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第八十九話 襲撃について②

散々宿屋で枕投げして調子を取り戻した僕らは、モンキー街騎士団本部に集められていた。シルフ街に比べると小さく、人もあまりいない様子ではあったが賑わいは迫るものを感じる。


それも当然。フローライトが精鋭と表現するような、風の盗賊団討伐のために集められた騎士団の兵士たちが集結しているからだ。


モンキー街騎士団本部の一番大きな部屋を緊急的に借りているのだが、貴族のパーティーかと勘違いするような賑やかさ。そんな場所に冒険者が堂々と立っているのもおかしいかなと思い、僕やアズなどの龍酔い途中合流メンバーは、端の方で固まることにした。


龍車でモンキー街についたのは、午前よりの昼どきくらい。だが今は既に日も沈み、次の日をもうすぐ迎えるほどの時刻となった。普段であれば既に眠りについているか、もうすぐつくくらいの時刻。

つい欠伸がふわっと出て来る。


てっきり明日の朝方くらいに召集がかかると思っていたのだが、想像以上に早くフローライトが準備を終わらせたらしい。早朝に風の盗賊団の本拠地襲撃……みたいなスケージュール何だろうな。


この時間にわざわざ召集がかかったと言うのは、そういう理由なのだろう。

さすが勇者、仕事が早い。


フローライトの手際の良さに感心していると、一人の騎士が僕らの元に近づいて来た。

黒髪おかっぱ頭の眼鏡をかけた少女。真っ白の生地に赤い天秤の刺繍が入った服には、金色のバッチの他、高そうな装飾品に彩られている。多分けっこう偉い人。

背は高く僕と同じくらいで、耳はピンと尖がっている。察するにエルフだ。


「シルフギルドの冒険者様方、そしてエメラルド様、この度はわざわざ騎士団長のわがままを聞き入れ、はるばるモンキー街まで足を運んでいただき感謝申し上げます。」


そんな少女は僕の傍まで来ると、僕らに向かって綺麗な礼をして来た。

完璧な三十度のお辞儀。つい見惚れてしまう端的さだ。


「お前、誰にゃ?」


「わたくし騎士団騎士団長補佐、ゼオと申します。本来ならばもっと早くご挨拶すべきだったにも関わらず、今日まで遅れてしまったこと心からお詫び申し上げます。王都の方でのフローライトの開けた事務作業の穴をどうにか埋めようと奮闘してはいたもののですが、想像以上にかかってしまいこのようなタイミングに……誠に申し訳ございません。」


アイの問いに、少女は再度お辞儀をしてそう返答した。

騎士団長補佐と言うことは、フローライトの側近…いや片腕のような存在。勇者や騎士団議会の委員の次に偉い役職で、かなり高い地位の人物。冒険者ギルドにおける副ギルドマスターのような関係だ。シルフギルドで言えばシルフとクリスタだな。


位から見ても僕ら金等級冒険者の方が低いのだから、こんなガッチガチの敬語を使わなくても良いと思うのだが……何と礼儀正しいのだろう。まさに庶民が想像する騎士って感じ。


こういう人間とあまり接して来たことが無いので、ちょっと緊張する。シルフギルドにこんな人いる訳も無いしな

ただ……それは僕だけではなかったらしい。


「うわ、すっごいガッチガチな人来たにゃ。対応はエメラルドに任せるにゃ。」


「ええ!?うち!?うちがこういう礼儀に礼儀で対抗するようなこと、できると思う?無理に決まってるっしょ。アズにパス。」


「はぁ……私もこういう人は苦手なのよ。まるで貴族みたいじゃない。ほらフォス対応しなさい。パーティーリーダー命令よ。」


「うお!?押すな。」


軽くアズに蹴られて僕は皆より一歩前に出る形になる。

自然とゼオと目が合ってしまった。これはどうやら僕が対応しなければならないらしい。


「えっと……大丈夫ですよ。それに事務作業は大変ですから、僕もゼオさんほどではないと思いますが分かりますよ。むしろその大変な仕事を作戦決行までに終わらせたことは、素晴らしいことですし尊敬します。」


