Comet 【序章】
始めて書いたオリジナル小説です。
【序章】
○月✕日。ある街に隕石が落ちた。それが全ての始まり。その街の何気なく続く幸せな日常はこの日を境に呆気なく終わりを告げた。
朝。私が学校の支度で髪を結んでいると、スマホからけたたましい警告音が鳴り響いた。
ビロリロリン!ビロリロリン!
『緊急速報。緊急速報。鳩羽街付近に隕石が落下の観測。』
「えっ!?」
お母さんが慌ててテレビを付けると女子アナさんが慌てた様子で速報を読み上げていた。
『え〜たった今入ってきました。緊急速報です。今日鳩羽街付近に隕石が落下するとの事です。繰り返します。鳩羽街付近で今日隕石が落下するとの事です。付近の皆さんは自治体の指示にがあるまで落ち着いて行動してください。指示があり次第指示に従って地域の避難所に直ちに避難してください。政府は対策本部を設置…』
「あら、これってアンタが来月から一人暮らしする地域じゃない…物騒だわ…でももう転校の手続きしてしまったし…気を付けるのよ?」
テレビをつけてニュースの概要を見た母が不安をポツリと呟く。
まだ転校は先だと言うのに心配する母に思わず笑ってしまう。
「お母さん…そんなに心配しなくても大丈夫だよ笑
私が転校する頃には隕石もう無いだろうし笑」
そう言っても母の顔は曇ったままだった。
「そうよね…でも…なんだか気味悪いわ…」
お母さんのひと言にふっと思いついた事をそのまま口に出てしまう。
「お母さんの女の勘?」
お母さんは少し考える素振りを見せながら心配させまいとおどけて笑顔を返してくれた。
「そんなとこかしらね〜笑」
お母さんの感はよく当たる。転校した先で何かあるのかもしれない。
「あら、もうこんな時間。ちひろ…そろそろ遅刻するわよ?」
ふと考え込んでると母の言葉に慌てる。遅刻する訳には行かない。
「あっ、やばっ…行ってきますっ!」
急いで立ち上がり玄関に向かおうとすると母から呼び止められる。
「ちょっと!お弁当!」
背中から呼び止められて直ぐに振り返り目的の物を受け取る。
「わっとと。ありがとう!」
「もう…来月から一人暮らしなんだからしゃんとしなさいな…」
「はーいっ!行ってきますー!」
お母さんの小言を軽く受け流し、私は学校に向かうことにした。
「やっば。かなりヤバい!」
全速力で自転車を漕いで学校へ向かっていると急に子供の声が響いた。
『ながれぼしだー!』
「へ?うわっとと!?」
びっくりして危なく事故るとこだった…。
頭上を見上げると微かな青い光の球が地上に向かって飛んでいた。
「あれは…」
『たーくん。あれは隕石よー?』
『なんの違いがあるのー?』
『え!?えーと…』
親子の会話を横目に時計を確認する。
かなりギリギリだな…。
「ちひろ〜!遅刻するよ〜!先行くねー!」
後ろからの突然の声掛けに驚くとそこには幼なじみのゆみの姿があった。
「うわっ!?びっくりした…。って!ちょっとゆみ!待って!」
「早く行くよー!」
ゆみは颯爽と自転車で走り抜いて行った。
「どんな脚力してんのよ…」
私のひと言がゆみに届くはずもなく。私は全速力でゆみを追いかけた。
ゆみとこうして一緒に話すのも学生生活を送るのも今日が最後だ。
今日はめいっぱい楽しもう。
そう思った1日の朝だった。
朝のホームルームが終わり。いつもと何ら変わらない時間帯。
歴史の授業が始まってもいつもと変わらない。転校するなんて実感が湧かない。
それでも今朝のニュースがあってかなんだか私はソワソワしていた。
「お…?」
窓の外を眺めると朝よりも若干青い光の球が大きくなっていた気がした。
『高原さーん?窓見ないで教科書見なさーい?』
松井先生の声にハッとする。
「あっすみません…!」
直ぐに謝るが先生はちょっと機嫌が悪いみたいだ。
それと同時に女子生徒の噂話が聞こえてくる。
『ねぇ…隕石って大丈夫なのかな…』
『ネットニュースになってたけど空き地に落ちるみたいだから、被害は最小限なんだってさー。』
先生の眉間がピクピクしている…。
『あなた達も喋らない!』
先生が怒るのも無理ないと思う。私も悪いけれど。
『先生ー!隕石って大丈夫なやつなのー?』
悪びれる様子もなく1人の男子生徒が松井先生に質問する。
『はぁ…近隣住民は避難済みですし。幸い落下地点は空き地。処理班も出動するみたいだから、あなた達が心配する必要な1ミリもないのよ?休み時間ならともかく授業中は…!』
『分かったからそんなに怒らないで〜笑』
