第34話 元大魔導士と手を組むことになった
必死でプラティナを探すケイト一行。
だが山賊の足取りは、山に慣れた者でなければ追えないほど巧妙だった。
踏み荒らされた下草は途中で途切れ、焚き火の痕も偽装されている。
追跡は難航し、時間だけがじりじりと削られていく。
「……くそ。早く見つけなきゃ、いけないのに。
山賊の奴ら、随分手慣れてやがる。」
ケイトが低く呟いた、その時。
「へぇ。君ら、山賊探してるん?」
どこか気怠げで、皮肉を含んだ声。
振り向いた瞬間、
木陰から一人の女性が姿を現した。
赤紫の長い髪に、ところどころ差し込まれたピンクのメッシュ。
細身の体躯に、魔導士のローブ……だが、古びているというより、
改造され尽くしている印象だった。
腰や腕には、見慣れない魔道具が幾つも吊られている。
「誰だ……?」
ケイトが身構えると、女は肩をすくめた。
「そんなに警戒せんでええよ。ウチも盗賊探しや」
その瞳は、どこか冷めていて、世界を一歩引いた場所から眺めているようだった。
「名前はヘカテ。
ヘカテ・アルケミア」
そう名乗り、彼女は軽く手を振る。
「肩書きは“大魔導士”。
……まぁ、今となっちゃ皮肉みたいなもんやけど」
モナカが驚く。
「大魔導士ですか?!」
「まぁ。元やけどな。元・大魔導士」
自嘲するように、ヘカテは笑った。
「研究で派手にやらかしてな。
国は追い出されるわ、魔法はほぼ使えん身体になるわで散々や」
冗談めかした口調とは裏腹に、その言葉は重かった。
アスティが一歩前に出る。
「では、なぜ盗賊を?」
ヘカテは視線を山の奥へ向けた。
「ウチが頼んどった素材を運んでた商人連中がな。
この辺の盗賊にやられた」
目が、わずかに細まる。
「取り返さな、研究が止まる。
それに……」
一瞬だけ、感情の色が滲んだ。
「借りは返す主義やねん。」
ケイトは、事情を話す。
目的は違えど、敵は同じ、
何か手掛かりになるかもしれない。
「……俺たちは山賊に、仲間を攫われたんだ。
良ければ力を貸して欲しい。」
その言葉に、ヘカテは小さく鼻で笑う。
「ほな、話は早いな」
彼女は地面にしゃがみ込み、山道を指差した。
「盗賊のアジトはもう割れてる。
ここから北東、崖裏の洞穴や」
「なっ……!」
「足跡、風向き、獣の逃げ方。
あと、ウチの勘」
さらりと言ってのける。
「案内したるわ。
ついでにウチの荷物も取り返す。
利害一致、やろ?」
ケイトは、仲間たちと視線を交わす。
答えは一つだった。
「……頼む、ヘカテ」
「よろしい」
ヘカテ・アルケミアは、くるりと踵を返す。
「ほな行こか。
盗賊さんらの巣穴へ」
その足取りは軽く、
魔法を失ったはずの魔導士とは思えないほど、迷いがなかった。




