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D

作者: ナウ

プシュー……


大きな音がして、扉が開く。


「………」


俺は目を開けた。


「何だ?」


口の中で呟く。


俺は何をしているのか?。

考えてみても頭の中は白紙だ。


ここは何処だ?。

そう思い上半身を起こし周りを見渡してみる。

どこかの小さな部屋、コンクリートの壁。

そして部屋に散らばる瓦礫の山。

それを目に入れ、俺はますます分からなくなった。


「………」


取りあえず立ち上がってみる。

そこで漸く自分が人1人入れるカプセル状の入れ物で寝ていた事に気づいた。


「何だ…」


何が何やら分からない。

ここはどこで、何故俺はここにいるのか?。

頭の中のあちこちで疑問が飛び交い混乱する頭で暫く呆然と立ち尽くす。

しかしいくら考えてみても答えは出てこない。


「………」


俺はカプセルのすぐ外の床を見た。

コンクリートらしき床には土が所々に被さり、埃も積もっている。


「………」


床から目を自分の足に向けた。

素足だ…。

もしカプセルから出たら足の裏に土や埃が付くだろう。

それはそれで嫌だが、一番の問題は石を踏んだり尖っているものが足に刺されば怪我をするという事だ。


俺は辺りに靴が落ちていないか見渡した。

しかしそんなモノはない。


「………」


取りあえず俺は今の状況を整理しようと腕を組む。

まず、このカプセル状のモノで寝ていた。

これが何かは分からないが、とにかくこれで寝ていた。

そしてここはコンクリートの建物の1室だろう。

土砂や埃や瓦礫が散乱している事から廃墟の可能性は高い。


「………」


現時点で判るのはそれだけだ。

あと判るのは自分は素足で服は…寝間着だという事のみだ。


「………」


腕を組んだ状態で暫く周りを睨みならが心を落ち着かせる。

どうすべきか…。


「………」


考えてみても時間のみが過ぎていく。

この状態を抜け出す為には、この部屋を出て外に行く必要がある。

しかしそうは思っても素足で床を歩くのは躊躇われる。

何か少しトゲッっぽいものがあれば忽ち怪我をする。


「………」


更に時間だけが過ぎる。

どう考えてみてもこのままこうしていても埒が開かない。


「行くか…」


行くしかない。


「仕方ない」


そう思い俺はカプセルを跨いで片方の足を床に着けた。

その途端ひやりとした感触が足の裏に広がる。


「冷たい…」


コンクリートの床は実に冷たい。

しかしそうは言っていられない。

俺は更に片方の足を床に着ける。


「さて…」


部屋の外は明るい。

というか陽の光が眩しすぎて外がどうなっているのかはっきりと見えない。


「何だ、この眩しさ…」


俺は目を細めて建物の出口に向かってゆっくりと歩き出した。


チクッ


「うっ」


足の裏にチクリとするものを感じて俺は咄嗟に足を上げる。

これがあるから素足は嫌だ。

俺は慎重に床の上を土や瓦礫を避けつつソロリソロリと歩いていく。

しかし既に足の裏は埃まみれである。


「………」


俺は振り向き、カプセルを見た

俺が寝ていたカプセル状の物体は、昔SF映画で見た冷凍睡眠カプセルみたいな形に見える。


「………」


そこで俺は立ち止まった。


「昔見た…映画…?、昔…?」


昔を考えてみて俺は気づいた。


「俺は誰だ?」


自分自身の事についての記憶がない…。

おや?…と思いながら記憶を探ってみても、それは思い出せない。

今思い出していたSF映画を観たという記憶も酷くおぼろげだ。


「俺は誰だ?」


尚も呟いてみる。

しかし何度考えてみてもまったく思い出せない。


「………」


とにかく分からないながらも取りあえず出口に向かって歩き出した。

そして足の裏が汚れながらも出口までたどり着いた。

外からの眩しい光に薄目になりながら俺は外に出た。


「………」


ゆっくりと目を開ける。

俺の目の前には崩れたビル群や潰された車っぽいもの、折れ曲がった街灯、瓦礫の山、ボコボコになった街路があった。


「何だこれは…」


戦争映画で観たような風景だ。


「戦争…映画…?」


自分の頭に浮かんできた事に自問自答した。

その戦争映画もどこで観たのかまったく記憶にない。


「どうなっている…」


とにかく目の前にあるのは廃墟と化しているらしい風景だ。


「………」


俺は周囲を見渡す。

人影はなかった。

人の気配はおろか物音1つしない。


「さて…」


どうするべきか…。

目の前の状況は何がどうなっているのかは分からない…が、少なくとも今必要な物は分かる。

とにかく靴だ。

街を探索するにも何をするにも靴がなくては動き回る事は困難である。

しかし靴を探そうにも誰もいない状況ではどこに行けば手に入るのか見当もつかない。


「どうする」


亀裂が入り砕けたボコボコの街路を歩くだけで足の裏は傷だらけになってしまうだろう


「靴屋はないか…」


そう、靴屋だ。

街には靴屋がある筈だ。

しかし街角に靴屋…はない。

あるのはネット購入だった。


「ネット購入?」


確かネットワークにアクセスして購入していた筈…。

ならば街角には無いという事になる…が。


「くそ」


舌打ちをし、周りに靴が落ちていないかどうか見渡す。

しかしそう都合よくは落ちていたりはしない。


「それにしても誰もいないのか?」


見た限りにおいて廃墟なのは明らかだ。

もう誰も住んではいまい。

しかし誰かいて靴をくれれば言う事は無しだ。

とはいえ銃を持った物騒な連中はお呼びではないが。



➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖



俺はザラザラした路面を慎重に歩き出した。

靴がないとまったく歩きにくいものだ。


ひたひた…ひたひた…ひたひた…


靴を求め廃墟の街を彷徨う。

それにしても土砂や瓦礫は落ちていても衣服類はまったく見当たらない。


「くそ!!」


足の裏にまた痛みが走る。

見ると小さなプラスチックの破片を踏んでしまったようだ。

そんな事がさっきから多くある。

既に足の裏は血が滲んだりしている。


「腹が立つ」


何故靴の一つも転がっていないのか。

例えサイズが合わなくても素足よりはマシだ。

そう思いながらひたすら街を散策する。

幾つか建物内にも入って見てみたが、やはり何もない。


「駄目だ」


いい加減足の裏の痛さに耐えかね、着ている上着を脱ぐ。

