10.束の間のレスト・イン・ピース
〈登場人物紹介〉
【ダークサイド】
・命水海
ダークサイドで親に虐げられていたが、双子の兄であるカイを殺し反ヒーロー組織のプレイグへと加入した。秀良高校一年生。
・十牙黒
親をヒーローに殺されプレイグを設立した。ダークサイドでパワーは「満月狼」。秀良高校一年生。
・麻布莉黒
黒の幼馴染で小柄な少年。人懐っこい。プレイグのメンバーで秀良高校一年生。諸羽との戦いにより負傷中。
・本田知花
プレイグの頭脳で本業は社畜エンジニア。二児の母でもある25歳。
【ヒーローサイド】
・吹雪澪
海の幼馴染で秀良高校一年生。飯島に洗脳されている。「氷」のパワーを持つ。
・毒島月夜
黒の幼馴染だったが突然黒のもとを去ってしまう。現在イグニスに所属する秀良高校一年生。
・諸羽つるぎ
友人の津田の殺害に疑いを持ち、イグニスに入って真相を探っていたが、飯島に勘づかれ洗脳される。秀良高校一年生。
第十話 束の間のレスト・イン・ピース
諸羽つるぎと戦ってから2週間がたった。
「…これでおさらいはできましたね。後は、何か報告事項はありますか?…そういえば、莉黒くんの容態は…」
2週間後に迫った夢川襲撃作戦の確認が一段落した後、知花さんが心配そうに聞いた。
「後一週間もすれば完治するらしい。意識も戻ってるし、心配いらない。」
黒が言い、皆がほっとしたようなため息をつく。
あれからしばらくして、莉黒はなんとか無事意識を取り戻した。
今はリハビリに専念していて、莉黒の頑張りにより2週間後にはもう復帰できるらしいということだ。
プレイグの皆が帰り、俺は部屋に戻ろうとする。
「…海、最近寝られてるか?」
後ろから声をかけられてドキッとしたが、その後恐る恐る振り向くと黒が立っていた。
俺の顔をじっと見つめる黒。
「…くまの酷いお前には言われたくない。」
こいつはくまがあってもイケメンなのがむかつく。
「お前も人のこと言ってられないぞ、鏡見てこい」
何かあったか、と黒が聞いた。
何か、か。
この数ヶ月、色々ありすぎた。
津田が死んだ、学園を追放されてプレイグに入った、イグニスができた、リグが刺された。
そして、俺は二人の人間の息の根を止めた。
…他に自分で何かを成した訳では無い。
「っ俺は、プレイグに必要か?」
恐る恐る黒に聞く。
声が震える感触が喉を伝って心臓に響く。
「俺がこのまま、ただの人殺しの役立たずで終わってしまうような気がしてならないんだ」
生まれたときからずっと思っていた。
親に、他人に愛されなかった。
双子の兄には自分にはないパワーがあった。
どれだけ頑張っても、その努力は報われなかった。
称賛は、栄光は、全て兄のものになった。
親に愛され、皆に愛されている兄を、殺した。
…俺は、必要のない人間なんだ。
劣等感だけ抱え込んで、それ以外に何も持たない。
ずっと思っていたこと。だからプレイグに勧誘してくれたのが少し嬉しいと思ったこともあった。
でも、そんな必要としてくれる場所でさえ役には立たなかった。
本当に、俺は必要かな。
暫く沈黙が流れる。
黒が口を開こうとして、やめる。
「ずっと思ってた、ずっとお前に聞きたかった。
どうしてお前はあの時、俺をここに誘ったんだ?」
そう言って俺は黒の目をすがるように見つめた。
…。
どうしてお前をプレイグに誘ったか、か。
建前としては、あのまま痣について知らないやつを野放しに学園においておくのは危険と判断したから。
でもなんとなく、小さい頃の俺を見ているような気がして、放っておけなかっただけな気もする。
誰かに縋るように、でも戻れないとわかっている。
初めて人を殺した時のあいつに、海はよく似ていた。
