表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/261

プロローグ 依頼について

ある日のサラマンダーギルド。

その日は雲一つないほどの快晴で、秋になったと言うのにポカポカとした陽気に包まれていた。そよ風はまるで喉を撫でるように優しく吹き、空気は透き通るように美味しい。

そんな気分の良い外の空気を味わおうと、一人の女性が窓の淵に手をかけ大きく深呼吸をしていた。


足元を埋め尽くすほど伸び切った紺色の髪を正しながら、ボーッと外を眺める。

彼女はその行為を何より、好んでいた。机の上に山のように溜まった書類……その現実から逃げることができるから。


この時間…この時間だけは……全てを忘れさせてくれる。地位も権力も義務も仕事も……。

風と一体になり、人間であることすら放棄できる。そんな錯覚をこの時だけは、私に与えてくれた。


ただ……トントンと、ドアを叩く音が彼女を再び現実へと引き戻す。


「入りなさい。」


そう言葉にして、開けていた窓を閉める。どうやら現実逃避の時間が終わってしまったらしい。悲しくもあり、辛くもある。そんな感情を噛み締めながら、彼女はゆっくりと一際豪壮な椅子に座った。


扉から入ってきたのは、黒髪の少女。ツインテールにまとめあげられた髪型は、一見幼い印象を与える。

ただその印象と相反するように、短いスカートに胸元の空いた服。確か最近流行りのじょしこうせいの制服だっただろうか?わざと完璧に着こなさず、敢えてスカートをより短くしている姿は、逆に彼女らしいとすら思えた。


「ギルドマスター、どしたの?いきなりうちのこと呼び出したりとかして?」


少女は少々落ち着かない様子で、髪先やスカートの先をいじっている。この部屋は他の部屋に比べれば厳かで、雰囲気が異なる。緊張させてしまうのも無理はない。


「エメラルド、あなたにやって欲しいことがありましてね。ほら、先ずはこちらを見て下さる?」


「この新聞?」


私は懐にしまっていた新聞の切り抜きを取り出すと、エメラルドに手渡した。エメラルドは不思議そうにその新聞に目を通すと、パッと表情を明るくさせる。


「あっ、フォスっちたちの記事じゃん!魔王軍幹部を追い返すってすごくない!?さらに魔王軍の幹部補佐クラスを七人も討伐!さらに一人は捕虜ってマジでパないって!シルフギルド活躍しすぎっしょ!」


「ええ、シルフギルドは非常に価値ある功績を残しましたわね……って見て欲しいのはその記事ではありません。その裏です。」


「え!?裏!?」


エメラルドは驚いた様子で、パッと新聞を裏に返す。そしてそこに書いてある文字を、ぎこちなく読み上げて見せた。


「かぜの……とうぞくだ…ん。37件目の強盗事件…発生。未だ…捕まらず……。」


「そう。それですのよ。風の盗賊団。知っています?」


「ん?あー何か最近話題の、窃盗集団だっけ。確か王都を中心に、貴族の家を襲撃してるんっしょ?」


「ええ、そうです。」


「んで?これがうちを呼び出したのと、どう関係してんの?」


エメラルドはそう言って、私の顔を覗き込んできた。

彼女の疑問も当然でしょう。盗賊団が何をしようがしなかろうが、それは冒険者の問題では無く治安維持組織である騎士団組織の問題。そして盗賊被害にあっている貴族組織の問題。我ら冒険者ギルドには関係ない。


ただ……そういわけにも行かなくなってきたのである。


「エメラルドにはこの()()()()()の調査をして欲しいのです。」


「んえ!?何でうちが?盗賊団つったら、騎士団がメインっしょ?」


「ええ……ただ、今現在戦争の方が激化しているようで、この盗賊団に裂く人員が足りていないそうなのです。そこでサラマンダーギルドに、調査の依頼が来ました。」


「なるほどね~、それでうちが選ばれたって訳か。」


「ええ、そうですよ。ちなみに拒否権はありません。強制です。命令です。義務です。」


「別に拒否しないから、そこでまで言わなくてもいいよ~。けどさ、うちだけってキツくない?誰か誘っていいわけ?」


「いえ、今サラマンダーギルドは試験が迫っている大切な時期。サラマンダーギルドの冒険者に頼むのは、止めて頂きたいですね。それに騎士団と協力で行う任務なのだから、人員不足は解消されるはずですよ。」


「そうは言っても騎士団の中に冒険者一人ってのは、動き辛いって。そんなんじゃ解決するはずの調査も、解決しないよ。」


「別に私は、絶対にこの問題を解決しなければならないとは思ってはいません。ただ冒険者が、騎士団の依頼を聞くという貸しを作った。これが達成されるのが一番の目的です。これが既に成立した以上、エメラルドに求めることは特にありません。」


「うっわ、きったな~。つまりうちには適当に、のらりくらりと振る舞えってこと?それじゃあうち、納得出来ないんですけど~。依頼を受けた以上、達成した方が貸しも増えるっしょ?なら解決した方いいじゃん。」


「まあそうですね。ですが言った通り、サラマンダーギルドの冒険者に手伝う人手はありませんことよ。」


「それはつまり~、サラマンダーギルドじゃ無ければいいってことっしょ?」


「……そうではありますが、他のギルドに迷惑をかけない範囲でお願いしますね。」


「おっけー、ならこの依頼も兆し見えてきたって感じだわ!引き受けてあげる~。けど報酬はきっちり頂くかんね?分かってる?」


「もちろん、分かっていますよ。では1時にサラマンダー街の騎士団詰所に行って、依頼を受けた旨報告しておきなさい。これで話は終わり。あとは任せましたよ。」


「おけまる~、ギルドマスターも試験準備頑張ってねー」


エメラルドは陽気に私に手を振ると、外へと出ていった。本当に今回の依頼について理解しているのかしら……。少し心配。


けどエメラルドはいつもあんな調子で、しっかり依頼をこなす。きっと今回も十分に活躍してくれるだろう。ただ…やはり気になるのは……


風の盗賊団……。


これまで盗賊団であったり、山賊であったりそう言った言わゆる賊の組織が起こした事件は数多くある。

ただ今回のように被害が大きく、それでいて最初に盗賊事件が起こってから数ヶ月間捕まらない……と言うのは異例の事態だ。


きっと今までには見られない、何か……があるのだろう。捕まらない何かが……。

それが武力なのか?知恵なのか?それとも技術なのか?私には空想することでしか、違いを考えることは出来ない。けど何かがあることは確実で……それでいて少し嫌な感じがする。


モヤモヤとしていて、それでいて理解できない嫌な感覚。何かが起こるのでは無いかという、具体的要素に欠けた危機感。


何だか、釈然としないわ……。


そんな意味の分からないモヤモヤを断ち切るように、私はもう一度窓を開けることにした。


読んで頂き感謝申し上げます。

非常に遅くはなってしまいましたが、第三章始まります!

毎日投稿を心掛けますが、どうしても休みを頂く場合がございます、申し訳ございません。


第三章は主人公において非常に重要な章になりますので、楽しみに読んで頂ければ幸いです。目標として総合300ptを掲げ、達成するため精進してまいりますので、評価、ブックマーク登録、して頂けたならば感謝の正拳突きをしながら喜びます。

よろしくお願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