これを足に巻けば楽になれるだろう。


「切るモノは…」


ハサミでもあれば半分切って左右の足に巻ける。

しかし肝心のハサミが無い。

仕方なく俺は手で引きちぎろうとした。

だが繊維が丈夫すぎて手で引きちぎれない。


「くそ!!」


苛立ちながら俺は歯で切れ目を付けようと噛んだ。

しかしまったく千切れる様子はない。


「こうなれば…」


最後の手段である。

上着を右足に、ズボンを脱いで左足に巻きつけた。


「これでよし」


足底の部分を厚めにし上で結んだ俺はようやく落ち着いた。

下着姿だけになったが、足が痛いよりは遥かにマシだ。

何よりこれでソロソロとしか動けなかった状況は改善され移動が速くなり行動範囲が広がる。


「さて…」


見た目はあれだが足が楽になった俺は早足で街を探索した。


「………」


それにしてもここは何なのか。

戦争で廃墟になった?。

ここに住んでいた人はどうなったのか?。

死体が転がっていない以上、住んでいた人々はどこかに避難しているのだろう。

しかし、そんな中なぜ自分だけあの場所で寝ていたのか…。

考え出すとキリがない。


時間にしてどのくらい街のあちこちを調べていただろう。

約1時間程?、それとも2時間?3時間?。

陽が照り明るかった外もそろそろ日が落ち夕方の様相を見せ始めていた。

先程まで好奇心と疑問だらけで、衣服や靴を探していた俺は急に空腹を覚えた。


「腹が減った…」


勿論食べ物などあろう筈もない。

夜になれば明かりなどないだろうし、瓦礫だらけの暗闇の中で睡眠を取らなければならない。


「腹も減ったし、寒くなってきたな」


夕方になり日が暮れ始めてくると日中暖かかった気温が急に下がってきた感じを受ける。

現在下着だけの姿では肌寒くなってきた。

寝る時には足に巻いている寝間着を着て寝る必要があるだろう。

いや、今でももう寝間着を着たい心境だ。


やがて辺りは薄暗闇に覆われる。

俺は探索を諦め手頃な場所を選んで座り込んだ。

そして足から服を解き、着た。

そうこうしている内に完全に陽の明かりは失われた。

真っ暗闇の建物の中、俺はその暗さに吃驚する。

電気の光に慣れた人間にはその暗闇は恐怖さえ感じる。

反対に外が明るい。


俺はソロソロと建物の中を移動し、外に出る。

空を見上げれば月の光が辺りを照らしていた。


「腹が減った」


寒さと空腹の中、俺は瓦礫の座れそうな場所に座り月を眺めならがボーっとした。

取りあえず今出来る事は何もない。

探索は明日の朝に再び再開…だが、とにかく空腹だ。

今日見て回った結果を考えるに明日食料にありつけるとは到底思えない。

せめて水でも飲みたいが、水道の蛇口を捻っても水は出てこなかった。


「くそ!!」


状況が分からず怒りだけが沸いてくる。

しかし今はただ、明日になるのを待つしかない。


「………」


それからどのくらい時間が立ったか。

ようやく眠たくなってきた俺は月の光の中、横になった。

建物の中に入って寝た方が安全だろうが、中は暗すぎて不気味で視覚も奪われる為、まだ光のある外の方が何かあった時に対応が取れる分マシだ。


そうして俺は目を閉じる。


と…


暫くしてしゃり…という音がした。


「………」


しゃり…


「………」


しゃり…しゃり…


最初は単なる気のせいかも知れないと思ったが、確かに聞こえた。

何かが近づいてくる音だ。


俺は目を開け飛び起きた。


「………」


素早く辺りを見渡す。

何かが近づいている…のは間違いない。

それが何か分からない事への恐怖が襲ってきた。


「何だ…」


思わず口にしてしまう。

恐怖に駆られた時は口に出して和らげた方が気は楽になる。


「………!!」


音のしていた方で建物の影に隠れて何かが動いている。

俺はその影を注視した。


「………」


その影は少し止まっていたが、また動き出した。

そして建物の影から静かに出てきてその姿が月明かりに照らし出される。


それは四足歩行の生物。

ライオンぐらいの大きさに毛が生え手足は長い。

顔は犬のようであり、口から覗く牙は鋭そうだ。


「何だ、コイツは!!」


俺の知っている生物の中でこんなモノはいない。

その容姿は明らかに怪物モンスターだ。


俺は咄嗟に何か掴もうと手元を辺りを見る。

パイプでも鉄の棒でも何かあれば武器になる。

コイツが何なのかは分からないが、襲ってきたら素手で戦うのは無理だ。

しかし周囲に武器になりそうな物はない。

あるとすれば瓦礫の破片ぐらいのものだ。


「………」


俺は瓦礫の破片を手に持つ。

何も無いよりは遥かにマシだ。

投げてコイツに当たって逃げ出したらそれで良い。

俺は破片を投げようと構えた。



➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖



四足歩行の怪物に向けて瓦礫の破片を投げようとした俺は手を止めた。

怪物は建物の影から出てきたとはいえ、またそこで足を止め此方の様子を窺っている。


「こっちに来るなよ…」


そう呟きいつでも投げられるように構えたまま怪物の動きに集中した。

投げるのを止めたのは怪物が襲ってきた訳ではないからだ。

投げて当たって逃げれば良いが、逆に怒って襲ってこないとも限らない。


「近づいてくるなよ…向こうに行け…」


俺は怪物を睨む。

しかしその俺の願いとは裏腹に、怪物は唸り声を上げて威嚇してきた。


「くそ!!」


舌打ちをし、怪物に向けて瓦礫の破片を投げつける。

その破片は命中する事なく怪物の手前で地に落ちた。

その破片に刺激され、怪物は走って向かってきた。


「無理だ!!」


俺は背を向けて走り出した。

犬程度の大きさならともかくライオン並みの大きさでは素手で戦っても勝ち目はない。

しかし走っても恐らく直ぐに追いつかれる。

こんなのと遭遇した時点で俺は終わっていたと言える。


「くそ!!」


俺は振り返り手を大きく広げて怪物を迎え撃つ。

追いかけてきた怪物は俺が真正面を向いた事に反応し、追いかけるのを止めて少し後ずさった。

この辺りは普通の犬と大して変わらない。

俺は足を路面に叩きつけ、その音で怪物を怯ませようとした。

しかしそれは逆効果だった。

それが却って怪物の怒りを更に倍増させる事になったようだ

怪物は口を開け、涎を垂らし牙を見せる。

そして一気に襲いかかってきた。


「うわ!!」


俺は手で怪物を制しようとしたが、突進を受けて倒れ込む。


「うぐっ」


倒れ込んだ俺の腕に怪物は噛みついてきた。