その日はひんやりと湿っている6月のグラオザームには珍しく蒸し暑くて、憂鬱な気分だったのを覚えている。
「…クロ、また今日も出かけるの?」
ティラノでメロンソーダをちびちびと飲みながら、ツキが心配そうな顔をして聞いてくる。
「ああ、今日は大事なミッションがあるんだ。…間宮さんに言われて…殺し屋の仕事を体験しなきゃいけないって。」
すると、ツキは途端に表情を変えて座っていたカウンターから勢いよく立ち上がった。
がしゃんとグラスの揺れる音がした。
「殺し屋!?つまり人を殺すってこと?…やめろ、クロ。それ以上進むとお前が戻れなくなるだけだ!!」
「俺は絶対に復讐するって決めたんだ。
…人の一人も殺せないやつに復讐なんてできるかよ!!」
ついカッとなってしまって、ツキを怒鳴ってしまった。ツキは悲しそうな顔をして「ごめん」とつぶやき、暫く考えた後「俺もついていく。」と言って上着を羽織った。
間宮さんから指定されたターゲットはスコラスティカの寮に住む有名な会社の社長の息子。偶然にもそいつは当時の俺等と同じ11歳だった。
「えーっと、部屋の合鍵はさっき盗んだし、準備はバッチリか。」
「クロ…」
「ツキ、なにか言った?」
「ううん、何でもない」
俺等らしくない沈黙の中建物へと入っていった。
中には計画通りターゲットが一人だけ。
「…何だ、お前ら、って、ナイフ、あ、あ…。
執事に言いつけるぞ!」
目を瞑る。
大丈夫、大丈夫。
お前のヒーローへの恨みは、覚悟はそんな小さなものではない、殺せ、殺すんだ。
ターゲットは無様に泣きじゃくる。
「お父様ぁ、お母様ぁ…。」
あ。
そうか。
同じ、なんだ。
俺がこいつを殺したら、俺はこいつの両親にとっての憎むべき対象なんだ。
…俺が両親を殺したヒーローを憎んできたように。
視界がだんだんと雫で霞む。
殺さないと、殺さないと…。
強くならなくちゃ、自分の幸せを守れない…。
でも、俺は仇と同じには…。
「言っただろ、クロ坊。
…弱いやつは、奪われるだけだと。」
「っま、みやさ、」
振り向くと間宮さんがドアの前に音もなく立っていた。
「そんなに殺せないなら…。
こうすればお前の手も動くだろうか?」
間宮さんはツキを抱えて首筋にナイフを当てる。
「あぁッ!!」
俺は必死に間宮さんに駆け寄ったが彼はナイフをさらにツキの首に近づける。
ツキの首から血が垂れる。
「ぅぐ…」
ツキが苦しそうに呻く。
「やめて、やめて、ねぇ、まみやさん…」
間宮さんは俺に無言で近づき、ターゲットの前に立たせた。
怯えて腰を抜かすターゲットの首を手刀で叩き気を失わせた後、俺の手を掴んで一気に振り下ろした。
…ナイフを握った両手を。
ぐじゃっという気味の悪い音が部屋の中に響く。
「あ、あぁ、うわぁ…」
俺はその場に崩れ落ちる。
手がフラフラして、落としたナイフを握ろうとするがうまく握れない。
眼の前にある肉の塊がかすかに痙攣した気がする。
「確実に死ぬまで刺すんだ、黒坊」
目をしっかり瞑った。
強さがなくちゃ、何も守れない。
やるんだ、殺るんだ。
勢いよく手を振り下ろそうとした俺の手にあったナイフを誰かが素早く奪い取った。
ぐしゃ、ぐじゃ、ぐじゃという音が立て続けに響く。俺は思わずその音の不気味さと血しぶきにたじろぐ。
目を閉じてなければいけないような気がして、暫く沈黙と暗闇に震えた。
次に目を開けたときには血まみれのツキがナイフを握って立っていた。
「何してるの、ツキ」
体に力が入らなくて、自分の口から出たとは思えないほど小さな声になってしまった。
ツキは何も答えない。
ツキは俺に背を向けぼんやりと死体を見つめている。
「ねぇツキ…!」
