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「ところで回収された今の彼女はどうなっているんだ?元気なのか?」



 ディアンドロはショックを隠しきれないオーロラを無視してこの際だからと聞きたい事は出来るだけ全て尋ねる事にした。



『彼女はあの後にやっと全てから解放されて抑え続けていた溢れ出る魔力を解放すると人では無い高い位置にある神々しい存在へと変化を遂げて今は穏やかに過ごしてるよ。

 本来の君の役割はあの子の伴侶となりあの子と一緒にそこの女性を支える役目だったけど今はこの役割は外れてるんだ。

 これにより君達の罪は自分で償わなければならなくなった。

 私はこれを話すために君達と言うよりそこの女性に接触したんだ。

 この会話はあの子の両親にも聞かれていて同罪として扱われる皆に聞こえてるんだよ。

 あの子の願いは既に叶い、もう反論は許されないから君達は大人しく罪を償うようにね』


「わかった。こんな形でも大好きなネムとの繋がりがあるなら受け入れるよ」


『…君は本当に気持ちが悪いな…』



 説明のような話の時は厳しい声で告げられていたがディアンドロに対してだけはとても嫌そうに話していた。

 彼は自分の罪だと告げられて逃げずに真摯に受け止めていたが、隣で話を聞いていたオーロラは嫌だと首を振っていた。



「ねぇ、先程から気持ち悪いって…本当に失礼だよ?」



 話を理解して罪は受け入れても先程から聞き捨てならない感想に彼は困った顔をしていた。



『えー…いやぁ、なんかなぁ…しつこい男は嫌われるんじゃないかなぁ?』


「そうか?俺はネメシアが好きだから入浴も一緒にしたかったのに何故か照れられて逃げられたんだよなぁ…だからせめてもう一度だけやり直せるなら役目とか抜きで今度こそ彼女とベッタリしてたいんだよなぁ」


『…それは私が嫌!気持ち悪いです…』



 今度は懐かしい声で彼の目からは涙が溢れていた。



「ネム!好きだ。夢の中だけでも一緒になりたいから今夜は夢に出てきてくれ」


『…嫌です!なんか怖いし…』



 とんでもない申し出でも今の彼女なら出来なくはないがその勢いにかなり引いた。



「怖くないよ、優しくするから」


『…いや、君は私から見ても十分怖いぞ?少しは落ち着いてみたらどうかな?』


「俺はただ好きな人と一緒にいたいだけだが君はそれを邪魔をするのか。

 ネム頼む!一度だけでいいから俺と最後の時まで一緒になってくれ。俺は今まで結婚初夜に逃げられてばかりで不完全燃焼なんだ。君との未来を一度でいいから歩ませて欲しいんだ」


『それは無理だよ。この子は既に君達と縁を切ってるからね』


「それなら俺が縁を結び直せばいいだけの話だからなぁ…そうだなぁ…時間的に君との初夜で良くないか?そこからずっと一緒だし…弱っててもいいぞ?俺が付きっきりで世話するし」