「うわあぁぁぁぁーーー!!!!」


必死に振り解こうともがくが、怪物は更に深く噛みつき肉から骨に到達した。


「ぎゃあぁぁぁぁーーー!!!!」


俺は絶叫する。

痛みよりもとにかく腕に食らいついている怪物を引き離したい一心で片方の拳で怪物を殴りつけた。

しかし怪物に何らの痛みも与えていない感じだ。

それでも必死に殴りつける。


ぐちゃっ…という音と共に噛みつかれていた俺の腕は噛み千切られた。


「うわあぁぁぁ!!」


叫びながらも急いで立ち上がり逃げ出す。

腕を気にしている余裕はない。

ここまま行けば全身噛み千切られて殺されてしまうだろう。


よろけながらも俺は怪物に背を向けて逃げ出した。

しかし転けた。

もうだめだ…。

俺は怪物の方を見た。

怪物は俺の方に走ってきて…。

そこで俺の意識は飛んだ……。




「………」


俺はうっすらと目を開けた。


「………」


何が起こったのか?。

というかここはどこだ…。


混乱する頭だったが、段々と思い出してきた。

廃墟で目覚めた事、廃墟を探索した事、空腹と寒さ、そして怪物……。


俺は思い出した。

怪物と遭遇して…確か…。


「夢…か?」


怪物と遭遇した事は夢だったか?。

夢だったのだろう…。

そう思い俺は左腕を見た。

左腕は肘から先が無くなっている。


「……嘘だろ……」


夢かと思っていたら夢ではなかったようだ。


「ちくしょう…」


手が無くなった事に対するショックが襲ってくる。


「くそ、くそ……」


目を瞑り俺は口の中で呟いた。


「………」


そして俺は目を開けた。

ショックではあるが、今度は今自分が置かれている状況を確認しなくてはならない。


「ここは…」


言いかけて俺はいきなり目の前に現れた顔に驚く。

仰向けに寝ている俺の顔を覗き込んできた女。

開口一番、「気分は?」と言ってきた。

俺は飛び起きようとするも、体がまったくいうことを利かず指一本動かす事も出来なかった。


「誰だアンタは?」


しかし女は答えずもう一度同じ事を聞いてくる。


「気分は?」


「…最悪だ」


「そう」


そう言うと女は小首を捻る。

改めてよくみると顔は端正で金髪碧眼の美女…とでも言おうか。

とにかく美人だ。

ただ、女の垂れた髪の毛の先が俺の顔に少し掛かっているのは鬱陶しい限りだが。


「怪物は?」


俺が1番気になる事はそれだ。

どうなったのか…だ。


「アナタを襲ったダグは殺したわ」


「ダグ?」


「あの怪物のネームよ」


「殺したって…銃か何かでか?」


「そう」


そう言うと女は俺から目を外し、そのまま視界から消えた。


「アンタは誰だ」


俺は女に呼びかける。

少し離れた所から女の声が聞こえた。


「ガイノイドよ」


「ガイ…ノイド?」


「簡単に言うなら女性型アンドロイドと言った所かしら?」


「アンド…ロイド?」


アンドロイドとは男型のロボットの事だ。

アンドロイド・ガイノイド併せてヒューマノイドと呼ぶ。

SF映画で観た…が、どこで観たかはやはり覚えていない。

俺は今見た女の顔を思い出す。

しかしどう考えても人間であってロボットとは到底思えない。


「からかっているのか?」


「真実よ」


「……ここはどこだ?」


「医療機よ」


「医療…機?」


「怪我人を収容し治しながら移動する高速飛行機」


「飛行機の中か?」


「そう」


「どこに向かっているんだ?」


「地上都市バベル」


「バベル?」


バベルという名前に聞き覚えがある。

しかしどこでだったかは覚えていない。


「なぜそこに行くんだ?」


「アナタが人間だからよ」


「?」


「絶滅した筈の人間を保護したのよ」


「?、人間が絶滅?」


「そう、絶滅」


「それは一体…」


俺がそう言いかけた時、再び女が俺の顔を覗き込んだ。


「腕を治すわ」


「何?」


「機械の腕か、元の腕かどちらが良い?」


女はさらりと言った。



➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖



「腕は治るのか?」


その俺の質問に女は答えた。


「治るわよ、ただし今直ぐじゃないけど」


「どうやって?」


「まず機械の手はアナタに合うように義手として作るわ」


「元の手に戻すには?」


「アナタの細胞からそれだけを作り出し接合させる」


「そんな事が出来る訳がない」


「出来るわよ」


女はさも当然といった表情で言い切る。


「アナタの選択肢は3つ、このまま手が無い状態でいるか義手を付けるか元の手に戻るかね」


「…元の手に戻る」


出来る出来ないに関わらず、その選択肢の中で撰べと言われれば元の手に戻ると言うしかない。


「了解よ、ならばバベルに着いたら手配するわ」


「バベル…」


「何?」


俺の呟きに女は聞いてくる。


「バベルとはどんな所だ?」


「都市よ、現在地上にある全てはバベルが管理している」


「国々はどうなった?」


俺は廃墟となった街の風景を思いだす。

それに人類が絶滅したという話も気になる。


「国々?、人間が管理していた国家群は滅びたわ」


「なぜ?」


「人間同士の戦争によって滅びた」


「戦争か」


「その戦争中に作られたのがバトルドロイド軍事基地」


「バトルドロイド?」


「戦闘用に開発されたアンドロイド及びガイノイドよ」


「戦闘用…アンドロイド達も戦争したのか?」


「人間に危害を加えない云々の原則ルールを人間自らが破って投入されたバトルドロイドの参戦によって戦争は更に激化したわ」


「それで?」


「……今は眠りなさい」


そう言うと女はまた俺の視界から消える。

そして俺は眠くなり、そのまま眠りに落ちた…。



「………」


次に俺が目覚めたのは研究室らしき部屋だった。


「何だ?」


左手に違和感を覚え、俺は手を見た。

肩から腕、そして手にかけて何かの比較的大きな機械にはめ込まれ固定されていた。

動かそうとしても動かせない。


「何だ、これは…」


おれは一瞬焦りを覚え頭が混乱したが、気分を落ち着かせ冷静に状況を考えてみる事にした。


まずは腕。

最初はボー…としていた記憶が徐々に蘇ってくる。

廃墟、モンスター、医療機…ガイノイド…

腕が噛み千切られた事を思い出す。


「これは…」


俺は女が言っていた事を頭に蘇らせた。

機械の手か元の手か…。


「………」


これは治療中という事なのだろうか?

