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「え?」
「何があったんだ?」
「…嘘…でしょ?これは夢?」
「ディアンドロ様は?」
「そんな…これは一体…」
朝起きるとネメシア、サリオス、ドラニエ、オーロラ、ディアンドロは各々が目を覚ますと違和感に戸惑っていた。
この中で一番変化があったのはオーロラで彼女はネメシアの事がある程度薄れるとディアンドロと結婚していて起きたら彼が隣に居ないのと部屋が実家の部屋になっていたので困惑していた。
ディアンドロも一応はオーロラが居ないので不思議には思ったが自分のベッドに違和感を感じるくらいだった。
身支度を済ませながら当事者である彼等は今現在の自分の状況を確認すると青ざめた。
この時ネメシアの最後の無念と関わった当事者全員が何故か記憶を持ったまま時が巻き戻っていたのだがそれは自分だけか覚えているのだと思い込み誰にも話せずにいた。
そして戻った時期はネメシアとディアンドロが婚約する少し前だった。
この時のディアンドロはもしかしたら自分の両親も記憶を持っているのではと思ったがなんとなく違うような気がして慎重に様子をみる事にした。
そしてベルトリーノ侯爵夫妻に記憶がないとわかったのはネメシアとの婚約の話が上がった時だった。
この時も前の記憶と同様にネメシアはベルトリーノ侯爵家へと向かう事になり挨拶を済ませた後は庭に出たが二人は前回とは違う行動を取って様子をみようとしてお互いにあまり話す事をせずに様子見で終わった。
彼の中では前回の記憶があるだけに彼女をもっと大切にしたい気持ちはあったが最後の記憶が蘇りどう接していいのか分からずにいて戸惑っていた。
一方ネメシアはまた傷付きたくなくて彼との接触を極力減らす事にした。
彼等が気不味くなるとベルトリーノ侯爵夫妻は出来るだけ婚約者に寄り添うように注意して会う機会を多めにするので困った。
これには流石にネメシアも困り体調が悪いと断りを入れていて彼も安堵した。
しかし何度も断られると流石に重い病気ではと勘繰られて彼は両親から「見舞いに行け」と言われてしまい仕方なく彼女の家に行くことになった。
そして本当に具合が悪いのか顔色が悪そうで心配になったが邸を出る時に姉のオーロラに出会いネメシアは淡々と紹介してその後は少し申し訳なさそうにして部屋に戻り二人きりにしていて彼は婚約者なのに何も言わず二人にした事でネメシアにも記憶がありそうな気がした。
彼はネメシアに会いたくなると待ち合わせで会えないか試しに手紙で尋ねてみたが彼女からは忙しくて無理だと返事が来て以前の彼女とは明らかに違う行動に確信を持ったが直接尋ねる勇気が持てずそのままとなった。
そして姉のオーロラはやはり病弱で彼女の両親は前回と同様にネメシアには見向きもせずオーロラばかり構っていた。
ディアンドロはオーロラに出会ってからはネメシアの見舞いに行こうとすると何故か自然とオーロラの部屋に足が向かっていた。
たまに廊下でネメシアの後ろ姿を見て追い掛けようとするのだがやはり途中で辞めてオーロラの部屋に足が向いていて困惑していた。
「ディアンドロ。婚約者とは上手くいってるのかい」
突然両親に呼ばれて探るような視線を向けられた彼は戸惑いを見せた。
「手紙は出してますが最近は体調が悪いから…と返事が来まして見舞いに行こうとすると断られてます」
この際なので上手くいってない事を話すと彼等から困ったような視線を向けられた。
「婚約者なのだから大切にしないと後から後悔しても遅いぞ?」
それは結婚してからの事を指していたのだが彼にとっては前回の記憶があるのでネメシアが何をするかわからないと話しているようにも聞こえて戸惑った。
「わかりました」
「出来るだけ理解を深めなさいね」
これだけの話だが退室後に部屋に戻ると彼はとても疲れた顔でソファーに凭れて深く息を吐いた。
(今回は出来るだけあんな悲しい結末を見たくない…だが彼女は全てを拒絶してる上に顔合わせの時からずっと私を見てなかった…どうすればいいんだ…あの傷は癒えないのだろうか)
