第26話 落ちこぼれパーティ、ゴブリンキング討伐
「ギ……ギサマラァ……!」
膝を深く裂かれたゴブリンキングは、怒りと憎悪を露わにしながらも、なお立ち上がろうとする。
だが、巨体はもう言うことを聞いていない。
「まだ……終わってない……!」
プラティナが前に出る。
足は震え、息も荒い。
それでも、その背中は逃げなかった。
「アタシは……騎士だ……!
キングの棍棒が振り下ろされる。
「危ないっ!」
アスティが即座に詠唱を走らせる。
「――ノーブル・ガード!」
歪んだ光の壁が展開され、
棍棒は完全には止まらないが、軌道を逸らされる。
――ドガァン!!
地面が砕け、攻撃が横へ流れた。
「今よ!!」
その隙を、モナカが逃さない。
「神よ……この身を賭して、仲間に力を!」
≪リインフォース!!≫
柔らかな光が三人を包み込む。
折れかけた心と身体が、確かに繋ぎ止められる。
「……助かる!」
俺は、息を整えながら前に出る。
ゴブリンキングは俺を睨みつける。
さっき、背後から傷を与えた存在。
「オマエ……コロス……!」
恐怖が、喉を締め付ける。
(……怖い)
逃げたい。
本音は、それだけだ。
――それでも。
プラティナが、横に並んだ。
「……一人で背負うな。
前はアタシが立つ」
「……後ろは任せて」
モナカの声。
アスティの魔力が、背中で渦を巻く。
(……ああ)
俺は、気づいてしまった。
今まで、ずっと一人だった。
逃げる時も、殴られる時も、耐える時も。
でも今は――
「……一緒だ」
ゴブリンキングが、最後の力を振り絞り、突進してくる。
「来るぞ!!」
「守り抜いて見せる!!」
≪オース・オブ・プロテクション!≫
プラティナが盾代わりに踏み込み、
正面から棍棒を受け止める。
「ぐっ……!いまだ。行け!」
全身が軋む音がした。
だが、彼女は踏ん張った。
その瞬間。
「――今ですわ!!」
アスティの魔法が、視界を焼く。
≪ホーリー・ライト!≫
直撃ではない。
だが、目を眩ませるには十分。
「ギィ!?」
ゴブリンキングの動きが止まる。
「……今だ!!」
モナカが叫ぶ。
俺は、考えなかった。
ただ――
仲間が作った、この一瞬を信じた。
剣を、両手で握る。
(強くなくていい)
(上手くなくていい)
(……倒す理由が、ここにある)
踏み込む。
――あの感覚が、また訪れる。
説明のつかない集中。
弱さが、噛み合う感触。
《下剋上等――継続。》
俺は、ゴブリンキングの胸元へ。
――ズバァァッ!!
深く、確かな手応え。
「グ……ガ……マオウサ…マ」
巨体が、ゆっくりと崩れ落ちる。
――ドォン。
土煙が上がり、
ゴブリンキングは、完全に動かなくなった。
「……倒した……?」
アスティが、信じられないように呟く。
「……生きてる……」
モナカの声が震える。
プラティナは、へなへなと座り込み、苦笑した。
「……はは…
もう落ちこぼれ騎士なんて言わせないわよ……」
俺は、剣を下ろす。
腕は震え、全身が痛い。
それでも――立っていられた。
(……勝った?)
いや、正確には違う。
――一人じゃ、絶対に無理だった。
弱い四人が、弱いなりに噛み合って。
「……ありがとう」
誰に向けた言葉か、自分でも分からないまま、
俺は、そう呟いていた。
こうして。
名もなき新人パーティは、
正規軍も手を焼いた強敵を打ち倒した。




