表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/172

第2話 自宅修行

 半年後……


「578、579、580——」


 ポタポタと身体から汗を流して、部屋の中で腕立て伏せを続ける。

 俺から独立した四人が、半年でDランクからBランクに昇格した。

 アイツらは上を目指してないと言っていたが、Eランクに落ちた俺の遥か上にいる。

 パーティランクは総合評価だから、腐ったリンゴが混じっていても俺よりも上だ。


「くっ、まだ筋力LV4のままか」


 腕が疲れたので一旦休憩した。

 アビリティ『調べる』で自分の『筋力』を調べたが、LV4のままだった。

 パーティメンバーの独立、あれから全てが上手くいかなくなった。


 何十人も冒険者を勧誘しているのに、変な噂の所為で誰も仲間にならない。

 仕方なく一人でダンジョンに入っては、魔石とモンスター素材を集める日々を送った。


 だが、それも一ヵ月で精神的に限界だった。

 同業者に後ろ指を指されて、笑い者にされながら同じダンジョンで働けない。

 早くアビリティを習得・強化して、別の町のダンジョンで再出発を目指すしかない。


 そもそも、この町の冒険者は俺の価値が分かってない。

 アレンを雇う前の時間には巻き戻せないが、俺一人でも先に進む事は出来る。

 数年後にAランクダンジョンで活躍する俺の噂を聞いて、後悔するがいい。


「カンナ、お姉ちゃんからあんたに手紙よ。鍵を開けなさい」

「チッ。部屋の前に置いておけよ。あとで見るから」


 修業中なのに扉がノックされたと思ったら、ババアが手紙を持ってきた。

 もちろん見るつもりはない。


 姉貴は珍しい魔法属性持ちで聖騎士の職業に就いている。

 その所為か町の冒険者達には聖女と呼ばれている。

 職業とは才能のようなもので、年齢や性格などの影響で勝手に決まってしまう。

 俺の職業は地属性魔法使いという平凡なもので、優秀な姉貴と子供の頃から比較されている。


「まったく、いつまで引きこもっているんだい? ジャンヌが仕事を紹介すると言った時に、意地を張らずに引き受ければ良かったんだよ。今からでも遅くないんだから、私が——」

「余計な事するなよ! 俺は引きこもりの屑じゃない。修業してんだよ!」


 すぐに余計な事をしようとするババアを怒鳴りつけた。

 俺はその辺の社会不適合者の落ちこぼれ連中とは違う。

 選ばれし存在だ。今は来るべき日の為に修業している。

 姉貴のお下がりの仕事なんか恥ずかしくて出来るか。


「はいはい、分かりました。それと明日からあんたの部屋に、教会から引き取った女の子に住んでもらうわよ。綺麗に片付けておきなさい」

「はぁ? 何言ってんだよ。俺はどこに寝ればいいんだよ」


 早く修業を再開したいのに、ババアが馬鹿みたいな事を言ってきた。

 二階の俺の部屋に住まわせなくても、二階には散らかっている姉貴の部屋がある。

 住まわせるなら、そこを片付けさせればいい。


「そんなの決まっているでしょ。あんたが一番暇なんだから、あんたの部屋で面倒見るんだよ」

「おいおい、勘弁してくれよ。また姉貴だろう? 猫じゃないんだから、人間拾ってくるなよ」

「猫じゃないから拾ってくるんだよ! 私もあんたみたいな駄目息子を育てているんだから、あんたも親の育てる苦労を知りな!」

「くっ!」


 何度も修業中だと言っているのに、まったく話が通じない。

 修業で忙しい俺に、ババアが小汚い子供の面倒を強引に押し付けてくる。


 そして、ババアにこんな馬鹿なお願いをするのは姉貴しかいない。

 拾ってきた子供で孤児院が満杯になったから、今度はこの家を満杯にするつもりだ。

 馬鹿姉だから可哀想可哀想と言って、捨てられた子供を見つけたら拾ってくる。


「おい、女の子なんだろ? 俺がエッチな事をするかもしれないぞ。そうなったら色々と困るんじゃないのか? そうなる前に姉貴の所に追い返せよな!」


 だが、ここは俺の聖域だ。何人たりとも俺の許可なしには立ち入れない。

 無理矢理に入ってくるなら、傷モノにして追い出してやる。


「あっははは! あんたにそんな度胸はないよ。まあ、その時は変態達が入る場所で、一生修業してもらうから大丈夫だよ。あんたが処分できて本当に助かるよ」

「このババアが!」


 怒りで血が沸騰しそうだ。母親が息子に言っていい台詞じゃない。

 俺はやる時は子供、大人関係なくやる男だ。臆病者ではない。

 彼女がいないのは、今は仕事が恋人だからだ。


「分かった。子育てするだけでいいんだろ? 良い子になるように育ててやるよ」

「あんたが思っているほど、子育ては甘いもんじゃないよ」

「ババアに出来る事なら誰でも出来るんだよ。子供なんて飯を食わせれば育つんだよ」


 だが、そっちがそのつもりならば俺にも考えがある。

 犯罪行為を使わずに、一日で家から追い出してやる。

 

「はぁ……家賃はタダにしてあげるけど、食費と日用品はあんたが用意するんだよ。出来ない時は、あんたには家から出ていってもらうよ。二人も面倒見れないからね」

「はいはい、分かった分かった。部屋の掃除の邪魔だからさっさと消えろ」

「あんたが消えた方が一番早く片付くよ。無理なら諦めて仕事するんだね」


 いちいち余計な事を言ってくるババアが、やっと部屋の前から立ち去った。

 この俺に子育てが甘くないとか言ってたけど、誰に言っているのか分かってない。

 俺は隊長として、ダンジョンで大人達を一人前の冒険者に育てていた。

 子供ぐらいは余裕で見れる。


「さてと、どんな風にイジメてやろうかな?」


 子供が来るのが今から楽しみだ。

 少し厳しくするだけで新米冒険者達のように、『辞めさせてください!』と泣いて頼み出す。

 一時間以内に追い出せば、二度と子供を住まわせようとは思わないだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