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第150話 大漁祭り

「いいか。フェンリル、ウッドエルフ、デーモン、巨人は買取らない。食わないからな」

「はい、気をつけます」


 帰る前にザックスに注文を聞いてみた。赤魔石以外は買取らないそうだ。

 しかも、何でも食べないらしい。牛人間を食べるなら、氷狼も食べろよ。


「あの……ちょっといいですか? モンスター料理に挑戦したいんですけど、魔石の復元が出来ないんですよ。コツとかありませんか?」


 とりあえず、まだ帰るには早い。

 前に手に入れた水リスの魔石を見せて聞いてみた。

 最低でも情報の一つは手に入れて帰りたい。


「知らねぇよ。こんなの子供でも出来るだろ」


 岩箱の中から魔石を一個掴み取ると、簡単に分厚い牛肉ステーキに変えた。

 そして、そのステーキを右手に持ったまま炎で焼き始めた。

 夜食に食べるみたいだけど、美味しいのか分からない。


「ほら、食べろ。興味があるんだろ?」

「は、はい、いただきます……」


 俺が食べないといけないらしい。

 親指と人差し指で摘んで、牛人間ステーキを差し出してきた。

 それを食べたくないから、水リスの魔石を用意したのに最悪だ。


 だが、ここで男の豪快な手料理を断るわけにはいかない。

 男なら出された料理は、黙って食べないといけない時がある。

 両手で受け取ると豪快に齧り付いた。


「むぐっ、むぐっ……美味しいです」

「そうか? コイツは煮込み料理で柔らかくした方が美味いぞ。早めに食堂に届けないとな」


「へぇー、食堂もあるんですね?」という侮辱は、硬い肉と一緒に飲み込んだ。

 ゾンビステーキにはなりたくない。味付けもされてない肉本来の味を味わった。

 久し振りに食事した所為か胃が拒絶している。


「うっぷ……ご馳走様でした。とっても美味しかったです」

「そうか。それなら問題ないな」

「えっ?」


 一キロの不味い肉を食べさせられたけど、常識人だからキチンとお礼を言った。

 すると、ザックスが嫌な笑みを浮かべた。嫌な予感しかしない。


「復元を覚えたいなら、モンスターの肉を食べ続ければいい。手伝ってやるよ」

「いえ、小食なんでお腹一杯です」

「遠慮するなよ。詰め込んでやるよ」


 本当に習得できるなら我慢するけど、危険しか感じない。

 出来ればこの偽金で食堂の美味しい料理を食べたい。

 食堂の料理人が男でも、出来れば美味しい男の手料理が食べたい。


 ♢


「うっぷ……食後の運動も無理だな」


 胃が破裂する前に四枚目で逃げ出した。俺は小食だと言った。

 何枚食えば習得できるか知らないが、一日で習得できるとは思えない。


「くっ……帰る前にちょっと散歩するか」


 このまま家に帰るよりは地下一階を探索する。

 前回倒さなかった銀色の鳥や他のモンスター、町がないか調べる。

 もしかすると、友好的な魔人がいるかもしれない。敵の敵は味方だ。

 魔人の俺ならば、魔人側なら歓迎してくれる。


【名前:太刀鳥 種族:鳥系 体長:150センチ】——鋭い切れ味の白銀の翼を持つ鳥。


 小船を作ると、まずは上空を飛び回る銀色の鳥を目指した。

 両翼を広げた長さは三メートル近くある。意思がある刃が飛んでいるようだ。


「さて、料理するか」


 船首に立つと左腰の鞘から、Aランクの緋色の剣と紫炎の竜剣を抜いた。

 俺の仕事は剣をバツ印に構えるだけだ。向こうから切られに突っ込んでくる。


「ギャァー!」


 俺の予想通り、太刀鳥達が全方向から突っ込んできた。

 正面衝突で一羽ずつ倒す予定だったのに、困った鳥達だ。

 俺が素早く動いて、正面になるように構えないといけない。


 両足に岩板を作って、小船から空中に降りた。

 食後の運動にちょうどいい。どこからでもかかって来い。


「ハァッ、ヤァッ!」