ハッと我に返ったように振り向いた。
暫く沈黙が流れた後。
何かを決意したようにツキは笑った。
「帰ろう、クロ」
気持ち悪いくらい紅に染まった手を差し伸べてくるツキの表情を見て俺はただ思った。
こんなの、ツキじゃない。
歪んだ笑顔に興奮しているかのように紅潮した頬。
滴り落ちる返り血にわずかににじむ涙は喜びとも絶望とも取れるものだった。
俺は怖くなって一歩後ずさったが、ツキは俺の手首を素早く捕まえて乱暴に握った。
「痛いよ、ツキ、ツキ…」
怪しげな紫色に染まった瞳。
きっと何かに取り憑かれているんだと、そう思うことにした。
どうやって帰ったのか全く覚えていないが、家についたときに片方の手首だけが真っ赤に染まっていたのはよく覚えている。
…ツキに掴まれた方の手が。
それから暫く夜にうなされた。
赤いものを見るたびに気分が悪くなって、包丁やハサミなどの刃物に触れられなくなった。
ツキはあの後まるまる1週間学校を休んだ。
あのときのツキはなにかの間違いだったら良いな、と軽く考えることにした。
その後俺は海と同じように痣が赤黒くなり暫く激痛に悶えることになったが、あのターゲットは俺がすでにとどめを刺していたのかツキには変化がなかった。津田の騒動のときに学園を追放されなかったからツキはあの時からずっと人殺しをしていないんだろう。
でも、それ以来ツキは学校帰りに何かをするようになった。
それが何かは分からない。ただ、誰もツキが何をしているかを知らなかった。俺がついていこうとしても、俺より足の早いツキに巻かれてしまった。
したがって、俺とツキは一緒に下校しなくなった。
ついに、俺は見てしまった。
小学校卒業まで後一ヶ月を切った頃。
学校からの帰り道を一つそれると出てくる裏路地。
投げ捨てられた黒いランドセル。
「これ、ツキのだ。」
そして、満月狼で感じた路地の奥の方からの異臭。
胸騒ぎがして急いで路地の奥の方へと走っていった。
…裏路地いっぱいに広がった赤色。
鉄の錆びついたような不気味な匂い。
親友の小さな手に首を掴まれたボロ切れのような赤い…猫?のような形をした何か。
足元にいくつも散らばる真っ赤な生き物と黒い何かの羽。
俺がその場から離れようと足を恐る恐る上げると、足元にあったバケツが倒れてガシャーンという大きな音を立ててしまった。
見られた、と思ってかハッとした顔をした後、ツキはどんどん俺へとナイフを持ったまま近づいてくる。
袋小路、俺には逃げ場がない。
そしてツキは素早く俺の肩に手を回して首筋にすっとナイフを当てた。
「ツキ、ツキ、ねぇ、つき…」
俺の声は親友には届かない。
ツキは何かをつぶやく。ごくりとつばを飲む音やどくどくと脈打つ音が耳元からはっきりと聞こえる。
その様子は、あのときのツキそっくりだった。
「ツキ!!!!」
ビクッとしてツキは手に持っていたナイフをあっけなく落とした。
その隙に俺はツキから距離を取り逃げ道を確保する。
「何、してるんだよ…殺しは、ダメだって…言ったのは、お前だろ…!!」
声が震える。親友の狂気が怖くて仕方ない。
ツキは怯えたような目でこちらを見る。
「あ、ぁあ、あ…」
ツキが正気に戻ったかのように膝から崩れ落ちた。
…足が動かない。
今度こそ殺されるかもしれないと思う自分とツキを信じたい自分が交錯する。
「クロ、ね、ねぇ…き、嫌いに、ならないで…」
ツキが正気なのかわからなくて、怖くて、首筋の切れ目を手でぎゅっと押さえる。
紅く染まった手が目の前にはあった。
…震える足でその場から逃げ出した。
その後、ツキは事件から1週間後に突然失踪してしまった。
