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第136話 英才教育

「ほら、お土産だぞ。石は集め終わったんだよな?」


 メルの食べ残しのお弁当をゾンビ三人の前に置いた。

 よく考えたら、赤髪のブレルと白髪のシトラスは同じ風魔法使いだ。

 用が済んだら、赤髪の方は解放してやってもいいかもしれない。


「ゔゔっー!」

「ご苦労。食べていいぞ。喧嘩するなよ」

「ゔゔっ、ゔゔっ‼︎」


 アレンが二個、ブレルが一個、シトラスが四個、広げた両手の上に殺生白珠を置いて献上してきた。

 それぞれから白珠を回収すると、早速メルに吸収させた。

 余り物のお弁当は、ゾンビ三人が綺麗に片付けてくれた。

 次は一週間後に聖水と一緒に持ってきてやる。


「さてと、予定通りに39階に行くか」

「あうっ」


 ゾンビ三人に再び殺生白珠集めを命令すると、49階に火竜を待機させた。

 火竜は45階までしか連れて行けないから邪魔になる。

 小船を作って、メルを乗せると、39階の闘技場を目指した。


「買うべきか、買わざるべきか……」


 小船を飛ばしながら、次の予定を考えてみた。

 進化素材を全部探すのは流石に時間がかかる。

 1~29階で取れる進化素材は買った方が早い。


 でも、出来れば金は使いたくない。

 新ダンジョン生活に向けて、資金を貯めておきたい。

 節約できるところは節約する。


「オヤジ達の所に貰いに行くか」


 職人のオヤジ達が魔導具を製造していると言っていたから、進化素材もあるだろう。

 命の恩人ならば、ついでに『武器製造』『道具製造』のアビリティも貰える。

 運搬用の箱と落ちていた武器を持っていけば、嫌とは言わないだろう。

 これで節約どころか、完璧に黒字になる。賢い節約術だな。


 地下39階……


「お前は階段の中で待機するんだぞ」

「あうっ」


 防具製造の手袋を持たせて、階段にメルを待機させた。

 俺がキメラを倒して、魔石と皮を手に入れるから、メルには革手袋を作ってもらう。

 一双五千ギルでオヤジ達に買取ってもらう。無理ならヴァン達が買取るだろう。

 命の恩人の頼みなら嫌とは言えない。


「苦戦していたのが嘘のようだな」


 両手に持った赤と紫の大剣を振り回して、キメラを次々に両断していく。

 攻撃力も上昇しているが、黒岩に変化した事で防御力も格段に上昇している。

 キメラの牙や爪程度では、ブラックゴーレムを破壊して、俺を引き摺り出すのは不可能だ。


 ♢


「いや、待てよ……」

「あうっ?」


 キメラを百五十匹以上倒して、目的の神金剛石を七個手に入れた。

 メルに吸収させれば進化するが、ちょっと待った方がいいかもしれない。


 少し修業しただけのアビリティでも、俺が進化すると習得していた。

 つまり色々なアビリティを少し修業させれば、一気に習得できる可能性大だ。

 製造系アビリティを全種類覚えさせたいし、魔法も全種類覚えさせたい。


 いや、冷静になろう。魔法は全種類は無理だ。三種類ぐらいで我慢しよう。

 この天才の俺の英才教育を受ければ、そのぐらいは余裕で出来る。


 まずは製造系のアビリティを三種類習得させよう。

 薬品・防具・家具製造の手袋があるから、ミノタウロスの魔石を大量に集める。

 教育と投資は惜しんだら駄目だ。


 薬品はウッドエルフの矢を入手すれば、毒薬・麻痺薬・睡眠薬が作れる。

 家具はバラ園の木を伐採すれば、いくらでも作れる。

 材料を集めて、45階にメルを置いて、49階の落とし物を町に届けに行く。

 そして、武器・道具製造、聖水を持ってくれば、製造系は全種類制覇だ。


「ヤバイな。とんでもない万能製造機が作れそうだ」


 だが、今ではない。

 時間がかかりそうだから、予定通りにメルに神金剛石を吸収させた。

 万能製造機はメルじゃなくても、別の人間を用意すれば作れる。


「ゔゔゔゔっっ‼︎」

「さてと、検品しないと……」


 メルが苦しみ出したので、俺はその間に完成した手袋を検品する。

 薄茶色の革手袋は、指五本と指二本の二種類がある。俺が指定したのは指五本タイプだ。

 手に嵌めている手袋を見て作れと言ったのに、ちょっと独創性を発揮したようだ。

 もちろん買取り不可なので、報酬のアメ玉は差し引かれる。


 買取りは54双、買取り不可は23双、失敗作はプロの俺が革靴に作り替える。

 防具製造LV2の実力を見せてやろう。


「ふぅー、やっぱり俺の方が早かったな」

「うぎゃああ!」


 検品と修正が進化前に終わってしまった。分かっていた事だから問題ない。

