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クソザコナメクジから始まる最弱勇者~スライムすら倒せない俺が世界を救うって本当ですか?~  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 勇者見習い編

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第30話  魔王軍会議 ― 脅威となれば殺せ

 


 魔王城――深部。


 黒い石で造られた広大な会議室。

 天井から吊るされた魔石の灯りが、赤黒い光をゆらゆらと揺らしている。


 中央には、巨大な円卓。


 そこに並ぶのは――

 魔王軍の中枢を担う幹部たち。


 ただそこに座っているだけで、並の魔族なら膝をつくほどの威圧が空間を支配していた。


 円卓の上には、二つの黒い駒が置かれている。


 その一つを――


 パキン。


 大きな手が握り潰した。


「……九番隊副隊長ナッシュ、戦死」


 低く重い声が室内に響く。


 声の主は――


 魔軍大将軍ベレス。


 二メートルを超える巨体。

 傷だらけの顔に鋭い眼光。

 顎髭を蓄えたその威圧感は、並の兵士なら睨まれただけで気絶するほどだ。


 かつて人間の勇者を何人も討ち取った戦鬼。

 魔王軍の軍事を担う最高戦力である。


 ベレスは、残った駒を指で弾いた。


 コトリ、と倒れる。


「先日死んだ十番隊副隊長ボイスに続き、ゴブリンキングのナッシュまで失うとは……」


 わずかな苛立ちが声に混じる。


 円卓の反対側。


 青髪の青年が、ゆっくりと眼鏡を押し上げた。


 魔軍大参謀アザゼル。


 端正な顔立ちに丁寧で穏やかな口調。

 だがその瞳の奥には、氷のように冷たい知性が潜んでいる。


 魔王軍の頭脳。

 幾多の戦争を勝利へ導いてきた策略家。


「討伐者は――」


 書類をめくる。


「最近現れた冒険者パーティ」


「勇者見習い、と呼ばれている者たちです」


 その言葉に、数人が反応した。


「勇者見習い?」


 黒いコートの青年が、椅子にもたれながら呟く。


 四勇騎の一人。


 黒閃の死神キリヤ・レハフィール。


 黒衣のコートを纏い、腰には二振りの剣。


 聖剣エグゼ・カリバー

 魔剣ティルフィング。


 かつて勇者ギルドを率いた最年少団長。

 魔王軍幹部を一夜で六人斬り伏せた「黒閃の戦い」により、

 その名は戦場に伝説として残っている。


 だが今では――

 魔王軍の「死神」。


 まだ若い顔立ちだが、その瞳は冷えきっていた。


「勇者なんて肩書き、まだ残ってたのか」


 吐き捨てるように言う。


 アザゼルは微笑した。


「ええ。そして興味深い事に

 ボイスを倒した人物も、この勇者見習いの一人である可能性があります」


 その瞬間。


 ドン、と重い音。


 円卓に腕が置かれた。


「ほう」


 巨大な白髪の男が口を開く。


 四勇騎の一人。


 永久の魔盾ロッシュヴァリー・イスクード。


 身長185センチを超える大柄な体格。

 背には巨大な盾――憎悪の盾メギドシールド。


 かつて彼は「世界の盾」と呼ばれた勇者だった。


 魔族軍団三千の攻撃を、ただ一人で受け止めた

「城壁戦」の英雄。


 どんな攻撃も跳ね返す絶対防御。


 だが信じた仲間に裏切られ、その心は深い憎しみに染まっている。


「つまり……副隊長二人を倒す実力があるとでも?」


「ええ」


 アザゼルは頷いた。


 その時、軽い笑い声が響く。


「へぇ~」


 椅子にだらしなく座る茶髪の男。


 四勇騎の一人。


 魔泥王ルーモス・ブエナライト。


 整った顔立ちに軽薄な笑み。

 指先で杖を回している。


 かつては「万象の勇者」と呼ばれ、

 百以上の魔法を使いこなす天才魔導士だった。


 だがその力を仲間を売るために使い、

 勇者の歴史から抹消された男でもある。


「勇者見習いねぇ…男はどうでもいいけどさ…」


「……そのパーティに女の子はいる?」


 ロッシュヴァリーが睨む。


「……くだらんな」


 ルーモスは肩をすくめた。


「だってさ、勇者パーティって大体女いるじゃん?」


 その瞬間――


 ベレスが拳を置いた。


 ドン。


 空気が震える。


「黙れ!!副隊長が二人死んでいる。遊びではない」


 その時。


 椅子が静かに引かれた。


 長く美しい黒髪が、ゆらりと揺れる。


 その場の空気が、一瞬で変わった。


 四勇騎最強の元勇者。


 終焉龍騎――


 ヴァレリア・ドラグノフ。


 かつて聖騎士団団長として人々に崇められた女騎士であり


 単独で古代龍を討伐した「龍殺しの勇者」。


 彼女が立つだけで、

 抑えきれない魔力が空気を震わせる。


「レベルは?」


 短く問う。


 アザゼルは答えた。


「推定二十前後です。」


 ヴァレリアは、少しだけ目を細める。


「……低い」


「ならば今は脅威ではない」


 ベレスが腕を組む。


「だが勇者だ。いずれ牙を向く」


 キリヤが鼻で笑った。


「勇者なんて大したもんじゃない

 ()()()()()()()()()()()


 ヴァレリアは少し沈黙したあと、言った。


「ならば様子を見るのが先決では?」


 アザゼルも頷く。


「そうですね。今はまだ、脅威ではありません。」


「ですが――」


 眼鏡の奥の瞳が、冷たく光る。


「もし脅威となるようなら」


 ベレスがアザゼルの後に続ける。


「……殺せ」


 部屋の空気が、重く沈む。


 円卓の上で砕けた駒が転がっている。


 ”勇者見習い”。


 まだ小さな存在。


 だが――


 魔王軍は、その名を覚えたのだった。



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