第48話 流星拳
「やはり通れないか……」
ピラミッドの二十一階へと通じる階段にやって来た。
冒険者を襲う前に、念の為に階段を通れるか確認した。
結果は神の結界によって、階段には入れなかった。
これで冒険者を襲った場合、上の階にも下の階にも逃げられないのは分かった。
まあ、二十階を縄張りにしている雑魚冒険者に負ける心配はない。
俺を止める事が出来るのは、三十階以上を縄張りにしているCランク以上の冒険者パーティぐらいだ。
そいつらだけは襲わないようにすればいい。
「出てきたヤツらを狙うか」
二十一階の階段近くの通路に立つと、階段がある部屋から出てくる冒険者を待った。
二十階の階段から下りてくるヤツらは、欲しい戦利品を持ってない。
襲うなら、戦利品をたっぷりと持て、町に帰ろうとする冒険者からだ。
「やっと来たか……」
階段のある部屋から、三人組の冒険者が出てきた。第一目標は太陽石集めだ。
手当たり次第に太陽石を持ってない冒険者を襲って、警戒されたくはない。
通路を歩いてくる三人組に明るい感じの声で近づいた。
「やぁ、太陽石を持ってないかい? 一個五万ギルで買取りしているんだけど」
「買取り業者か? 悪いけど、俺達は持ってねぇ」
「そうかぁ……」
俺が仮面で顔を隠しているから少し警戒されている。
太陽石は持ってないそうだが、他の素材やアビリティ装備なら持っていそうだ。
このまま見逃すのは、ちょっと惜しい気がするが油断は禁物だ。
冒険者全員を敵に回すのはまだ早い。
「分かった、ありがとう。邪魔したね」
「なぁ、あんた。聞くなら階段にいる冒険者に聞いた方が良いぞ。そっちの方が確実に手に入る」
「あぁ、なるほど……」
お礼を言って見逃そうと思ったけど、これは駄目だ。
親切な男が言うように、階段を通る冒険者や休んでいる冒険者から聞いた方がいい。
だけど、それは階段に入れないから無理だ。
そして、こんな不自然な聞き込みを続けていたら、怪しまれるのは時間の問題だ。
だったら予定を変更させてもらうしかない。
この三人のうち二人を人質にして、一人を脅して階段に入ってもらう。
階段にいる冒険者から太陽石七個を集めてもらい、人質と交換する。
名案だな。出来ないと断ろうとした場合は、人質の数を増やせばいい。
「そこのお前。仲間二人の命が大切なら、五分以内に太陽石を七個持って来い」
「えっ? 何言ってんだ?」
三人の中で一番弱そうな冒険者を指差して命令した。
だが、俺の優しさが伝わらなかったらしい。
指を広げて手の平を男に向けると、四角い岩塊を男の腹に発射した。
ドフッ——
「ぐぼぉ‼︎」
「カルロ⁉︎ おい、何すんだよ!」
近距離から発射された岩塊を、男は避ける事が出来なかった。
岩塊が直撃すると崩れ落ちて、両膝を床に付いた。
二十階にいるヤツらだから警戒していたが、修行した俺の前では、やはり雑魚冒険者のようだ。
仲間二人が腹を押さえて苦しんでいる男を心配しているが、自分達の身を心配した方がいい。
「フッ。太陽石を持って来いと言ったんだ。出来なければ殺す。人質は一人で十分だ。お前達二人は早く階段を下りて、冒険者から集めて来い」
「巫山戯んな!」
「テメェー、ブチ殺す!」
「愚か者め」
予定変更して人質を一人にしてやった。なのに、馬鹿二人が向かってきた。
一人が右拳を振り上げて、仮面に殴り掛かろうとしている。もう一人は後ろから追撃するみたいだ。
もう一ヶ月前の俺とは、次元が違うという事を証明してやろう。
ドガッ、ドガッ、バキィ……
「オラッ! オラッ!」
「この野朗! 死ねヤァッ!」
二人の拳の連続攻撃を無抵抗で喰らい続ける。痛みは当然感じない。
全身を覆う岩鎧に殴られた衝撃でヒビ割れが走るが、すぐに魔力を流して修復する。
十五、十六発の殴る蹴るを受けると、二人は攻撃をやめた。
「ハァ、ハァ、この泥棒が! ギルドに突き出してやる!」
興奮した男の一人が言った。これで俺が降参して終わりだと思っているようだ。
雑魚のくせに勝ったつもりでいるらしい。俺は一度も倒れずに立ったまま殴られた。
どうやら、強くなり過ぎたみたいだ。
右手を岩で包み込んで、五倍近くに膨らんだ岩の手を作り出した。
「まさか、これで終わりか?」
『流星拳』——お前達の筋力で打つへなちょこパンチとは格が違う。
右拳を正面に構えると、右手に岩の手を付けたまま、男の腹に向けて発射した。
ドパァン——
「ぐべばぁ‼︎」
魔力で撃った高速パンチに反応できなかった男が、宙を舞って通路を真っ直ぐに飛んでいく。
八メートル越えの大ジャンプをした後に男は地面に激突した。
気絶したのか動けないようだ。太陽石のお使いは残りの二人に任せる事にしよう。
「お、お前……俺達にこんな事をして、冒険者を続けられると思うなよ!」
「言いたい事はそれだけか?」
「ゔっ、ぐっ、ごへぇぇ‼︎」
強気な態度で俺を指差して脅迫してきたので、左右の流星拳の乱撃を喰らわせてやった。
一応手加減してやったが、男は床に倒れて悶絶している。
俺の流れ星は俺の願いしか叶えない。自分の立場と実力が分かってない奴は困るものだ。
「さてと……」
「分かった! 分かったからやめてくれ!」
動けるのは残り一人だけだ。最初に腹に岩塊を発射した男を見た。
怯えた感じに分かっていると連呼するが、何も分かってない。
予定は変更になった。右手に付いている岩の手だけを男の顔面に発射した。
「がふっ‼︎」
「フッ。これでゴミ掃除は終わりだな」
飛ぶ流星拳に顔面を強打された男は、床に後頭部から崩れ落ちた。
さてと、アビリティ付きの防具を奪わせて貰おう。




