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赤染衛門語る
赤染衛門も日記を書くの?
「いいえ、私は、日記ではなく歴史の本を書こうと思っているのですよ。」
えっ、漢文を書くの?
「いいえ、仮名文字での歴史の本です。」
それは、すごい。赤染衛門は、和歌の名手であるが、歴史にも明るく、いろいろと昔のことを知っている。もとは、母源倫子に仕えていたのだが、今は私の女房として、活躍している。歴史の本を書くのは、もっと後のことになるだろう。
「どの帝の御代から書かれるのですか。」籐の式部が尋ねる。
「宇多天皇の御代から書きたいと思っております。」
ええと、宇多天皇は、源氏姓を賜っていたのに、皇子に戻られて帝になられた方ね。第一皇子の醍醐天皇に譲位されたはず。一条帝のひいひいおじい様ね。赤染衛門が生まれる70年位前に帝の位につかれたはずだけど。
赤染衛門は、妹の代作で、道長の長兄藤原道隆に贈った歌
やすらはで 寝なましものを さ夜ふけて かたぶくまでの 月を見しかな
が、百人一首に採られています。




