ドリーム魚船
目を開けるとそこには派手な模様でいっぱいの見知らぬ天井が広がっていた。
「またこの夢だ...。」
もしかして結城に何かを拾ってもらうのがトリックなのかな?
大きなふかふかのベッドから下り、自分の身長よりもはるかに高いドアを開ける。
とりあえず前と同じように外に出るか。この建物も前と全く一緒だ。
長い廊下をしばらく歩くと、またあの螺旋階段が見えてきた。
「またここ通るの怖いな...」
1段目に足をつけ、手すりに触れる。
「.....あれ?なんともない。」
今度は階段も壁も動かずそのままだった。ほっと胸をなでおろし、2段目に踏み込む。すると突然また階段はぐにゃぐにゃ動きだし、周りの壁も歪みだした。
「やっぱりか!うわっ!」
そしてぐにゃぐにゃの階段を駆け下りてゆく。背中が冷たい。まさか...!
後ろを振り向くと、黒くモヤモヤした靄が後ろから俺を目掛けて近づいてきていた。
「またこれだ!」
全速力で走り、靄を振り切る。やったぁ!ガッツポーズをして喜んでいると、今度は階段に穴が空いた。そして俺は地面の中へ落ちていった。
「うわぁぁぁ!なんだこれ!!」
どんどん下へ下へと落ちてゆく。周りは真っ暗で何も見えない。一体どこまで落ちるんだ!?真下を見ると、小さな白い光が見えた。それは落ちるにつれてどんどん大きくなっていった。
「眩しい...!」
そしてすぐに白い光に飲み込まれた。
――ん...?
目を開けると、そこは天井...ではなく空が広がっていた。雲ひとつない快晴だ。
「ここは...?」
体を起こして周りを見渡すと、ここは...船の上?床はウッドデッキになっていて、上を見ると大きな帆が風を受けて張っていた。でも何かおかしい。不安を抱きながら船の外を見る。
「え...う...う、」
そこにはなんと、青い海ではなく、青い空だった。
「浮いてるー!?」
いやいや、夢だし空を飛ぶことだって不思議じゃない。でもこんなはっきりした夢で空飛ぶなんて...怖いよ!これ落ちたりしないよね?流石にそれはないよね?
船の船首へ行き、下を覗く。
「この舟不思議な形だ。」
まるで魚のような形をしていた。後ろも見に行ってみよう。帆を潜り、終わりが見えないほど遠く見える後部へ行くとそこは遊園地のようだった。
大きな観覧車や、古い工業用煙突が沢山建っている。煙突からは灰色の煙が出ていた。なんだか滅茶苦茶だ。やっぱり夢はなんでもありなんだ。
大きな観覧車が気になり、俺は観覧車のもとへ歩いた。
「あれ...なんだ...これ」
頭の中に昔の記憶が飛び込んでくる。観覧車に近づくにつれて嫌な記憶や当時の感情が塊になって脳に突き刺さるようだった。
怖い。苦しい。痛い。寒い。寂しい...もう嫌だ。全部全部やめてしまいたい。
嫌な予感がして足を止め、引き返そうとした時、なにかに引っ張られるように観覧車へ惹き込まれた。自分の意思とは裏腹に足はどんどん進む。
「はぁ...はぁ...怖い...嫌だ...」
覚めろ覚めろ!早く夢から覚めろ!そう強く願いながらぎゅっと目を瞑る。
「ユウマ...!」
パッと目を開けると、エイデが俺の腕を引っ張り、強く体を引き寄せた。
「うわっ!」
そしてそのまま2人して床に倒れ込んだ。
「エイデ...どうしてここに?」
「ユウマがいたから。それよりも大丈夫か?」
「うん。助けてくれてありがとう。」
よかった。ここに結城がいてくれて。さっきのはなんだったんだろう。これは悪夢なのかな?
「ユウマ、とりあえずここを離れよう。」