『…絶対に嫌です…』



 今の彼の勢いならなんとなく縁すらも結び直せそうで怖くなると何を言っても諦めない彼に精霊とネメシアは困惑していた。



『…君…なんだか本当に怖いよ?妙なところで何かを拗らせてるよね?』


「そうかな?普通だけど?」



 ディアンドロはネメシアの声だと目がギラギラしていたが精霊の声だと普通になっていた。



『やっと元の状態に戻ったか。暴走は辞めなよ?今のこの子は凄く君に引いてるよ』


「ネム、ほら俺はここだよ。俺の所に戻っておいで。君も聞いてたと思うけど先程の話では俺とネムは結ばれてそのままベッタリでイチャイチャする予定だったらしいよ」


『ベッタリでチャイチャは言ってないぞ!』


『…』



 本来の役割が彼の都合の良い具合に脳内変換されていて精霊とネメシアは恐怖した。



「でも一緒になれば自然となるよね?別に正直に話しても良くないか。俺はネメシアと一生ベッタリでイチャイチャな生活をしたい!」



 とても良い顔で言い切るので、精霊もこの暴走の止め方に困った。



『本当に怖いですよ…例え夢でも嫌です!』


「それじゃあ仕方ないから俺の妄想で…今の君なら覗けるんじゃない?」


『…!?』



 とても良い顔でまたもやとんでもないことを話し始めてネメシアはゾワッとして精霊は唖然としていた。



「まぁ以前の感覚を頑張って思い出せば…」


『ひぃっ!?』



 もう気持ち悪さしかなく鳥肌が立っていた。



『…そ、その前に先に片付けるとしよう。妙な話の流れになったから話を戻すよ。

 今の君の罪はあまりないけど隣にいる女性は先程話した通りで自分の背負わなければならないものを都合良く逃げて全てを妹に丸投げしたんだ。

 その影響は大きく、既に立場も含めて全てが逆転したから素直に受け入れなさい』



 その声は先程の引いていた声とは違い厳しいものへと変わっていて、オーロラは再び自分の話題になると先程まで嫉妬していた表情が消えて気不味そうにした。



「私と立場が入れ替わったなんて…それじゃあ入れ替わってなければ巻き戻りなんて起こらなかったと言う事かしら」


『そうだよ。逃げずに本来の役割を果たしていたら君が今の彼女の場所に来ていたけど、今の彼女は役割を与えられていた当時の君よりも尊い立場になってるね』


「そんな…」



 オーロラは話を聞きながらなんとなく今のネメシアはとても皆に愛される立場になっている気がして羨ましそうな顔をした。



『何を羨む事がある?これは君の決断した事だろう?ずっと話してるけど本来の君は病と戦い苦しみながらも人を慈しめば良かったものを…君の妹が全てを引き受ける形になったんだよ。

 これは世界から君に課せられた最終試験でもあってこれで認められると君も尊い存在となれていたんだけど…わかってなさそうだね。

 既に結果も出たし君は忘れてると思うから逆恨みしないように教えるけど、これは生まれる前に君が申し出た事なんだよ。

 君はその時に『どんな状況でも人々に慈悲を与える存在となってみせます』と宣誓して此方に産まれてきたんだ。

 自分で覚悟を決めて試練を厳しくしたまでは良かったけどその結果は欲に負けて自ら人並みにまで落ちたんだよ。

 その証拠に今の君が健康で妹の方は以前の君の様に虚弱体質になったんだけど、この事に何も疑問を持たないどころか満たされた環境の中にしか目を向けずに君の役割を背負った者に対して冷遇するとは…本当に愚かでならない。

 更に追い打ちを掛けるように君の傲慢な想いで巻き戻る事になると何も覚悟を示してない彼女が苦しむ事になってしまったのに世界を恨む事はせずに自分は不要だからと自らを消滅させて犠牲にすることを何度も選んだ。

 その時に無意識でも他の人間には被害が及ばないように配慮も見せていたんだけど…あの子が消えた時に君は何も思わなかったとは…甘い汁だけ吸おうとした自分を棚に上げてよく言えたものだね。本当に残念だよ』


「…」



 姿が見えてなくてもその声には怒りと蔑みが含まれているのがよくわかる程で『自ら望んだ事をせずに自らが傲慢となり招いた結果』と明確に告げられると何も言えなくなった。



『やっと理解したのかな。話は終わりだよ。君にはもう何があってもそれを覆す程の力はなくなったからこれも覚えておきなさいね。

 そして今後は君が選んだ彼と逃げずに一緒に過ごして気に食わない事でも受け入れて何故こうなったのかを考えた上で自分を成長させる事を覚えなさいね』


「…」



 全てを明かして完全に逃げ場がなくなったのを理解するとやっとオーロラも大人しくなったので精霊もこのまま立ち去ろうとした。



「終わったか?まだ俺は終わってないからな!絶対に夢の中に出てもらうから」


『え?まだ諦めてなかったの?』



 話が終わるのを黙って見守っていたディアンドロはすぐに口を開くと精霊は面倒臭そうにした。



「当たり前だ!俺はずっとネメシアが好きでそれを捻じ曲げられていたんだぞ!絶対に諦めたくないからこの機会だけは逃せない」


『…どうします?』


『なんか身の危険を感じずにはいられない…』


『ですよねぇ…』



 二人はヒソヒソと話し合っていたがディアンドロはそれも許せなくなっていた。



「ネム?浮気はダメだからね」


『…浮気?』


『浮気なのか…』



 あまりの狭量さに二人の声は呆れていた。



「ネム頼むよ。俺の想いは君だけだ。この際だから現実味のある妄想の中だけでもいいから出てきてくれないか」



 再び暴走を始めて発言も危うくなっていた。



『…君の暴走はとどまるところをしらないのかい?怖いからね?』


『本当に怖いから辞めてくれませんか?』


「君が俺の元に戻れば落ち着くかもしれないから試しに戻っておいで」


『…かもしれない…』



 断言しない辺りが尚更怪しくて怖かった。

 話は終わったので無視しても良さそうな気がしたが巻き戻りの影響なのか彼の持つ魔力も少しずつ強くなっていてそれが不穏なものへと変わりつつあったので無視が出来ない状況となっており二人は困惑しかなかった。