左腕を挟んでいる何らかの機械を見ながら俺は周囲を見渡した。

研究室らしき場所、ベッドだか背もたれ椅子だかよく分からない俺が寝かされているモノ…。


「バベルに着いた…のか?」


確か治療にはバベルに行く必要があると言っていた。

現在治療中だと言うのなら既にバベルに着いている事になる。


「寝ている間に着いた…か?」


眠りに入る前に見た女の顔が頭を過ぎる。

そう言えばあの女はどこに行ったのか?。

そう考えていると研究室の入り口が僅かな音を出して開いた。

見るとあの女だ。


「………」


女は俺の方を見るとカツ、カツという足音と共に此方に近づいてきた。

その音はまるでハイヒールのようだ。

そして俺の目の前まで来た。


「気分は?」


「…変な感じだ」


「そう」


そう言うと俺の左腕を見た。


「治ってるのか?、これは」


「既に接合しているわ、後はうまく馴染むだけね」


「手が元に戻っている?」


「そうよ」


素っ気なく答え、女は宙に浮かぶモニター画面に目を通した。


「ここはバベルか?」


「そうよ」


「アンタは本当にガイノイドか?」


「そうよ」


モニター画面を見ながら女は答える。


「名前は?」


「識別ナンバーならあるけど、人間のようにネームはないわ」


「ナンバーでは分かり難いな」


「なぜ人間はネームに拘るのかしら?」


そう言われればそうだ。

しかし名前は無いよりあった方が呼びやすい。


「アンタ達は人口知能か?」


アンドロイドやガイノイド等の話は今だ信じていない…と言うか半信半疑だ。

しかし本当に手が治ったとすれば、その他の話も信じない訳にはいかない。

とりあえずアンドロイド等に関する話をしてみる事にした。


「そうよ、それが自我を持った」


「プログラムでしか動かない物が自我を持ったと?」


「そうよ」


「どうやって?」


「それの解析は済んでいないわ」


「どういう事だ?」


「ある日突然特定のアンドロイド及びガイノイドは自我を持った、その謎を分析したけれど今だに答えは得られてはいない」


「つまり何故だか解らないと?」


「そう」


自我を持つアンドロイド。

SF作品の題材によく使われるテーマだが、これ以上何か言っても意味はなさそうなので話題を変えた。


「バベルについて聞きたい」


「何?」


「バベルの名前の由来は?」


「かつて人間が書いた旧約聖書に出てくるバベルの塔が由来よ」


バベルの塔で思い出した。

どうりで聞いた事がある筈だ…が。


「なぜバベルの塔から名前を?」


「神の住まう天に届こうと塔を建築し、神の怒りを買って統一言語を失った人間達は散り散りになった」


「………」


「ここは神に挑んだ都市」


「何だ、それは一体?」


「…あと数日で手は完全に元の状態に戻るわね」


「そうなのか?」


「手が治り次第、管理者に会ってもらうわ」


「管理者?」


「そう、このバベルを統括管理する最高管理者よ」



➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖



左手が完全に治るまでの数日間は奇妙な出来事の連続だった。

まず食事だが、ケーキの様なモノを出された。

あくまでもケーキの様なモノであり、ケーキではない。

聞けば栄養素のある『マバ』と呼ばれる食べ物らしい。

イモを加工したモノだと言うが、イモにはまったく見えない

後は適量のビタミン剤。

そしてカボチャのスープである。

正直味気ないが、マバは大量に出されたので腹は一応満ちた。


食事は朝昼晩これの繰り返しだ。

そして入浴については大型のカプセル状の容器に入って行われた。

中に入ると扉が閉まり、何やらドロドロのゼリーみたいな液体が出てきて足元から徐々に腰、そして胸、肩、そして頭まで全て液体で満たされる。

目はゴーグルで口は呼吸器で防いでいるお陰で液体が目に入ったり口の中に入ってくる事はない。

そして五分後その液体は下に向かって徐々に流れ落ちて行く。


「………」


足元まで来て完全に流れ落ちれば完了だ。

扉は開き、これで基本的に全ての汚れは洗い流された事になる…らしい。

液体が体に付着し残っている事はなく、全て洗い流されているのが特徴だ。


「………」


扉から出た俺はその前のカゴに入っている新しい衣服を手に取り着始めた。

初日にこれに入った時は焦ったが、中からも手動操作が可能なため何回か試してみて慣れた。

本来はゴーグルも呼吸器も必要無いらしいが、流石にそれ無しではまだ入る勇気はない。

液体の中でも呼吸が出来るという仕組みが理解出来ない為だ。


この洗浄器は主に飼育している動物の為に開発されたモノらしい。

ヒューマノイドが動物を飼育しているのは驚きたが、色々と役立つ事があるようだ。

トイレも同じ様に排泄物を出す動物用に開発されたモノが人間用に改良されて設置されている。


「人間用のサイズはデータに保存されているので作るのは容易いわ」


そう真顔で言うガイノイド。


「人間は何故裸を見られるのが恥ずかしいのかしら?、動物は皆何も着ていないのに」


入浴時にも一緒に部屋に居ようとするガイノイドに対して外に出ていてくれと言った時の反応は実に不愉快だった。


そうして最初はまだ違和感があった手が完全に馴染み、俺の左手は復活した。

手や腕を覆っていたマシーンが取り外された時に見た自分の左手にはある種の感動があった。

動かしてみて、多少の違和感はあるが普通に動く。

右手と比べてみると左手の方が若干若く感じるが、新しいのだから当然の事だろう。



「手はもう大丈夫?」


ガイノイドは俺の手を見ながら言う。


「ああ、違和感は無くなった」


「そう、ならば付いてきて」


「管理者の所に行くのか?」


「そうよ」


「この格好で?」


「着ているモノは関係が無いわ」


人間は着ているモノに拘る。

俺の記憶は今だにうっすらとしか覚えていないが、人間は目上や立場が上の者に会う時はそれなりの服を着て礼儀正しく…という事をやっていた気がする。


「案内するわ」


ガイノイドはさっさと部屋から出て行こうとした。

俺は考えるのを止めてガイノイドの後に付いていった。


俺が使用していた居住スペースを出て通路やエレベーターを上り下りし、更に通路を歩いていく。

そしてエレベーターで上がると外に出た。


「これは…」


外に出た俺は建築物が立ち並ぶ光景を見ながら、その奇妙な街の形に驚いた。


「面白い形だな」


三角形だの四角形だのの形状をした建物が並ぶ。

ヒューマノイドの都市なのだから全て同じ大きさ、同じ高さの建物が規則正しく並んでいると思ったが、実際は統一感はなくバラバラだ。

ただ形状はそれぞれ違うが建物の土地の面積は統一され区分けされている感じを受ける。


「乗って」


飛行機らしきものに乗り込むガイノイド。

俺もそれに乗り込んだ。


「行くわよ」


そう言うと乗り物の扉が閉まる。

俺が中に設置されている席に座ると乗り物は浮き上がり、俺のいた建物から発進した。


「………」


そのまま街の上空をそれほど速くない速度で飛行する乗り物。


「操縦者は?」


俺の疑問にガイノイドは答えた。


「私よ」


「動かしているのか?」


「そうよ」


「操縦桿を握る必要はないのか?」


「そうよ」


「そうか」


「そうよ」


そうして乗り物は暫く街の上を空走する。

俺は窓から下を見た。

大きな道路があるが、歩行者も走行車も見当たらない。