 岩箱を作って、梱包作業をすればいい。岩の値札は町で作るとしよう。


【名前:ゾンビアーチャー 年齢:7歳 性別:ゾンビ 身長:133センチ 体重:30キロ】

【進化素材:紅蓮石七個】

【移動可能階層:30~50階】


 進化が終わって呻き声が聞こえなくなったから、メルを識別眼で見させてもらった。

 全体的に習得済みのアビリティLVは上昇しているが、魔法と防具製造は習得していない。


 どうやら天才肌の俺と、凡人を比べるべきではなかったようだ。

 俺だからこそ、驚異的なアビリティ習得が可能だったのだろう。

 ちょっと凡人の進化に期待し過ぎてしまったようだ。


 反省しないといけない。

 素直にアーチャー、弓兵として就職できた事を喜ぼう。

 盗賊から更生しただけでも凄い進化だ。


「それにしても少しずつデカくなっているな……俺を追い越すなよ」

「うあっ、るる」


 相変わらず何を言っているのか分からないが、メルの身長が10センチ以上も伸びている。

 見た目年齢も十歳ぐらいになっている。俺も10センチぐらいは伸びているけど、もう進化はしない。

 親の立場として、子供に身長を追い越されるのは絶対に駄目だ。見下されている気分になる。


「まあ、3センチずつ成長しているから問題ないか。ちょっと待っていろよ。内職させるから」

「ううっ?」


 このまま34階を目指すつもりはない。

 一つ下の階に戻って、ミノタウロスから赤い魔石や皮や角を入手する。

 貴重な移動時間も革手袋を作らせるに決まっている。


 ♢


 地下34階の毒の沼に到着した。

 ちょっと湿った黒色の土に、紫色の水溜りが至る所にある。

 出現するモンスターは毒と鉄糸を吐く大蜘蛛だ。

 鉄糸は金属盾を作るのに、ちょうど欲しい素材だ。


「メル、何個あるんだ?」

「たぁ」

「五個か、結構あるな」


 宝箱の数をメルに聞いたら、指を五本立てた。

 この辺は素通りする冒険者が多いようだ。


 だが、進化した宝箱ハンターの実力ならば、余裕で見つけられる。

 メルは『宝箱探知LV7』、俺は『識別眼LV8』だ。

 この二つの能力を合わせれば無敵になれる。

 

 宝箱のある方向はメルが分かる。探す範囲も直径百メートルぐらいに縮小された。

 あとはその範囲内を識別眼を使って、宝箱が埋まっている地面を見つける。

 宝箱を見つける為に、広範囲の地面を掘る時代は終わった。


「はい、発見しました」

「あうっ」


 地面を岩スコップで50センチ程掘ると、赤い蓋が見えてきた。楽な仕事だ。

 Aランクダンジョンに行かなくても、一週間に一度ダンジョンに入って、宝箱を漁るだけで生活できる。

 町長選に二十五歳から出馬できるから、今のうちに金でもばら撒いておこうか?


 いやいや、まだ実績が足りないな。

 このまま町長になっても、姉貴の弟の七光り町長と呼ばれるだけだ。

 それに出来れば優秀な人間を側に置いて、仕事は全部丸投げで町長の肩書きだけ欲しい。


「うんうん。まだ、その時じゃないな」


 余計な事は考えずに地面を見るのに集中しよう。

 冷静に考えると、町のオヤジ達に金をばら撒くのは勿体ない。

 それに俺は配るよりも回収する方が好きだ。


「さてと、次はゴキブリ達だな。魔石を荒稼ぎするぞ」


 パパッと赤い宝箱五個の回収は終わった。次の33階で進化素材は集まるだろう。

 素材と魔石が山積みになった小船を進ませた。


「ううっ、ううっ」

「何だ、これは? 芸術家の才能は無さそうだな」


 小船の後ろで、メルが楕円形の鉄盾を作っている。ちょっと検品したが駄目だった。

 俺が作った岩丸盾を見本に置いているのに、参考にするつもりはないようだ。

 頑張って買取り不可を量産している。

 

「宝箱以外の活躍は無理か。やはり魔法を習得させないと駄目だな」


 メルの将来の為に移動中も内職をさせているが、製造系は向いてないようだ。

 だとしたら、戦闘能力を上げるしかない。

 ただの弓使いだとロビンと同じだから、魔法を覚えさせるつもりだ。


 でも、魔法は生まれ持った才能が作用するから、普通は覚えられない。

 だが、俺は手掛かりを49階で見つけてしまった。

 エストの持ち物から紫色の石が嵌まった、銀色の指輪を見つけている。


【神器の指輪:使用者に魔術LV1を与える】

【強化素材:属性魔石】


 俺の直感が言っている。これを使えば確実に魔法が使えるようになる。

 さっきの進化では反応がなかったが、次の進化でランダムで魔法を何か覚えるはずだ。

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