第21話 嘲笑の中で始まる最初の依頼
ギルドで正式に依頼書へ署名を終えると、
俺たちは指定された集合場所へと向かった。
王都の外れ、街道に面した小さな広場。
そこにはすでに、いくつもの冒険者パーティが集まっていた。
統一された装備を身にまとう王国騎士団。
年季の入った革鎧を着た中堅冒険者たち。
そして、俺たちと同じように緊張した面持ちの新人らしき一団。
空気が、どこか張りつめている。
「第三班はこちらだ」
騎士の指示に従い、俺たちは列に並ぶ。
その瞬間――周囲から、ひそひそとした声が聞こえてきた。
「……なんだ、あれ?」
「装備、安っぽくないか?」
「田舎から出てきた新人だろ。
ああいうのが一番最初に死ぬんだよ」
小さな笑い声。
わざと聞こえる距離での、遠慮のない評価。
胸の奥が、きゅっと縮む。
(……やっぱり、そう見えるよな)
俺の装備は最低限。
新品の名剣を持ってはいるが、
使いこなしているようには見えないだろう。
モナカが、少しだけ肩をすぼめる。
「……皆さん、すごく慣れている方々みたいですね」
不安を隠そうとする声。
「気にする必要はありませんわ」
アスティは、毅然と前を向いたまま言った。
「実力は、口ではなく結果で示すものですもの」
だが、周囲の冒険者たちはお構いなしだった。
「おいおい、見ろよ。
剣の持ち方、完全に素人じゃねぇか」
「後ろのシスターも震えてるぞ?」
「最初の突撃で泣き出すんじゃねぇの?」
笑い声が、風に混じって流れてくる。
俺は、思わず拳を握りしめた。
(……分かってる)
弱い。
未熟だ。
経験だって、圧倒的に足りない。
それでも――
「……俺たちは、逃げない」
小さく、誰にも聞こえない声で呟く。
モナカが、ちらりとこちらを見る。
「……ケイトさん?」
「大丈夫。
ちゃんと、やるから」
その言葉に、彼女は少しだけ微笑んだ。
やがて、騎士団長が前へ進み出る。
「――これより、ゴブリン討伐任務を開始する。
油断するな。新人もベテランも関係ない。
命を守るのは、自分自身だ」
その一言で、ざわめきは静まった。
嘲笑も、見下しも、消えはしない。
けれど――
俺は、一歩前へ出る。
田舎者でもいい。
新人でもいい。
それでも、ここに立っている。
弱さを抱えたままでも、
前に進むことだけは――
もう、やめないと決めたから。