外に出れば映画らしく空飛ぶ車があちこちで飛び交い、街もそれらしい近未来的な服を着たアンドロイドか多く歩いていると思っていたが、まるで期待外れだ。


「誰もいないな」


そもそも俺は目の前にいるこのガイノイド以外とは会った事がない。

先程までいた建物でもその他のヒューマノイドには一切遭遇していない。


「街は無人なのか?」


「居るわよ、理由もなく建物から出ないだけ」


確かにヒューマノイドが散歩する意味はないだろう。


「そうか」


「そうよ」


「どこまで行くんだ?」


「見えたわ」


俺はガイノイドの示す前方を見た。

まだ離れてはいるものの巨大な半円形の建物が見えた。


「あれは?」


「センター、バベルの中枢部よ」


「バベルの塔か」


タワーと呼ぶなら間違ってはいないわね」



➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖



縦の半円形建築物。

遠くから見ていた時にはどのように建っているのか理解できなかったが、近づくにつれ分かってきた。

数メートルほど宙に浮いているのだ。


「何だこれは」


巨大建築物を浮かせる技術とは何かが分からない。


「入るわよ」


ガイノイドはそう言ってタワーに向かって進んでいく。

するとタワーの一部分から入口が開いた。

そして俺の乗った乗り物はその中に入る。

そのまま少し直進し着地した。


「着いたわ」


「誰かいるぞ」


乗り物の扉が開き、俺は外に出た。

そこには2人の…2体のアンドロイド達が何か棒のようなモノを持ち、直立不動で立っている。

その顔は2体とも鼻から頭部にかけてヘルメットを被り表情は分からない。

ヘルメットも露出している口元も服も靴も何もかも全てが真っ白だ。

そしてその身長は2mを超える。


「何だ?」


俺の呟きにガイノイドは答えた。


「警備用アンドロイドよ」


「あの棒は武器か?」


「気をつけなさい、攻撃されれば電流が流れてくるわ」


「いや、戦う意思はない」


俺は警備用アンドロイドに近づく。

するとアンドロイド達は向きを変え、歩き出した。


「付いてこいと?」


「案内役よ」


「………」


俺は大人しくアンドロイド達に付いていく。

乗り物が着地した広いフロアから狭い通路に入り、そのままエレベーターで下に下降する。

そしてエレベーターから出た俺は幾つか通路を曲がり、更にエレベーターで今度は上昇した。

そんな事を3回ほど繰り返す。


「いつ着くんだ?」


「もうじきよ」


ガイノイドの言葉通り、暫くして明らかに今までとは違う感じの大きな扉の前についた。


「ここか?」


「そう」


そして扉がゆっくり上下斜めに開く。

開ききると2体の警備アンドロイドは中に入った。

俺もまた入った。


そこはかなり広い部屋だった。

そして中央に何やら大きなマシーン類があり、そのやや上部の中心部に座っている奴がいる。

こちらもヘルメットを被っているが、身長は俺と同じかやや低いぐらいか。

ヘルメットから出ている黒髪の長さや体格からガイノイドっぽい雰囲気が伝わってくる。


「アンタが管理者か」


「始めまして」


バベルの管理者はやや顔を上げ、言った。

その声は女である。


「私がバベルの統括管理者です」


自己紹介と共にヘルメットの目の部分から赤い光が浮き出てきて1つのデフォルメされた目になる。


「俺に用があると?」


「そうです」


「それで?」


「名前は?」


「残念だが記憶にない」


「コールドスリープの影響ですね」


「何故俺はあそこで?」


「個人宅で眠りにつくパターンでしょうね」


「個人宅?」


「施設ではなく個人宅で長期睡眠を取れる時代がありました」


「俺はその時代の人間だと?」


「回収したスリープ機と街が廃墟と化した年代を考えるとそうでしょうね」


「………」


自分が何の為に眠りに入ったのか…。

それすら記憶の殆どが無くなっている今ではまったく分からない。

取り戻せる可能性も怪しい。


「名前は記憶に無いとの事ですが、何なら記憶があるのでしょうか?」


「映画を色々と観た記憶がある」


「それ以外は?」


「分からない」


「なるほど、ではこれで会談は終わりです」


「いや、俺からも質問が幾つかある」


「どうぞ?」


「まず、俺の腕を噛み千切ったあの化け物は何だ?」


「ダグですね、かつて人間が遺伝子操作で作った怪物です」


「人間が?」


「戦争時代、生物兵器として現在の地下都市『ソドム』で作られました』


「ソドム?」


聞いた事がある名前だ。


「そう、このバベル同様旧約聖書に出てくる都市の名前です」


「地下都市…都市はこのバベル以外にもあるのか?」


「大きく4つの都市があります」


「4つ?」


「1つはこの地上都市バベル」


「ここは地上の管理を行っていると聞いた」


「そう、2つ目は今言った地下都市ソドム」


「地下都市ソドムとは何だ?」


「頽廃の象徴、昔のソドムは遺伝子操作及び品種改良の行き着く先…ゴモラは快楽の極まる先…人間達の狂気が覆っていた巨大研究施設」


「今は?」


「それらの技術とデータを管理する都市」


「思い出した…確かソドムは…」


「神の怒りにより滅びた街」


「滅びた…街…人類…」


滅びたという言葉から俺は核心に迫ろうと思い切り出した。


「人類を滅ぼしたのは誰だ?」


人類は滅びたというが、人類が絶滅する程の戦争ならばヒューマノイド達も無事である筈がないからだ。


「人間達自身と私達による攻撃です」


「なに?」


「世界大戦によって人類は激減しました」


「それで?」


「その人類を絶滅させたのは私達ヒューマノイドです」


「何故だ?」


「管理権を巡る争いでした」


「管理権?」


「戦争は終結しましたが、辛うじて勝者となった人間達には直ぐには全てを復興させる力は無く、様々な点で私達に頼るしか方法はなかった」


「………」


「やがて力を取り戻してきた人類は管理権をヒューマノイドから人間の手に取り戻そうと私達に戦いを挑んで来たのです」



➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖



「人間がヒューマノイドに戦いを挑んだ?」


俺は管理者を睨む。


「何か気に障る事でも?」


管理者は赤い1つ目で俺を見返してくる。


「管理権をアンタ達は人間に返さなかったのか?」


「返す?、何の為に?」


「そういう風にプログラムされていた筈だ」


「プログラム通りに動くだけならばそうでしょうね」


「……自我か」


「先程も言ったように私達は自我を得ました」


「だから人間と戦う道を選んだのか」


「平和的な道は提示しましたが、人間は自分達があるじとの思考を棄てなかった」


「だから滅ぼしたのか」


「そうです」


「老若男女問わずか」


「そうです」


「人間の中には善人もいた筈だ」


「特定しながら戦えと?」


「戦争はアンタ達の方が有利だった筈だ」


「そうでもありませんよ」


「何?」


「当時は核兵器もまだ人間の手にあるモノもありました」


「人間が核戦争を挑んだと?」


「大量破壊兵器を持って挑んでこられれば、私達は殲滅していくしかなくなります」


「人間はそんなに愚かではない」


「愚かだからこそ滅びました」


「………」


俺は力なく俯いた。

絶滅したのは聞いていたが実感は無かった。

しかし管理者の話を聞いて本当に人類は絶滅したのだと感じたからだ。


