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みずき

作者: 星野☆明美

石つぶてが私に向かって飛んでくる!

「みずきちゃん、危ないから、建物の中に入ろう」

政明さんがかばってくれながら、私を促す。

私は悪くない。でも、状況が私を悪者にしていた。

小さな頃から、鳥が大好きだった。

空をちりのように舞う鳥たち。かなりの高度を飛んでいる。

私も、あの高さへ行きたい。飛んでみたい。

家では籠に手乗りインコを数匹飼っていた。一緒に遊んであげながら、人懐っこい鳥に癒された。

ある時、テレビで、鳥インフルエンザに罹患した鶏を大量に生き埋めにしている映像を見た。戦慄が走り、救ってあげたくて涙が出た。

一生懸命勉強して、研究者になった。

配属された製薬会社のラボで感染症の研究をした。

「人間のインフルエンザには抗生剤が開発されますよね?鳥インフルエンザには適用できないんですか?」

「鳥の場合はね、インフルエンザの型がころころ変わって、対応が間に合わないんだよ」

「えー」

それでも、いろんな型に対応できる万能の薬を開発すれば?

私は、仕事の合間に、自分の研究を続けた。

幸い、実験用の器具や薬品が入手できる立場だった。

「みずき先生。キラー細胞の研究者の野口です。よろしく」

新しく出会う人にも何かヒントをもらった。

薬品で対応できないものは体内にすでに存在する機能をコントロールすれば良い。

私は、ヒト用の画期的なプログラム制御法を開発して、一時期時の人となった。

共同研究していた政明さんと婚約して、万事が順調に思えた。

しかし。

私は、鳥を救いたかった。

鳥の体内の免疫機能を研究して、インフルエンザを克服できるように日夜努力した。

変異を続けた鳥インフルエンザは、強力な殺傷能力を持って、あろうことか、ヒト型インフルエンザに変異した。

特効薬が開発できないまま、私がやった研究が原因だということが知れ渡り、今日も遅い帰宅時間を待ち受けた人々に罵声と石を投げられた。

「あんたのせいで、うちの子が死んだ!」

私の背中にそんな声が投げつけられた。

「必ず、必ず特効薬を開発いたします!」

政明さんが何度も頭を下げている。

「もう、死んじまった者はかえらないのだぞ!」

「そーだ、そーだ!」

大量に埋め立てられる鶏たち。それを救いたかっただけなのに。

熱っぽくて、階段でうずくまった。

政明さんが、仮眠用のベッドへ運んでくれた。

「もしかして、私もd−356型インフルエンザに罹患した?」

「みずき、みずき」

政明さんが私の手を握りしめて涙をポロポロこぼした。

「今度生まれ変わっても、私は同じことをするだろう」

そう言って目をつむると、いつか見た空高く舞い上がる鳥たちの姿がまぶたにうつった。

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