『仕方ないなぁ…これはどうにもならないよ』


『ええ…!?私が嫌なんだけど』



 精霊がやれやれと溜め息混じりに話すとネメシアは滅茶苦茶嫌そうにした。



『でもさぁ見てみなよ。君もわかるだろ?』


『…確かにこれは放置出来ないかも』



 精霊の話す通り確かに不穏な魔力が強くなってきていたが認めたくなかった。



『でしょう?』


『…でもなぁ……』


『これは仕方ないと思うけど?』


『…』



 話し合いが終わると二人はディアンドロにだけ見えるように姿を現した。

 そこにはずっと会いたかった懐かしい姿と人の形をした美しい人ならざる者が立っていてディアンドロは懐かしい姿に嬉しさで目が潤んでいた。

 実は精霊は話し合いの間はずっとこの部屋にいたのだが姿を消していたので見えてなかっただけだった。

 ネメシアは精霊が話しに向かうと言うことで遠い場所から見守っていたがディアンドロの様子を見て妙な展開で話を進められると困ると感じて慌てて精霊の側に来ていたのだった。

 彼はすぐに駆け寄るとネメシアを抱きしめながら涙を溢れさせていた。



「ずっと…ずっとこうしたかった…もう離したくない…」


「…彼だけ連れて行く?」


「それは嫌!…ってその前に何故抱きしめられるの?おかしいよね…」


「これだけの魔力なら仕方ないよね…」



 今のネメシアは肉体がなく純粋な魔力の塊のようなもので普通の人間には触れられない筈なのだが何故か彼が触れる事が出来たので困惑していると精霊の余計な一言にネメシアはとてつもなく嫌そうにした。



「俺は行くよ」


「ちょっと待って!今までティアンドロ様は私だけを見てくれたのに今更なにを…」



 オーロラがディアンドロに待ったを掛けようとすると彼は鋭く睨んだ。



「俺はもう君の支配を受けないなら自由なんだよね?それなら愛しい人を選ぶに決まってる。

 今まではネメシアが居なくなってから流れと義務だけで仕方なく君に付き合ってただけだ。

 それがないなら可愛い婚約者のネムを選ぶのは当然だろ?」


「そんな…」



 ネメシアを抱きしめながら鋭く話し掛けるとオーロラは青ざめていた。



「健康になっていく君を見た時に俺はずっとネムの見舞いに行きたかったし必要なら家で保護してずっと俺が彼女の世話をしたかったのに現実ではネムに会いに行くと必ず俺の意思とは逆の事をさせられたんだ。

 君にこの苦痛がわかるか?何も出来ない病人に優しくするのは当然なんだよ。

 しかも婚約者の身内なら余計に気を遣うものだし病で苦しんでるなら健康な者はそれを見守るしかないんだからそこを考えるのは施しを与える側の貴族としても当然の配慮となる。

 今まで俺はそう教わってきたからそうしてただけなんだ。

 それを勘違いして健康になっても君はそれを理解しなかった上に自分の辛い時の状況を忘れた様な態度ばかりでとても冷たい人だと思ったよ。だから余計に君が嫌いになっていたんだ」



 改めて彼の想いを確認するとネメシアは心から温かいものが込み上げていた。



「ネムは泣き顔も可愛いね。キスしていい?」


「ひっ!」


「うわぁ…君…絶対に気持ち悪いよ」



(私の感動を返して…)