裏紅に聞いても何も教えてくれなかった。ツキの母さんが死んだタイミングだったので、ツキは一人でスコラスティカの中学へと行ってしまうことは知っていたが、卒業もせずにいなくなるなんて。
そして今に至る。
俺等は何処で間違えてしまったのか。
今でも俺にはわからない。
「黒、黒!どうしたんだボーっとして。」
海に言われてハッと意識を戻す。
「あ、あぁ。…少し、昔のことを思い出していただけだ。
お前を勧誘したのは、何となくほっとけなかったからだよ。」
「何となく…」
あからさまにしょんぼりした顔をする海。
「俺が初めて人を殺した時のことを思い出したら心配になった、じゃ駄目か?…別にお前を戦闘要員で誘ったわけじゃないから、そんなに気負わなくてもいい。」
海は暫く考えた後、何かを決心したかのように頷いた。
「じゃあ、俺救護に回るよ。」
「救護…?」
思いもよらぬ返答に少し驚く。
「ああ、俺、一応救命措置とかちょっと詳しくて。…昔は医者を目指してた時期もあったんだけど、俺には無理だってわかったから、せめて使える知識くらいはって…。」
救護か。今、プレイグの設備として不足している部分で、グラオザームの医療設備も乏しいものだからいつもカルネージに頼りっぱなしだ。少しでも知識があるものがいるとありがたい。
「それなら、お前に任せる。…もう一度いうが、そんなに気負わなくていい。お前はまだここに来て数ヶ月だ。失敗だってある。」
そう言って海の頭をぽんと叩いて立ち去ろうとすると、突然後ろから上着の裾を思いっきり引っ張られた。
「!?」
「やっぱり浮気してたんだ!全く、前は月夜さんで次は海さん…こりてないじゃない!」
びっくりした、永愛か…。
「わたしの気配にも気づかないなんて、トーガったら…」
そう言って口をとがらせる永愛の頭をなでながら反論する。
「浮気じゃない。…というか、何時だと思ってるんだ?小学生はもう寝る時間だぞ。」
「毒島さん家のおチビたちと一緒にしないで。わたしもう11だから。」
「小学生には変わりないだろ。」
海は目を見開いて俺達の会話を聞いていたので、気まずいのかと思って謝った。
「悪い、うちの永愛が…」
海は暫く固まったままだったが、その後何かをぼそっと呟いた。
「前々から思ってたけどさ…
お前、ロリコンなのかよ」
…聞かなかったことにするか。
こつ、こつ、という足音が地下への階段に響く。
亜月さんに借りている物置部屋、現俺の部屋に戻ってきた。
黒、ロリコンなのはともかく、あんな顔、初めて見たな。
黒って笑うんだ。
表情筋がないやつなのかと思っていたけど、初めてあいつの人間らしさを見た気がする。
それにしても、救護班はやっぱりプレイグに足りない所だったか。
…俺はもともと、医者である澪の父親にあこがれて、医療検定を受けられなくてもちっぽけな小遣いで参考書を買って、ノートに穴があくまで勉強した。でも、どう頑張ってもあの家では俺は何も成果を残せないし、呪縛から逃れることなんてできない。結局10年近くあこがれ続けた道もあっさりあきらめてしまった。
医療検定の勉強をしていた時に学んだが、グラオザームにはまともな医療施設は少ない。そもそも何もないところにまとめてダークサイドを押し込んだような街だから、ここ30年くらいでようやく規制が解かれて外と行き来できるようになったくらいなのでまともに都市が機能していない部分も多い。
…これも何かの運命なのかな。
棚に置いた参考書を見る。
服や学校用品などの日用品以外にほとんど私物のない俺の宝物といったら、人生を共にした医療検定の本とノート、そして澪にもらった花と葉をあしらったかわいらしいネクタイピン。
誕生日プレゼントとしてもらった時のことを思い出す。
「ネクタイピン?俺、ネクタイなんて持ってないけど…。」