男子生徒はまた先生の小言が始まったという態度だ。
『先生こわーい笑』
『はぁ…』
先生が呆れてる…まぁそうだよね…。
キーンコーンカーンコーン
授業終了のチャイムが鳴る。
『以上…!高原さん…元気でね?』
「っ!?ありがとうございます!先生!」
チャイムが鳴ったと同時に声をかけてくれる歴史の松井先生はちょっと厳しいけどやっぱり優しい先生だと思った。
昼休み。私は教室で友達に囲まれていつものお昼を過ごしていた。
「ちひろって相変わらず料理上手いよね〜お弁当超美味しそう。」
友達の由衣が私のおかずをキラキラした目で見つめて呟く。
「ちょっと…最後までちひろのご飯狙う気?」
すかさずゆみが止めに入る。
その言葉を聞いて優奈が涙ぐみ始めた。
「最後じゃないもん…ちぃちゃんとは…少しのお別れだからっ…!!」
その言葉を聞いて私を含めた全員が涙ぐむ。
「ちひろ…辛くなったりしたらいつでも連絡してね?」
ゆみがそう言った瞬間だった。
『おい!見てみろ!落ちるぞっ!』
教室に居た全員がいっせいに窓を見ると青い光の球が落ちるとこだった。
『あれやばくね!?動画撮ろうぜ!』
『ヤバい!これ。すげぇ!』
「ウチのクラスの男子って知能指数低いよね…」
ボソッと優奈が毒づく。
『あ?あ〜消えちゃった…なんだよ〜落ちねーのかよ…』
『ちょっと!言っていいことと悪い事があるでしょ!?』
周りの音がうるさく感じる…。
『隕石を静かな所でみたい』そんな欲望が出てくる。
ダメだ…1人になりたい。
「ちょっと外の空気吸ってくる。」
私が言うとゆみが心配そうに見つめてくる。
「直ぐに戻るから笑」
私は無理に笑顔を作って外に出た。
私達の教室は1階だから外には直ぐに行ける。私は中庭に向かった。
空を見上げると綺麗な青空に一筋の線が残ってた。
「流れ星って言ってたっけ…あの子供…ねぇ神様が居るならさ…私だけを必要としてる人に出会わせて?私がその人に必要とされる世界に行かせて?…なんて…無理だよね…笑」
『〜♪』
どこからか澄んだ少女の歌声が聴こえてくる。
「だれ?」
私はその声を聴いて身体中を電流が走ったような感覚に襲われた。
私は何かに魅入られたように歌声の主を探し始めた。
「居ない…」
どこを探しても歌ってる人は分からなかった。
声もいつしか聴こえなくなっている。
「………もう1度聴きたかったな…会ってみたかった…あの歌声の人に…」
ドンッというけたたましい音が遠くから鳴り響く。
「えっ!?」
突然の音に固まっていると校内放送がかかった。
『全校生徒の皆さんは直ちに自分の教室にお戻りください。繰り返します。全校生徒の皆さんは…』
「戻らなきゃ…」
私は教室に戻ることにした。
教室に戻るとクラスメイトは興奮している様だった。
『隕石落ちたってよ!?』
『やばくね!?』
皆が隕石の話をしている中私はあの歌声の少女の姿を想像していた…。
透き通った声なのに、儚くて、それでいて力強くて…
どんな子が歌っているんだろうか。流行りのアイドルみたいな子なのか、それともアーティスト系か。
見た目なんか正直どうでもいい。私は彼女に逢いたくて堪らなかった。
午後の授業中もあの歌声を思い出していた。
純粋に歌が上手いってだけではなく、彼女の歌声は惹かれるものがあった。
幻聴だとしたら私は相当ヤバい状態だろう。
キーンコーンカーンコーン
「え…?」
気付いたら授業は全て終わっていた。
「ちぃちゃん〜!離れたくないよぉぉぉぉぉー!」
教室に優奈の声が響くと共に体に衝撃が走った。
「うわっ!?急に抱き締めないでよ…」
「だってぇ……っ…」
「いつでも会えるからさ?笑」
「うん……」
優奈を慰めているとゆみが近付いてくる。
「由衣…バスケのミーティング入っちゃったって…先輩に引っ張られて泣きそうになりながら走っていったよ笑」
ゆみはふざけたように話すが表情は切なげだ。
「ごめんね…帰るね…」
「ちぃちゃん…!」
「…バイバイ」
後ろは振り向かないことにした。この学校で出会った友達は大切だけど私は転校しなければならないから…。
帰り道に私は彼女の歌を口ずさんでいた。
「〜♪」
今日から軽い荷作りを始めなければ行けない。
来月には一人暮らしが始まる。ワクワクする気持ちを胸に家路に着いた。
そしてその日から1ヶ月間。勉強して荷作りしての繰り返しであの日の出来事も忘れかけていた。
「じゃあ…行ってきます…」
お母さんが心配そうに私を見つめる。
「ちゃんと財布と携帯持った?