 彼の一言で一気に涙が引っ込み精霊はそんなネメシアに同情した。



「可愛い、可愛いよ…今日から君と一緒にいたいからどうすれば逃げられなく出来る?」



 再び発言も危うくなってきた上に目もギラギラしていてネメシア達は逃げたくなったが彼の事をなんとかしないと余計に面倒な事になると察してどうにも逃げられず困った。

 その間も彼はネメシアを抱きしめてその感覚を覚える事にした。



「とても心地よい抱き心地だね…髪も手触りがいいし…ただもう少し肉付きが…まぁそこは俺がなんとかすれば…」



 変態的な事を口にしながら彼は折角なので触りまくってると彼女は恐怖で震えだした。



「あぁ可愛いねぇ、もっと震えてみてくれる?会えないなら全てを覚えて記録しないと…」


「…」



 思わず『何に?』と尋ねてみたかったが恐ろしすぎて口に出来なかった。



「き、君、辞めてあげて?怖がってるから」



 精霊は涙目のネメシアを慌てて助けようとしたが彼は否定するように首を振った。



「それは無理だな。君の話では俺はネムと一緒になってその後は俺が溺愛してベッタベタでイチャつきながらオーロラ嬢に見せびらかさないといけなかったんだろ?俺はそれを一度も出来てないんだ。消化不良だからここは開き直って怖がられてもいいからネムを溺愛したい」


「本当に恐ろしい妄想変換だな…私はそこまで言ってないからね。

 ちゃんと聞いてよ?本来の君達は一緒になってそこの女性が病弱だった当時に気遣いながら出来る範囲で支えるって話だからね」


「それなら俺の解釈で合ってるよ。今の俺なら余裕でオーロラ嬢の前だろうが見せつけるように口付けを交わせるからな」


「ひぃっ!?」



 完全に暴走を始めた彼はネメシアにとって迷惑な解釈を披露して完全に怖がらせていて身の危険を感じた彼女は青ざめて涙目になりながら必死に逃げようとしたが何故か更にディアンドロから逃げられなかった。



「凄い…欲望からなのかな?彼の魔力が凄い勢いで高まってる…」


「いやぁぁ……」



 精霊は唖然として見ながらネメシアの欲しくない情報を口にすると彼女から訴えるような目で見られて困った。



「ねぇ、本当に辞めてあげて?なんか弱い者イジメみたいになってるよ?」


「…それは嫌だ。でも俺は愛でたいだけで虐めではいないんだがなぁ…」


「知らない人が見たらそうなるよ?」


「そうかなぁ…仕方ないなぁ」



 仕方ないと口にしながら手放すことはせず撫で回すのを辞めてただ抱きしめるだけにした。

 彼としては先程に精霊から『二度と現れないだろう』と聞いていたのもありそれならこの機会を逃す事は出来ないと言う事で手放すと言う選択肢は皆無となっていた。



「は、離れて下さい」


「それは認めないよ」


「ねぇ、もう諦めて彼の要望を一度だけ叶えてあげれば?」


「え?でもそれだと…」



 また苦労するのが嫌で青ざめた。



「これでわかったけど彼は既に償いは終わってるみたいだね。だからそこの女性が他に行っても問題はないよ」


「それは本当か!それなら最後の巻き戻りを要求する!その時には俺と彼女のみ記憶を残して他は消してほしいんだ。

 出来ればネムの状態も最初の健康的な状態にしてほしい。あぁ…でも多少は病弱でも構わない…あ、そっちがいいかも!俺がずっとそばにいられるし」


「…」



 目を輝かせながら嬉々として話す彼の言葉にオーロラもこれはチャンスだと思い静かに見守る事にした。



「なるほど…今度は君達以外が何もわからない状態で見るのか…それも確かに見る必要はありそうだ。

 よし、では君の要望を通す。但し、なんとなく危険な気がしたからこの子は健康な状態とするからね。時期は君達が婚約する少し前でいいかい?」


「え?少し前?それは嫌だ。私とネムの顔合わせの当日にしてほしい」


「え?それは私が嫌…」



 ディアンドロは優しく微笑みながら彼女の口に自分の手を当てて最後まで言わせなかった。



「それは却下」


「…わ、わかった。ではそれで戻そう。これより最終審判とする。この声を聞きし者達よ、今一度のやり直しの中で己の罪を認識せよ」



 これ以上の暴走は辞めてほしいので精霊も手早く纏める事にした。

 ピィィィィーーーーー!

 小鳥の姿になった精霊は甲高い鳴き声を発した。



ここまで読んで下さった皆様有り難うございます。

オーロラについては予想通りではないでしょうか。

しかしディアンドロの暴走…この展開は予想外…と思って頂けたら嬉しいです。

これから最後の巻き戻り…彼等は彼等なりの幸せを見付けられるのか…もう少しお付き合い頂けると幸いです。

画面下部にあります☆の評価も宜しくお願いします。

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