


 考えるより先に、身体が動く。


 鉄格子を押し開け、外へ。


 走りながら、耳が音を拾う。

 怒号、金属音、悲鳴。


 尻尾が風を裂く。


(やっぱり、誰かが暴れてるみたい。きっと……ケイト達だわ。)


「アタシも早く合流しなきゃ…。」


 角を曲がり、段差を飛び越える。


 暗闇へ潜る。


 やがて辿り着いたのは――


 保管庫。


 積まれた木箱。

 溢れた金貨。

 乱雑に放り込まれた荷物。


 奪われたものの山。


「……ひどい」


 吐き捨てる。


 その奥へ、踏み込んだ――その時。


 空気が、変わった。


 奥の台座に一本の剣が、突き立っている。


 やけに派手な装飾。

 黄金の鍔。宝石。


 だが――


 それだけじゃない。


(……なによ、これ)


 見ているだけで、嫌な感じがする。


 まるで。


 “こっちを見ている”みたいな。


(……怪しい)


 そう思いながらも。


 ――手が、伸びた。


 確認しようとした、その瞬間。


『――おい』


 低い声。


「……っ!?」


 凍りつく。


「な、なな……!?」


 視線が、剣に落ちる。


「剣が……喋って……!?」


『俺様はエグセ・カリバーだ』


 尊大な声。


「は、はぁ!?」


 思わず後ずさり、本能が叫ぶ。


 ――触るな。


 だが、外から、爆音。


 悲鳴。そして仲間の声。


(……みんなが戦ってる)


 一瞬の迷い。


 そして――噛みしめる。


「自分の剣は奪われたまま

 ……今は、選んでる余裕なんてない……!」


 剣に手を伸ばす。


 ――その瞬間。


「っ!?」


 剣から黒い魔力が噴き出し、鎖のように絡みつく。


「なっ……!? 外れない――!」


『無駄だ』


 嗤う声。


『触れた時点で、装備完了だ』


『解除? 捨てる?

 そんな都合のいい話があるかよ』


 背筋に、冷たいものが走る。


『契約成立だ、騎士モドキ』


 愉快そうに続ける。


『お前は弱い。だが、逃げねぇ目をしてる』


 一拍。


『だから貸してやる』


 低く。


『”力”をな』


 その瞬間。身体の奥に、何かが“流れ込んだ”。


「……っ!!なんて力なの。身体が……」


 膝が、折れそうになる。


 内側から、押し潰されるような感覚。


『当たり前だ』


 剣が笑う。


『お前の器に、俺様をねじ込んでるんだからな』


 息が荒れ、視界が揺れる。


 それでも。


 倒れない。


 プラティナは、歯を食いしばった。


 そして――前を向く。


「……文句は後よ。」


 震える手で。


 それでも、強く握り一歩、踏み出す。


「今は――騎士として、戦う」


『……言うじゃねぇか』


 剣が、愉快そうに笑った。


『ますます。気に入ったぜ』


『騎士モドキ。俺様に振り回される覚悟は――

 できてんだろうな?』


 その瞬間。


 ――ドォンッ!!


 保管庫の扉が、外から吹き飛んだ。


 光が差し込む。


「当然よ。それにアタシは騎士モドキじゃない。

 聖騎士プラティナ・グローリアよ!!よく覚えておきなさい!」


 プラティナは、振り返らない。


 ただ前へ。


 呪いを握り、誇りを捨てず。


 聖騎士は仲間の待つ――戦場へと駆け出した。



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