あと通帳と判子と…」
「大丈夫だから!本当に心配性だなぁ笑」
「大切な娘なんだから当たり前でしょ」
「…///
ありがとう…行ってきます…!」
今のは照れくさい…。
「行ってらっしゃい!」
私は気恥しさから後ろを振り返ることなくバス停まで走った。
そしてバスを乗り継ぎ。電車に乗る。
「景色…綺麗だな…」
しばらく乗っていると若い女の子の声が聞こえてきた。
『席どうぞッス』
『あらあら。若いのに感心だねぇ』
『はい!お母さんから人への優しさは忘れないようにって言われてるッスから!それにどうせ次で降りるッス!笑』
屈託なく笑いながらご婦人に席を譲る茶髪ショートの女の子は幸せそうだった。
『次は〜鳩羽街〜鳩羽街〜』
「あ、降りなきゃ…」
私が電車から降りる時にさっきの子の声が背中越しに聞こえてきた。
『じゃあ私は失礼するッス!』
最近の子にしては優しいなぁ…いや、私が荒んでるのかな笑
そう思いながら歩いてるといつの間にか新しい自宅のマンションに着いていた。
「ただいま〜…誰もいないけど…笑
はぁ…荷解きしよ…」
大きい荷物と必需品だけ荷解きするとお腹が鳴った。
ぐぅぅぅぅ。
「………今日はカップ麺食べよ…」
3分待つ間に先程の女の子を思い出す。
屈託なく笑う笑顔が素敵な子だった…気がする…。
「お。出来た…いただきまーす…。」
体にシーフードヌードルが染み渡る。
直ぐに食べ終えてしまった。
カップ麺を食べ終わると。ふっと急に電気が消えた。
「えっ!?ブレーカー落ちた??」
『グォォォォォルルルルル』
「は…?何…今の…声…」
急に獣のような唸り声が聞こえて来た。
『助けてぇぇぇぇっァァァァァァ』
「なにっ!?」
普通に生きていれば聞くわけない程の断末魔が聞こえてきた。
異質な気配がする。奥歯が恐怖でガタガタ言うくらいに。
窓の外を見ると地上に白くぶよぶよした人型のようなナニかが居た。
そしてヤツらは人を襲っていた。
なんだよこれ…なんなの…!?
心の中が恐怖でいっぱいになる。
『グルルルルル』
「っ!?」
隣の部屋から異質なヤツらの唸り声がする。そして何かが割れる音がした。
『パァンッ』
「っ!!」
私は部屋を飛び出した。隣にヤツらが居る以上立てこもってるのは非常にまずい…逃げるしかない…
私は夜の街を走った。
走りながら目に映した光景は信じ難いものだった。
気持ち悪い化け物に惨殺される若い人間の姿があちこちにあった。
「なんだよこれっ!?なんなの!?」
『落ち着いて!』
「うわっ!」
声を掛けてきたのは同い年位の若い男性だった。
『君は…ひょっとしてこの状況が分かってないのかい…?』
「えっ!?」
『簡潔に言う。この世界は現実世界の中で夜だけに現れて、新しく来た人をこの世界に閉じ込めてしまうんだ。元凶となった隕石を壊さなきゃダメなんだよ…多分…』
「それってどういう…」
意味が分からなかった。急に話しかけられて何コイツ…。異世界に連れてこられた的な?隕石を壊さないとってなんのRPGなの…。
『とにかく。無理に殺される覚悟で壊しに行くのは専門の組織に任せれば大丈夫だ…私達はこの世界の夜明けまで逃げ続ければ助かる…それと白く光る水晶体は壊さないようにらしい。組織の人によればアレはこの世界に来れない元の世界の変化した人間らしいから。ごめんねこんな事急に言って!私もさっき聞かされてよく分かってないんだけれど今こそ助け合わなきゃだろ!?』
急にそんなに説明されても困るし意味が分かんないけど、逃げれば良いのか。とりあえずもう少し…その組織についても詳しく…知りたい。
「すみません…もう少し詳し…」
『グォォォォォルルルルル』
『なっ!?うわぁぁぁっ!』
若い男性は私を囮に突き飛ばして逃げていった。
「痛った…」
怪物目の前にして突き飛ばすとか酷すぎる…。
というかこれ死ぬよね?
『グワァァァァァ』
あっ終わった…。
「っ!!助けてっ…!」
バンッ
辺りに銃声が鳴り響く。
『グォォォォォ……』
ドサッ。
「あ………」
助かった…?
「私を呼んだのはあなた?」
「っーー!?」
目の前には怪物の返り血で血塗れになりながら微笑む少女が居た。
「ごめんね…遅くなっちゃって笑」
「助かっ………」
「あっ……」
私の記憶はそこで止まった。
これが私と彼女の出会いだった。