追記 大弐の三位
藤の式部の日記は、『紫式部日記』という名前でずいぶん後になってから読んだけど、本当に美しい文章で、二宮様のお誕生前後のことが書かれていて、ちょっと恥ずかしく思いながらしっかり読みました。
藤の式部には、娘がいて、この娘も、私の女房の一人でした。母に似て和歌の才があり、母に似ず明るい性格で、とても優秀な女房でしたので、後に私の孫(後の後冷泉天皇)の乳母めのとになります。大弐の三位ですが、ごぞんじでしょうか。
本名は藤原賢子で、始めは越後弁と呼ばれていましたが、十六歳の時に母は亡くなり、三十代半ばに太宰大弐正三位である高階成章と結婚したので、大弐の三位と呼ばれるようになりました。
歌会などにあまたの秀歌を残していますが、代表する歌となると、百人一首にも採られたこの歌になるでしょう。
「有馬山 猪名いなの笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする」
(あなたを忘れているかですって?有馬山に吹く風に、笹原も、そよそよ、そうよ、そうよ、忘れるはずないでしょう、と言っていますわ。あなたはなんてことをおっしゃるの?)
序詞、掛詞の使われたすてきな歌でしょう?
(次は、赤染衛門です。9月15日に再開します。)