 空中を動き回り、両手を振り回して、向かってくる太刀鳥を一刀両断していく。

 構えて待っている時間はなかった。回避と攻撃をひたすら繰り返す。

 Bランク地下47階の巨人石投げ祭りを思い出すが、五十羽程度なら行ける。


 パパッと倒して、肉に戻して、唐揚げにしてやる。

 俺が大食いしなくても、メルに毎日食べさせればいい。

 料理は昔から女の仕事だと決まっている。


 四分後……


「ふぅー、やっぱり拾うのが面倒だな」


 すぐにお祭りは終わったが、片付け作業が残っている。

 地上に降りて、草原に落ちている魔石と銀の羽根を集めていく。

 壊れた魔石はないが、壊れた魔石が鳥肉になるのか心配だ。


 最後に上空から拾い忘れがないか、赤い光と銀の光がないか確認した。

 やっぱり拾い忘れがあった。赤い光に向かって下りて、魔石を拾った。


 ♢


「次は……湖にするか」


 森の前に湖に行く事にした。魚がいれば唐揚げに出来る。

 鳥肉も魚も冷凍すれば、長期保存が可能で調理も簡単だ。


 湖に向かって、川の上を小船で飛んでいく。何か見つかるかもしれない。

 川幅は120メートル程で、水深10メートルはありそうだ。

 水質は綺麗で川底まで見える。


【名前:レッドクロー 種族:水棲系 体長:180センチ】——頭と両手に鋭い鋏を持つ赤いザリガニ。


「ザリガニか……」


 川底に赤い塊を見つけた。

 エビのピリ辛炒めは好きだが、ザリガニは食べた事がない。

 それに倒しに行くには潜らないといけない。服が濡れてしまう。

 森の木を切って、デカイ竿を作って、ゴーレムで釣り上げたい。


 でも、そんな老後の趣味の時間はない。

 服を脱いで、ゴーレム素潜りで大剣突き漁が基本だ。

 小船を捨てて、ゴーレムになって、川底に飛び込んだ。


 ドボン‼︎ 盛大な水飛沫が上がった。覗き穴から冷たい水が入ってくる。

 こうなるのは分かっていたから、直径20センチの大きめの覗き穴を十二個作った。

 水の中は小さいと見えにくい。


「ごぼぉ……」


 口の中に川の水が入ってきた。少し泥臭いが我慢できる。

 緋色の大剣を右手に持って、赤ザリガニに近づいていく。


「‼︎」


 ザリガニが尾びれで、水を蹴り飛ばして向かってきた。

 素早さはあっちの方が上みたいだ。左手を向けると弾丸を連射した。


「ブガァ‼︎」


 弾丸が水壁を突き破って飛んでいき、鋏をへし折り、頭部を粉砕していく。

 俺は漁業法を守らない男だから、撒き餌として痺れ薬ぐらいは使ってしまう。

 釣る為には手段は選ばない。大剣突き漁から弾丸漁に変更した。


 ♢


「そろそろ湖だな」


 ザリガニを倒しながら、川底を下っていく。

 湖の中には大量のザリガニがいそうだ。

 三百匹捕まえれば、一ヵ月は食べ放題だ。


「うっ!」


 だけど、湖にはザリガニはいないようだ。

 黒い斑点を持つ薄紫色のカエルが大量に泳いでいる。

 伸びた脚も含めると、二メートル近くはある。


【名前:矢毒ガエル 種族:水棲系 全長:60センチ】——身体の表面に猛毒を持ち、口から猛毒の液体を発射するカエル。


「毒なら大丈夫か」


 見た目は悪いが、肉になれば分からない。

 それにゾンビは高い毒耐性を持っている。

 食べるのも捕まえるのも問題ない。

 弾丸漁を開始した。


「グゲェ、グゲェ、グゲェー‼︎」


 弾丸がぶつかるたびに、紫ガエルの身体から紫色の液体が飛び出していく。

 多分、毒液だろうけど、少し見えにくくなるだけだ。

 構わずに毒煙幕に向かって、弾丸を連射する。


「もう終わりか?」


 近場の紫ガエルを倒しまくったら、毒煙幕が消えてしまった。

 水中に黒い斑点がある紫色の皮が浮かんでいる。

 常人には着る事が出来ない、ゾンビ専用の毒の革服が作れそうだ。

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