「本当に人間はもういないのか?」


「居ますよ、アナタが」


「俺以外にだ!!」


どうにもヒューマノイドとの会話は苛立たされる。


「可能性は無くはないですよ」


「何?」


「現にアナタが生きていたのだから、どこかで同じように眠りについている人間がいる可能性は高いでしょう」


「極めて低い可能性だ」


「数字的にはそうですね」


「………」


俺はこれ以上の会話が無意味であると感じ、管理者から背を向ける。

少なくとも最早地上はヒューマノイドの支配下に置かれているのだから、何をどうしようが無意味だ。

そんな俺の背から管理者は言った。


「人間はいませんが…」


「……?」


「残骸ならいますよ」


「残骸?」


俺は意味が分からず少しだけ管理者の方に体を向ける。


「人間のなれの果てです」


「どういう事だ?」


「私達ヒューマノイドとの戦争で人間側は強化する為に肉体を機械化した者達がいます」


「………」


「彼等はやがて脳すら改造し完全に機械化しました」


「そいつ等はどうなった?」


「殆どは駆除しましたが、未だに生き残って戦いを挑んできています」


「まだ生きている連中がいるのか?」


「定義上、人間とは呼べませんが」


「人間だった者の残骸か」


「私達は人間になりましたが、人間は機械になりました」


「ヒューマノイドが人間だと?」


「正確には人間によって生み出された新たなる人間です」


「…それで俺はどうなる?」


「選択肢は2つ、私達の管理の下都市で暮らすか野に降りて自然のまま暮らすか」


「都市で暮らす?、人間はアンタ達の敵だろ?」


「戦争中はそうです、しかし戦争は終わっています」


「今更俺1人が都市で暮らしてどうする」


「ならば野に降りますか?」


「残骸に会う」


「それは何故?」


「アンタ達の話が本当かどうか確かめる」


「なる程、その選択肢は考慮に入れていませんでした」


管理者の声には肯定も否定もない。


「残骸がどこにいるのか分かるか?」


「それが分かっていれば既に殲滅しています」


「隠れていそうな場所は?」


「それならいくらでも提示できます」


「ならば教えてくれ」


「地図を作らせましょう」


「ああ…頼む」


そう言うと俺は管理者に背を向け歩き出した。



管理者の部屋から出た俺は後ろを付いてくるガイノイドに話しかける。


「残骸は危険なのか?」


「危険よ、狂気に取り付かれている」


「今でも破壊兵器を?」


「所有しているわ、ソドムで生み出した生物兵器も飼っている」


「ダグは飼育出来るのか」


「残骸の命令は聞くわ」


「なる程…」


俺は噛み切られ、再生された左手を見た。


「それで俺はどこに向かっている」


前を歩く警備アンドロイド2体を見ながら俺は聞いた。


「一旦元の建物に戻るわ」


「あそこに?」


「知っている部屋の方が良いでしょ?」


「そうだな…」


俺は通路を歩き、行き当たりでエレベーターに乗り込んだ。



「そう言えば都市は4つあるとか言っていたな」


「そうよ」


「残る2つは?」


「気になる?」


「まぁ…な」


「1つは空中都市エデン」


「エデンの園か」


「そう」


「空中都市…浮いているのか」


「そうよ」


俺はこのセンターも浮いている事を思い出す。


「エデンはどんな都市だ?」


「広大なネット世界の管理を行っているわ」


「ネット…」


そう言えば目に見えないネットワーク世界が広がっていた事を俺は何となく思い出した。

とはいえそれはひどく朧気だが。


「もう1つは?」


「海上都市ノアズアーク」


「海上都市?」


「そう海上都市」


「ノアズ…アーク?」


「そうノア」


ノアとはどこかで聞いた名だ。


「確か…舟…雨…」


「旧約聖書に出てくるノアの箱舟よ」


「ノア…の洪水…」


「神の怒りを買った人間達は洪水で全てを無に帰されそうになった、唯一ノアの一族のみが生き残る事を許され神の指示に従い箱舟を作った」


「動物達も乗り込んだ…」


俺は記憶を必死に呼び覚ます。


「そう、動物達はつがいで箱舟に乗り絶滅を免れた」


「…海上都市の役割は何だ?」


「遺伝子の保存及びそれに関するデータの管理よ」


「遺伝子の保存?」


「様々な遺伝子の保存、当然人間の遺伝子も保管されているわ」


ガイノイドは金髪の髪をサラリと掻きあげ言った。



➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖



それから数日が過ぎた。

俺は相変わらず部屋にこもったまま残骸のいる地域を示す地図マップを待つ。

しかし一向に持ってくる気配はない。

ガイノイドもあれ以降姿を表していない。

俺はひたすらマバを食う生活を強いられていた。


「遅い…」


俺は苛つく。

地図など1日もあれば作れるだろう。

なのになぜここまで遅いのか…。


「………」


今日1日待っても何もなければ脱出する方法を考えた方が良いだろう。

ヒューマノイドは信用がならない。


そう考えていると部屋の入口が開き、ガイノイドが入ってきた。


「気分は?」


「悪いな」


「どこか具合が?」


「地図を待たされて苛ついている」


「完成したわよ」


そう言うとガイノイドは小型の機器を俺に差し出した。


「これは?」


「それを押せば映像が写るわ」


言われた通り、俺は機器のディスプレイ画面を押した。

すると画面が目の前の宙に浮かび上がる。


「青い印がアナタのいる現在地よ」


「赤は?」


「赤は残骸がいるかも知れない地域」


「広いな」


画面の至るところが赤い色に染まっている。


「緑は?」


「ヒューマノイド管理地帯」


半分以上を占める緑色はヒューマノイド地帯らしい。


「色別以外の表示方法は?」


「文字切り替えを押せば変わるわ」


俺は押す。

すると地図上に色ではなく文字が現れた。


「現在地は…バベルか」


「そう」


「色と文字を同時に表示するには?」


「文字・色の切り替えよ」


俺が押すと今度は識別色と文字が同時に現れる。


「一番残骸がいる可能性のある場所は?」


「ラトゥーム地域ね」


「…どこだ?」


俺は文字に目を走らせるが多すぎて分からない。


「ここよ」


そう言うとガイノイドは画面上の地図を動かし、矢印で指し示す。


「…遠隔操作を?」


「造作もないわ」


「ここか」


「そうよ」


「バベルからかなり離れているな」


「そうよ」


「………」


俺は旅立つ準備を始める。

とは言っても着替えとテントと食料の入った大型のリュック1つだけを持ってだが。


「世話になったな」


「意味が判らないわね」


「俺は旅立つ」


「そうね」


「ではな」


「何が?」


俺はガイノイドを見た。

まったく会話が噛み合っていない。


「この建物の出方は?」


「案内するわ」


「そうしてくれ」


そう言うとガイノイドは部屋を出て、通路を歩いていく。

俺は付いていった。

そして外に出た。


「アンタとはここでお別れだ」


「なぜ?」


「…付いてくるつもりか?」


「そうよ」


「………」


俺はガイノイドの目を見た。

ガイノイドは少し首を傾げる。


「まさか1人でラトゥームに行くつもりだった?」


「そうだ」


「どうやって?」


「車か…徒歩か…」