「来年私達中学生でしょ、…制服のネクタイに付けてよ」
「ありがとう、この花なんて名前?」
「…カミツレの葉っぱと、マーガレットの花。」
「へぇ、花と葉の種類は別なのか」
「…うん、花と葉っぱの組み合わせを選べるピンだったから。同じ白いキク科の花だし」
「そうなのか、ずっと大事にするね。ありがとう」
きっと頑張って小遣いを貯めたんだろう。いつもは好物のエクレアを作ってもらっていたから、形に残るものをもらったのはこれが最初で最後だった。
澪…大丈夫かな。
いつもはこの心配で終わるはず。
でも今日は、なんだか胸騒ぎがして、ネクタイピンを棚の上に置いて部屋の電気を消した。
そして次の日の朝、俺は朝早くに起きて着替え、亜月さんと朝食の準備をしていた。
こんこんこん。
ティラノのドアから優しげなノック音がした。
「今日来客の予定はないし、オープンは後1時間後何だけど…。」
亜月さんが不安そうに首を傾げる。
「俺見てきますよ、亜月さんはここで待ってて」
俺はエプロン姿のままドアへと向かっていった。
ドアの小窓を見て、俺は息を飲んだ。
昨夜の嫌な予感はピタリと的中した。
「澪…?」
澪が、そこに立っていた。
ドアを恐る恐る開け、いや、これはイグニスの罠かもしれない。
ドアノブを握る手が緊張で滑る。
「…亜月さん、安全だと分かるまで誰もドアに近づけないでください。」
「?…分かった。」
亜月さんが深刻そうな顔をして頷いた。
もう一度だけ周りを確認してから、ドアを開けた。
「澪っ、」
「い、イグニ…スっ、の、ために…」
イグニス…?やはり罠か…?
でも、いくら巧妙な変装といえども、10年間を彼女とその家族としか過ごしてこなかった俺に見破れないわけがない。
今俺の眼の前にいるのは、吹雪澪そのものだ。
澪がナイフを取り出し切っ先を俺に向ける。
振りかぶろうとして、突然澪の体がこわばったかと思うと、切っ先を自分の喉へと向け突き刺そうと力を込めた。
「う…み、ッ…」
パシッ。
澪の自我が見えた気がして、焦ってナイフを澪の手からはたき落とした。
澪は暫くその場に呆然と立ち尽くしていたがやがてふらっと倒れてしまった。
「みお!!!!!」
「澪、みお…」
澪が目をゆっくりと開けた。
「澪!!」
「よかった、目を覚ましたみたいだね」
亜月さんがほっと胸を撫で下ろした。
すると突然澪の眼が見開き、魔法陣のようなものが浮かんで、すっと消えていった。
「何だこれ…。」
澪の目からドロっとした銀の液体が流れ、溶けていった。
「ん…ここは…?」
「ここはカフェ・ティラノのバックヤードだよ。」
そういいながら亜月さんは澪の胸ポケットから小さな機械を取り出しプチっとつぶした。
盗聴器、もしくは小型カメラか。澪、いったい何があったんだ。
「…澪、少しずつで良いんだけど、何があったのか話してくれる?」
澪は視界がはっきりしてきたのか、ゆっくりとベッドに座り直した。
「えっとね、和音ちゃんが亡くなったあとくらいの頃に、飯島先輩に呼び出されて…天美さんが洗脳…かな。多分先輩のパワーだと思う。それで…私も…。」
澪が震える声でたどたどしく話す。
「そうか。ありがとう。
じゃあ、天美達イグニスは飯島に洗脳されているかもしれないと。」
そうなると、天美達の意思による襲撃じゃないということ。
つまり飯島は何かしらの目的によってイグニスを実質支配下においているということだ。
「飯島暁…一体何者なんだ…?」
でも一つ分かったことがある。
洗脳を解かせ敵の戦意を削ぐことが俺等の勝利への鍵となってくる。
つまり、決戦での最重要事項、それは。
「飯島暁を倒すことだ。」
第十一話に続く。