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踊る夢見

太陽の光が差し込み、蒸し暑い教室。チョークが黒板に当たる音。ノートで顔を扇ぐ隣の席の女の子。窓から風が吹き込み、カーテンが大きく揺れる。校庭からは、セミの鳴き声と共に大きな声が聞こえる。

そんな暑い夏の日のことだった、俺が不思議な夢を見るようになったのは――


「はい、今日はここまで。次回までに課題提出してください。復習も忘れずに。」

『はーい』クラスメイトの声が教室に響き渡ると同時に、多くの話し声が聞こえはじめる。

授業が終わった。早く帰って課題を終わらせないと。今回はいつもより課題の量が多いからな。


「西田!今日久々に飯行こうぜ!俺の課題手伝ってくれよー」

友達の山崎が肩に手を乗せて話しかけてきた。

「俺だって課題やらなきゃいけないんだよ。今日こそ自分でやれ!」

山崎はいつも課題が出るごとに俺に助けを求めてくる。でも手伝うとそのお礼に毎回ご飯を奢ってくれるから、まぁ悪い奴ではない。

「そんな悲しいこと言わないでくれよ、寂しいだろ?課題は手伝ってくれなくていいから飯だけでも行こうぜ。」

馬鹿な奴だけど、数少ない俺の友達だ。

「…ご飯だけだぞ?」

「まじ?!やった!どこ行くどこ行くー?」

肩を組みながら嬉しそうにはしゃぐ山崎を見ると、なんだか俺も楽しみになってきた。後で母さんにご飯外で食べるって連絡しておこう。

机の上の筆記用具を片していると、端っこに置いてあったボールペンが床に転がった。

コツン

「あっ」

ボールペンは、前を通りかかった男子生徒の靴にあたり、止まった。

「やべっ、ごめん。」

咄嗟にボールペンを拾おうとすると、俺が拾う前にそいつが拾った。

「はい。」

「ごめん、ありがとう結城(ゆしろ)。」

「うん。じゃあな。」

それだけ言って教室から出ていった。結城 影出とは同じクラスだけど今初めて喋ったな。あいつは友達多いし、いつも常に誰かが周りにいるから。

「西田、そろそろ行こうぜ。」

「うん。」


はぁ…疲れた。山崎のやつ、奢ってやるから沢山食べろって無理やり食べさせやがって。

「悠真ー?帰ってきたの?おかえり!」

「母さん、ただいま。」

「お風呂沸かしてあるから、先に入っていいからね。」

「はーい」

あっそういえば今日課題出てたな。次の授業は明後日あるから早めにやらないと。はぁ、眠たいな。

「…課題の前に風呂入るか。」


「やっと終わったぁ」

山崎は課題ちゃんとやったかな。今何時だ?充電器に挿していたスマホの画面をつける。もう23時か。そろそろ寝よう。布団の中に入り、リモコンで電気を消す。暗い部屋の中で瞼を閉じ、今日あったことをふと思い出しながら眠りについた。




――ん…?

目を開けるとそこには派手な模様でいっぱいの見知らぬ天井が広がっていた。

「え…なんだここ…!?」

まてよ、これは夢?そうだ、俺は風呂に入って、課題をやって布団に入って寝たんだ。これは夢だ。明晰夢ってやつか?

「すごい…不思議だな。こんなはっきりとした夢をみるのは初めてだ。」

服装も変わってる。大きなふかふかのベッドから下り、自分の身長よりもはるかに高いドアを開ける。右にも左にも長い廊下が続いていた。ここは城の中か?こんなの初めて見た。とにかく歩いてみるか。

この夢の中では今は昼なのか?長い廊下に並ぶ、沢山の大きな窓から日が差し込んでいる。少し歩くと階段が見えてきた。

「なっなんだこれ…?」

螺旋階段のようにぐるぐると階段が続いていた。壁には沢山の絵画が飾られている。足を踏み出し、手すりに触れる。

~グワン

階段はぐにゃぐにゃ動き、周りの壁も歪みだした。

「うわぁぁっ!なんだ?!」

少しして階段はまた螺旋状に戻った。恐る恐るまた足を踏み出すと、今度は何も変わることはなかった。

「…よかった。夢なんだから何があるかわからないよな。」

そのまま1歩、また1歩と階段を下りてゆく。

なんだか、背中が少し冷たいな。後ろを振り向くと、黒くモヤモヤした靄が後ろから俺を目掛けて近づいてきていた。

「うわぁ!」

少しづつ足を早め、全速力で走る。クソっ足が重い...!黒い靄はまるで踊っているかのように走っている俺の背中を追いかけてくる。

パリッ...パリパリ...バキッ

周りの空間にヒビが入る。そして俺の少し後ろの方から一気にバキバキ割れ、崩れてゆく、まるで俺をどこかへ連れていくかのように。空間の崩れが俺の横を追い抜き、一気に全てが真っ白の光に吸い込まれた。

「眩しい...!」

眩しくて手をかざす。手の隙間から入り込む光で瞳孔が収縮する。

数秒して光は消え、視界が開ける。周りを見渡すと、バラやラベンダーなどの花畑や木々に囲まれ、太陽に照らされるガゼボがある庭園があった。

「綺麗だな...」

こんなに大きなお城みたいな場所に来るのは初めてだからテンション上がるな。夢だけど。

「――」

庭園を眺めながら幸福感に浸っていると、突然後ろから誰かに名前を呼ばれた。

「ユウマ」

パッと振り向き、驚いて目を丸くした。

「え...結城...?!」

そこには、同じクラスのあの結城 影出がいた。なんで結城が俺の夢に出てくるんだ?もしかして学校でボールペン拾ってもらったからか?

「なんだ、よそよそしいな。エイデって呼んでくれよ。」

「え?あぁ、うん。」


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