「す、素晴らしい!?尊敬!?あ、ああああありがとうございます。あまりにも聞き覚えのない言葉が羅列されて、すいません……ど、どう返答すればいいのか……。」


「い、いえ問題ないですよ。聞き覚えのないと言うことは……普段はフローライトさんに、賞賛されたこととかないんですか?」


「賞賛!?とんでもない!?そんなことされたことありませんよ。むしろ叱られてばっかり……ただ、ははっ、なるほど。賞賛と言うのは悪くないものですね。」


さっきまで鉄の仮面のように硬かったゼオの表情が、その言葉と共に柔らかくなる。

うん、やっぱりあの仏頂面よりこの笑顔に方が可愛らしいし彼女には似合ってる。そんな気がする。


にしても騎士団……団長補佐にも関わらず事務作業が地獄のようにあるとは、まさにブラック。さらに褒められることがないとか、メンタル破壊される。


僕自身ブラック企業で働いていたから分かるけど、お褒めの言葉一つあるかないかで心持ちが大きく変わるものだ。まあ末期まで行くと、何の感情も浮かばなくなるのだが……。


まだ彼女はその域まで達していないようだし、鬱とかにならないようサポートが出来てるといいんだけど……。騎士団ってのは案外、ブラック企業なのかも。

まあクリスタも死んだ目になって事務作業してるとこよく見るし、冒険者の僕らが言えることでもないか。


この異世界って希望があるようで、割とないんだよなぁ……。神様どうにかしろよ。


「ゼオ、こっちに来て。」


「あ、団長様に呼ばれたので、私はこれで……。今回はよろしくお願いします!」


「こちらこそ、よろしくお願いします。」


互いに礼をすると、ゼオはフローライトの方へと小走りで走って行った。どうやら作戦会議が本格的に始まるらしい。


「……くたばってなかった…んです…か。」


気付くと、ジェットがどこからか僕らの場所に来ていた。どうやらゼオと会話している間に、来ていたらしい。気配感じ無さすぎだろ。

ちょっとびっくりする。


「あ、ジェットっち。ちーす。」


「その呼び方…不快…です。止めて……ください。」


「えー、けど確かにジェットっちって言い辛いよね。逆に何か言って欲しいあだ名とかある?」


「ありません。けどジェットっちは…いや…です。」


「にゃは、ジェットがここまで喋るのも初めてじゃないかにゃ?よろしくにゃ、ジェットっち。」


「だから……その言い方は…やめてください。」


「あんたやめて欲しいなら、新しいあだ名自ら提示した方いいわよ。そうじゃないと、こいつらずっといじり倒すから。」


「……面倒な方々…ですね。」


ジェットははぁと小さくため息をつく。

ごもっともである。僕も面倒だと思うことが無いわけじゃない。


ただずっとこれまで喋らなかったジェットが喋ってくれたのは、ちょっと嬉しい。彼女たちの強引な絡みも、今日は功を奏したのかも。


「では、ジェトーで…お願いします……。」


「ジェトーって、ピトーみたいだな。」


「最後の発音しかあってないじゃない。あとピトーって何よ?」


「ごめん、何でもない。」


「ジェトーより、ジェットの方言いやすくないかにゃ?」


「じゃあ、ジェットでいっか。ジェット、これからよろしくね~。」


「……うざ。」


結局、あだ名は無くなって呼び捨てになったらしい。


「はーい、みんなちゅうもーく。これから作戦につて発表するわ。ゼオ、この資料を全員に配って。」


フローライトの鶴の一声で、部屋の中が一瞬で鎮まる。

僕らはゼオから紙の資料を受け取った。そこには地図と、風の盗賊団のアジトと思わしき場所の写真が写されている。ちゃっかり写真を撮ってきているあたり、さすが騎士団。いやフローライトかな?