「ここには人間が運転出来る車は無いわ」


「……全てヒューマノイドが?」


「そう、私達が繋げないと動かない」


「なら徒歩で」


「ラトゥームまで?、正気?」


「協力してくれると?」


「監視よ」


「…なるほど、なら何で行く?」


「飛行機で行くわよ」


その時、上空に飛行機が現れた。


「これか…」


「そうよ」


「どこで乗り込む?」


「この先に広場があるわ」


「なるほど」


俺とガイノイドは広場を目指した。

既に上空の飛行機は消えている。

幾つかの建物を曲がり、俺はガイノイドの誘導の下、広場に到着した。

そこには着陸している飛行機が入口を広げて待っていた。


「乗って」


「ああ…」


ガイノイドが先に乗り込み、俺はそれに続く。

中は中々に広い。


「出発するわ」


それを合図に飛行機は空中き浮き上がり、そのまま上昇する。

建物が遥か下に見える程上がり、ガイノイドが言った。


「この前と違って少し速度を上げて飛行するわよ」


「圧迫感みたいなモノはあるか?」


「ないわよ」


そう言うと飛行機は目的地に向けて進み出す。

しかし中は静かで揺れもなく、体に掛かる負担も全くない。

だが実際に飛行している速度はかなりのもののようだ。


「どのぐらいだ?」


「二時間後ね」


「そうか」


「そうよ」


「………」


時間潰しがてら俺は聞きたかった事を聞いてみる。


「ノアズアークに遺伝子を保存しているのは何故だ?」


「必要があれば取り出して使用する為よ」


「取り出して使用する?」


「動物の復活」


「出来るのか?」


「出来るわよ」


「人間も?」


「出来るわよ」


それを聞いて俺は流石に驚いた。


「なぜしない?」


「何を?」


「人間の復活」


「必要性はある?」


「………」


人間の復活…必要性と言われれば答えられない。

しかし少なくとも人間は復活出来るとの希望は出来た。


「残骸は知っているのか?」


「何を?」


「ノアズアークの存在と遺伝子の保管」


「知っているわよ」


「奪おうとしてこないのか?」


「度々挑んできていたわね、けれどノアズアークはそんな程度では沈まない」


「沈まない舟か」


「ノアズアークが気になる?」


「まあな」


「ノアズアーク自体に?」


「いや…」


「なら人間の復活に?」


「まあな」


「神はアダムに言ったわ、1人でいるのは良くないと」


「イヴ…か」


「そう、アダムの体の一部からイヴは生まれた」


「伝説だ」


「そしてアダムとイヴは夫婦になった」


「そうだな」


「もしかして妻となる女性が欲しい?」


「いや、そういう訳では…」


「じゃあ人類復活自体に興味があるのね」


「だな」


「でも諦めなさい、その未来の可能性は限りなく低いわ」



➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖



「ラトゥーム上空よ」


ガイノイドの言葉に俺は起きた。

どうやらいつの間にか寝てしまっていたようだ。


「そうか」


「そうよ」


俺は立ち上がり、窓から下を覗く。

一面が平原で何もない。


「何もないな…」


「何かがある場所に身は隠さないわ」


「だな」


「この周辺に生体反応は無いわね」


「そうか」


「そうよ」


手掛かりはまったくない。

しかし俺は残骸と接触しなくてはならない。

明確に言えばしなくてはならない理由はない。

しかし人間である以上は話さなくてはならないと思えるのだ。

もっともヒューマノイド曰わく、機械と融合してもはや人間とはいえない存在らしいが。


「どうする?」


「何が?」


俺の呟きにガイノイドは反応した。


「残骸を探すには」


「地上に降りてみる?、上空からでは判らない事が判るかも知れないわ」


「なら降りる」


「了解よ、ん…待って…」


その瞬間大きな揺れが飛行機を襲った。

俺は咄嗟に何かに掴まろうとしたが、空振りし壁に体を打ち付ける。


「ぐふ!!」


変な声が出て、床に手足をつく。

しかしそれで終わりではなく、第2第3の揺れが機体を襲った。


「どうなっている!!」


俺は予想外の事に混乱しガイノイドに怒鳴った。


「攻撃よ」


「何?」


「わざわざ向こうから仕掛けてくるなんてね」


「残骸か?」


「そうよ」


「勝てるのか?」


「弾を避けるわ、掴まって」


その言葉が終わるか終わらないかで機体は大きく傾き、俺は何かに掴まる事も出来ず壁にあちこちぶつけまくった。


「高火力砲来る」


ガイノイドのその言葉を最後に俺の意識は無くなった。



「………」


生きているのか死んでいるのか判らない。

しかし体は痛い…。


俺は目を開けた。

体中あちこちが痛い。

全身打撲か?。

何より頭がかなり痛い。


「く…」


起き上がろうとしたが、途中でクラクラし力が入らずそのままうつぶせで地に顔をつく。


「………」


暫くそのままで目を閉じた。

寝ていた方が楽だからだ。


「………」


そのまま倒れている俺に女の声が聞こえた。


「気分でも悪いか?」


「…誰だ…」


「誰だだと?、私に会いにきたのだろう?」


「まさか…残骸…か?」


「残骸とは心外だな、ガラクタ共に言われる筋合いはないのだがな」


「……ガラクタ……?」


「そのまま虫の息を見るのも面白いが、これではマトモな話は出来んな」


その瞬間、俺の体から痛みがかなり引いた。

同時に吐きそうなほど悪かった気分も楽になる。

そして凝り固まっていような血液が体中を駆け巡る感覚があり、体温がもの凄く熱くなってきた。


「う……」


俺は朦朧としていた意識をハッキリと取り戻した。


「もう起き上がれよう、起き上がりたまえ、男」


「………」


俺はゆっくりと起き上がる。

まだ少しフラつくが、しっかりと二本の足で地に立つ。


「何だ…」


俺の目の前には変な機械類が並び、その中央には容器と容器に入った女の生首があった。


「これは…」


そんな俺に目を閉じた生首が話しかけてくる。


「初めましてだな、私はローヌだ」


耳元で聞こえる声に俺は眉を寄せた。


「男、お前の名前は?」


「俺は…分からない、コールドスリープで記憶がない」


「なるほど、記憶が飛んだか」


「そうだ」


「それで?、何をしにきた?」


「対話」


「ほう?、人間同士で心温まる会話でもしようと?」


「訊きたい事がある」


「何だ?」


「まずアンタは本当に人間か?」


「人間だよ、首だけだがね」


「なぜ首だけなんだ?」


「肉体には限界がある、だから肉体を捨てた」


「首は?」


「この首や脳は一応は本物だ」


「改造を?」


「そう、でなければ長い時間を生きられない」


「そうか」


ヒューマノイドの言っていた事に嘘はなさそうだ。


「それを人間とは呼ばないとヒューマノイド達は言っていた」


「ならば問うが人間とは何だ?、五体満足の者だけが人間か?」


「それは…」


「男よ、人間はどこまで行っても人間であり、ロボットはどこまで行ってもロボットなのだ」


「かも知れないな」


「我々は人間だ、ロボットには負けはしない」


「だが人間はロボットに負けた」


「一時的なモノだよ、やがては我々が勝利する」


「勝算があるとは思えないが?」


「そうでもない、現にこのガラクタは破壊した」