彼は悩みながらもネメシアに外出の誘いをしてみたが悉く断られてしまい彼女の家に向かっても彼女に会えないのに何故か姉とは会えた。
使用人にも彼女の事を尋ねたが一瞬だけ冷ややかな目を向けられて「今は横になられてます」とだけ言われて一目見ようと思ったがやはり足は彼女の元へ向かなかった。
そして彼はいつの間にかヴァイゼルフ家から足が遠退いていて社交の時だけネメシアに会えるのでその時を大切にしようとした。
しかし彼女は全く彼を見ることはなかった。
そしてまた月日は巡り結婚式の時を迎えると彼は緊張した。
「ネメシア…」
「はい、何でしょう」
「今日は一緒にいよう」
「……はい」
彼はこの時に彼女が嫌がっても一人にさせない事にした。
そして結婚式が終わり彼女が魔力を暴走させないためにつきっきりになる事にした。
「何を…」
「どうせこれから初夜だし、裸になるなら問題ないでしょ?」
彼女はこの時に初めて困惑を露わにした。
彼の作戦は単純で風呂も一緒に入る事にして彼女が湯浴みをしている時に突入していた。
「…困ります」
「…私が洗ってあげるよ」
「結構です」
またいつもの様に表情が隠れたので手強さを感じた。
「君達は下がっていいよ」
「私も出ます」
「君は駄目だ」
「…」
浴室を出ようとした彼女を引き止めて二人きりになるとそのまま無言の時間が過ぎた。
「何を考えてるのでしょうか」
「何も。ただ君の家ではどうしても抗えないものがあったからこうしてみた」
「…それはどういう?」
「まぁその前に君の手触りを確認したかったのもあるんだ。君は痩せ過ぎだな…これからは私が食べさせて私好みの体型にしないと…」
「放っておいて下さい!」
彼は彼女の体を洗いながら彼女にとって迷惑な事を口にして困惑させていた。
「それは無理な話だよ。折角だし可愛い妻を自分好みに育てるのもありだと思うんだ」
「…思いませんね」
「強情だね。今日は寝かすつもりはないから楽しもうね」
「寝ますよ」
「寝かさない。寝たら起こすからね」
そして彼は少しいやらしい手付き撫で始めて彼女の様子を見る事にしたがあまり反応がなくてつい本気になっていった。
すると少しずつ体が反応を始めて彼はニヤリと笑った。
「いい加減にして下さい。そろそろ出ますからね」
「まだだよ。ここで準備をしてからベッドに行くとしよう」
「…いえ、そろそろ気分が…」
なにやら本当に様子が可笑しくなったので彼女を見ると顔が異様に火照っていてグッタリしていたので彼は慌てて浴室を出て体を拭きながら飲み物を頼むとメイドに困った視線を向けられたので思わず視線を逸らした。
「ごめん…やりすぎたようだ。今日はこれ以上をしないからゆっくりと休もう」
「…」
ホッとしたような表情で頷くと意識を手放した彼女の様子を見ながら今回はなんとかあの悲しい状況を招かなくて済んだことに安堵して彼も隣で目を閉じた。
その日は彼は夢を見た。
それはネメシアの夢でその内容で彼女が何を見て何を諦めていたのかを知ると夢の中で涙が溢れていたいた。
「え?ネメシア?」
夢から覚めて朝になると隣にいた筈の彼女は何処にも居なかった。
「まさか!」
ディアンドロは慌てて彼女の衣装部屋に向かうとまた着けていたドレスだけが消えていた。
そして彼女の実家に向かい彼女の部屋へと足を運ぶと前回と同様に彼女の私物は全て消えていて今回は前回の様な衝撃は与えなかったが静かに消えたのだと理解した。
(そんな…君とはこれからだったのに…)
「ディアンドロ殿?」
「どうやらネメシアはこの世から消えたようです…」
彼は夢の話をすると不思議な事に彼女の両親も同じ夢を見ていた。
そして暫くしてから死亡届が出された後に彼はオーロラと結婚することになった。
そして彼女は幸せそうに暮らし暫くするとまたもや前触れなく戻っていた。
最後まで読んで下さって有難う御座います。
初めの頃は操作ミスで書いたものが全て消えて泣けたので毎回書きながらこれで投稿されてるのだろうか?と半信半疑になりながら書いてます。
メンタルが豆腐並みなので感想等は優しくして頂けると有難いです。宜しくお願いします。