皇子様の誕生
「中宮様が、産屋である真っ白い御帳台にお移りになったことを覚えていらっしゃいますか?」
ええ。覚えています。
「そのころ、修験僧が中宮様におつきしている物の怪たちを寄坐の女に移し、調伏ちょうふくしようと大声で祈りの言葉を発しています。他にも、大勢の僧がこれまた大声で祈っています。陰陽師も、呼べる限り呼んでいるので、この者たちの祈る声も、僧たちに負けることはありません。それはそれは、頼りになる有様でした。」
道理で、ものすごくうるさかったわ。お父様(道長)は、金に糸目をつけなかったでしょうから、僧も、陰陽師も、大サービスね。
「御帳台の東側には、帝の女房たちがあつまっています。西の間には、寄坐と修験者が、南には僧たちが、北には参上した人々が四十人余りも控えておられます。もう一間には、中宮様のおつきの女房たちが控えていますが、この方々は心配のあまり、目が腫れるほど泣いていらっしゃいます。」
そういえば、泣き声も聞こえていたような気がするわ。
「やっと、皇子様がお生まれになったと聞き、道長様も、北の方様も、僧や、陰陽師、控えていた女房たちに、お布施や禄、唐衣にふち飾りなど、配られました。」