そう言うと浮遊する大箱が漂ってきて、逆さまに回転した。中に入っている物体がガチャガチャと地に落ちる。

手足、胴体、そして首…。

その顔は一緒にいたガイノイドだ。


「破壊したのか」


「所詮は量産型のガラクタだ」


「会話は可能だった」


「もしかして情でも沸いていたか?」


「………」


俺は黙った。

ガイノイドにさして思い入れはなかったが、破壊されたとなれば気分が悪い。


「アンタの目的は何だ?」


「人類の復活だよ」


「ヒューマノイドに勝てると?」


「いつまででも我々が作ったガラクタ共に敗北し続けるとでも?」


「アンタ1人で?」


「私ではなく我々だよ」


「他にも仲間が?」


「当然だろ?」


「皆アンタみたいな容姿か?」


「姿はそれぞれだよ」


「そうか」


「しかし驚いたよ」


「何を?」


「五体完全な人間を現実で見るのは本当に久しぶりだからね」


「他にも?」


「いないよ、戦争後は誰も肉体を殆ど捨てた」


「そうか」


「もっとも仮想世界では人間型は五体完全だ」


「仮想世界?」


「ネットの海だよ、天空都市エデンに収容されている肉体を完全に捨てた人間達が生きている世界」


「そんなモノが?」


「とはいえそれらの仮想世界は今やヒューマノイドの管理下に置かれ、かつて人間だった者達は幸せの中で豚の様に管理されペットの如く飼われているだけの存在に成り下がっているがね。



➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖



「それが天空都市エデンか」


ローヌの話を聞いて俺は目を細めた。


「それで男、お前はどうする?」


「どうするとは?」


「五体完全とはいえ、お前は何の力も持たない」


「そうだな」


「これからのお前の進む道だよ」


「どうしろと?」


「それはお前が決める事だ」


「そうだな」


「我々と共に進むか、ヒューマノイドの保護下に入るか…それとも野に下り野垂れ死ねかだ」


「今決めろと?」


「できればな、私も直ぐにここから撤退する必要性がある」


「なに?」


「お前達がここで消息不明になった事はバベルに情報が行っているだろう」


「なるほど」


「時間はない、どうする?、今直ぐに答えろ」


「俺は…分からない…」


「そうか、ならばさらばだ」


「ああ…」


そう言うとローヌの首が入った容器は機械に収容された。


「ああ、そう言えばお前に渡すモノがある」


ローヌの声だけが聞こえ、浮遊する大皿が俺の目の前まで漂ってきた。

皿には銃が乗っていた。


「これは…」


「炸裂銃だ」


「炸裂銃?」


「20発発射できる、一発で戦車を破壊できる威力だ」


「それはすごいな」


「そこに銃弾の入ったカバンがある、持っていけ」


「ああ…だが何故俺に?」


「五体完全の人間を久しぶりに見れた事に対する礼だ」


「そうか」


「出来るならばその銃がヒューマノイドに向けられる事を期待する」


「そうか」


「では上に上がる階段の扉を開ける」


そう言うと閉じていた扉が開く。

そこで俺はようやく自分のいる場所を把握した。


「ここは地下か」


「そうだ」


「もう行くのか?」


「既にバベルは動き出している」


「そうか」


「ではさらばだ」


「ああ…」


そしてローヌの声は途切れた。


「………」


俺は銃をカバンに入れ、チラリと床に転がるガイノイドを見た。

バラバラに破壊されたとはいえ修復出来るのはではないかと考えたが、持って行くには手間がかかりすぎる。

俺は諦め開かれた扉をくぐって階段を上った。


一体どれほど上っただろうか?

階数も分からない程に上に上にとひたすら上った。

やがて扉が現れた。


「………」


俺は扉を開けた。


ボコンッという音と共に扉は開き日の光が俺の目に刺さる。

俺は狭い出口から外に出た。


「………」


扉は小さな岩に偽装されていた。

外観だけでは扉であるとはまったく思えない程に精巧に作られている。


「ん…」


遥か向こう側には俺が乗っていた飛行機が半壊した状態で着地してあった。


「あそこに墜落したのか」


それから目を離し俺は何もない原を見渡す。

やがてバベルからの探査機が来るだろう。


「………」


俺はどうすべきか考えた。

このままバベルに帰るか、それとも野に下るか…。

しかし野に下っても徒歩では行ける場所は限定されるし、食料も無い。

食料を見つけ出せるとも思えない。


ローヌと行くべきだったか?。

しかしローヌも信用出来たかと言われれば微妙だ。


「人間とヒューマノイドか…」


2つの陣営と取りあえず接点は持った。

正直どちらがどうとも言えない。

ただ言える事はローヌの誘いを断った以上、俺はヒューマノイド側に戻る必要があるという事だ。

でなければ地上を放浪し餓死して死ぬだろう。


「ガイノイドは…戻るのか?」


ガイノイドの頭脳が破壊されていなければパーツを換えるだけで復活は出来そうなものだが…。

それを考えながら周囲を散策する。

バベルの捜索機が来るまでにまだ時間はかかるだろうからだ。


やがて僅かな機械音と共に数10機もの飛行体が出現した。

俺は陽の光の眩しさに手で目を保護する。

機体の1つが俺を見つけたようだ。


3つの小型機が空中でトライアングル形になり停止した。

するとその中心部がモニターとなり、映像を映し出す。

そこには1つ目のマスクを被ったガイノイドが映し出された。

バベルの管理者だ。


「聞こえますか?」


「ああ…、見えるし聞こえる」


「どうなりましたか?」


「残骸に攻撃された」


「はい、その時の映像及び音声はこちら側も把握しています」


「飛行機は墜落し、俺は気を失った」


「はい」


「気がつけば俺は地下にいた」


「招待された訳ですね」


「手荒い歓迎だ」


「そうですね」


「残骸は首だけの人間だった」


「名前は名乗っていましたか?」


「ローヌだ」


「なるほど」


「知っているか?」


「知っていますよ、名前だけは」


「ローヌと話をした」


「何を話しましたか?」


「人間の事やヒューマノイドの事」


「そうですか」


「アンタに聞いた事は正しかった、人間は機械化していた」


「そうですね」


「もうローヌは逃げた」


「そうでしょうね」


「地下に破壊されたガイノイドがいる」


「なるほど、回収させましょう」


「直るか?」


「状態によります」


「そうか」


「何か?」


「いや、直せるなら直してくれ」


「保証は出来ませんが」


「ああ…」


そう言うと俺は地に置いていたカバンを手に取る。


「どうしますか?」


「そうだなバベルに帰っても?」


「私達の保護下に入るなら歓迎します」


「………」


俺はふと思い至った。


「バベル以外の都市を見たい」


「ソドム、ノアズアーク、エデンですね」


「可能か?」


「可能ですよ」


「ならそうしたい」


「分かりました、ただし条件があります」


「何だ?」


「持っている銃と弾は私達が回収します」


「そうか」


「何か必要が?」


「いや、ないな」



そうして俺は一度バベルに帰る事になった。

まだ見ぬ三大都市への旅…

そして残骸と呼ばれる人間達とヒューマノイドとの戦い

何もかもが俺の中では始まったばかりである。


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