感心感心。


写真は現代の日本じゃありふれている物ではあるが、この世界では結構高価なもの。

写真を撮るには魔術写真機って言う高さ1.5メートルくらいの大きなものが必要で、それがまあ高価なものなのだ。更には写真を撮り終わるのに一分くらいかかると言う、使いづらさにも拍車のかかった代物。スマホで取り慣れている僕にとっては、面倒過ぎて使えそうにない。


たしかシルフギルドにも一個あったっけ。

ギルドマスターの部屋の奥に、サラッと置いてあるとか聞いたことがある。使ってるとこ見たことないけど……。


「いい、見てもらったら分かると思うけど、風の盗賊団は地図で言うこの場所にあるわ。ここから三十分ほどの場所ね。ただ構造が構造だから、攻め入るのは困難を要するわ。」


フローライトは大声で、そう皆に話を始める。


写真を見た感じ、どうやら風の盗賊団のアジトは崖の中をくり抜いたような構造になっているらしい。そのため非常に縦長。何階構造なのかと聞かれても、どうも写真じゃ判断しようにないほど。

少なくとも五階建て以上はるだろう。すごいとこに作ってんな……。


確かにこの自然に溶け込んだアジトならば見つかり辛いだろうし、これまで全く見つかっていなかったと言うのも納得がいく。どうせ隠蔽魔法みたいなのかけて、更に見つかり辛くなってるだろうし……。これじゃあ中に何人、風の盗賊団の賊たちがいるのか見当もつかない。


「私が調査したところ、この風の盗賊団のアジトへの入り口は二つよ。崖の正面と、裏口と思われる崖をぐるっと回りこんだ場所。よって私たちは二つのチームに分かれて、この二つの入り口から奇襲を行うわ。」


崖の裏側……裏口まで見つけるとか勇者ってすごすぎないか……。

僕らが枕投げしてる間に、どんな仕事量をこなしてるんだ……。他の騎士団の招集に、写真に、入り口調査まで……勇者ってのは強いだけでなく、こういった裏方みたいな作業も効率良く進められるらしい。そりゃ偉いわけだ。


皆が納得する勇者。

だからこそ世界中に何万人といる騎士たちを、従えることができるのだろう。将来僕やアズもそのレベルまで達することができるだろうか……。

白金等級冒険者になるなら、きっと勇者くらいの能力は必要になる。けど……今の僕じゃ、そのレベルに達している将来の姿なんて想像もできない。アズは……変なとこ天才だから何だかんだ言って出来そうだな……。おいてかれないようにしなきゃ。


「二つのチーム分けは、私の独断で決めさせてもらったわ。配布した資料の五ページ目を見て。そこに組み分けが書いてあるから。さて……不満や、異見のあるものは挙手しなさい。」


チームの組み分けを見ると、どうやら二つのチームはフローライトとゼオを中心として二つに分かれているらしい。フローライトチームが正面から、ゼオチームは裏側から。

そして僕は、ゼオチームことう裏口から攻め入るチームに配属されているらしい。アズは……良かった、僕と同じチームだ。と言うか細かく見てみると冒険者は全員、ゼオチームに配属されているらしい。


フローライトの判断だろう。実際バラバラになるより冒険者同士の方が、行動も読みやすいし咄嗟の協力や手助けもしやすい。非常に作戦の面からも理に適ってると思う。

あと大声では言えないが僕以外全員知らない騎士団の人たちとか、気まずいからな……。

こちとら陰キャやぞ。知ってる人がいないと、誰にも声をかけられず、縮こまって孤立するのである。辛すぎ。この編成で良かった……。


何か小学校とか中学校とかの、学年変わるときのクラス分けを思い出した。

必死に友達を探す、あの感覚……。久しぶりである。


そう言えば友達誰もいなくて、新学年から孤立したっけ……。あはは……。

さらに仲良かった友達は新しいクラスで友達作って……僕は一層孤立して……あ、ダメだ。

泣きそう。


「フォス、あんた大丈夫。すっごい泣きそうな顔してるけど?」


気付くと、アズが僕の顔を覗いていた。

さすがアズである。僕の小さな変化にもすぐ気づいてしまった。

日本の僕よ。転生した後の異世界では、相棒と呼べるような素晴らしいアズと言う存在と出会えるぞ……。だから頑張って……。


「い、いや…アズと出会えてよかったなって……。」


「いきなり壮大!?ホントに何があったのよ!?」


その後、会議は直ぐに終わったのだが……アズが僕を心配する様子はそれから数時間は続いた。

けど心配しながらもどこか嬉しそうにしているような、そんな気がした。

うわ~、投稿遅れてごめんなさい。今日からまた頑張ります。

評価、ブックマーク登録、お願いします。して下さらないと、僕が死にます。

感想もお待ちしてます。


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