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第三十九話 修行について③

シルフ街外の野原。

僕は剣を構えて、アズを見つめる。


「本気で勝負?あんた死ぬわよ?」

アズはギラっと目を光らせて、睨み返した。


相変わらず怖い目付きだ。

これだけでザコ敵とか、一掃できそう。

覇王色の覇気みたいに。


「勝負とは言ったけど、別に殺し合いをする訳じゃない。単純に言えばしっぽ鬼かな。」


「はぁ?しっぽ鬼!?ガキの遊びよね?そんなので私の成長のヒントが見つかるの?」


「うん。けど今回は尻尾の代わりに、この首にかけている徽章を使おうかな。そうだなぁ、僕が鬼になるから、アズには5分間逃げて欲しい。」


「つまり私は徽章を取られないように、逃げるだけってことよね?楽勝じゃない。逆に勝てると思ってるの?」


「さすがに逃げる範囲が無制限なら、無理だと思うよ。だから2つほどルールを設ける。」


「ルール?言ってみなさいよ。」


アズは本気で言ってるの?みたいな舐めきった目で見てくる。

けど僕は心の底から、本気と書いてマジだ。

このしっぽ鬼…通称徽章鬼で、アズの弱点を丸裸にする。


「1つ目、逃げる範囲はこの木を中心とした半径20メートル以内。2つ目、アズは一切の武器の禁止。どう?」


「ふーん。それくらいで、あんたが勝てるとは思えないわね。足だって私の方が速いし、魔法の技術も私の方が上だわ。もっとハンデを増やしたらどう?」


「いや、要らない。このルールで僕が負けるとは、思えないからね。」


「へ~言うじゃない。じゃあこうしましょうよ。この勝負で勝った方が、相手に何でも一つ命令できる。どう?面白いでしょ?」


「別に構わないけど……それで本当にいいの?後悔しない?」


「あんたが後悔しないか聞いてんのよ。あたしが負けるとかありえないから。」


「んじゃ僕もありえないかな。」


「うざ。絶対逃げ切ってやるわ。そしたら、デートとか……いや、何でもないわ。さ、やるわよ。」


アズは何か聞き取れない小さな声で、何かを言っていた。


勝ったら僕を一日奴隷みたいに、使い回すとかだろうか?怖っ……けどアズなら言いそう。

これは負けられそうにないな。もちろん負ける気は無いけど。



僕とアズは20メートルほど開けて、野原の上に立った。

半径20メートルと言う範囲が分かるよう、外周には僕が作った1m程の土の壁が形成されている。

これで誤って範囲を超えるようなことにはならないだろう。

僕は土の壁を背に、アズは木を背に立っている。


アズの手から打ち上がったのは、真っ白い風を纏った魔弾。

魔力からか、ただの丸ではなく白い帯が出ているように見える。

陽光が反射し輝く魔弾はマンションの3階建てくらいの高さまで上がった後、急降下を始めた。


そしてドンっと、地面にぶつかる爆発音。

これがしっぽ鬼、及び徽章鬼の始まりの合図だ。



僕は勢いよく踏み出し、アズに一気に近づこうとする。

ただアズもその僕の行動に反応し、両手に野球ボール程の魔弾を生み出すと発射してきた。


言っておくと…アズは武器の使用が禁止されているものの、僕は禁止されていない。

そのため素早く剣を抜くと、魔弾を容易に斬って見せた。アズの弓矢ならまだしも、この程度の威力なら造作もない。


ただアズは僕が魔弾を弾いた隙を利用して、木の頂上まで登る。

すると何と魔力で弓矢を作り出したのだ。


「そんな技術持ってたのかよ!?」


つい驚いて、そう言葉が出る。

魔力で武器を生み出すのはクリスタなどがやっていたので見たことはあるのだが、まさかアズが使うとは思ってなかった。

不味いな……これでは武器を禁止にしてこの勝負を勝ちやすくしといたのにあまり意味が無い。


「私は日々成長してんのよ!」


アズは弓矢を引き、躊躇なく僕に放ってきた。

再び剣で弾きながら、何とか木の近くまで接近する。

弓矢に驚きはしたが、やはり魔道弓を使うときに比べれば威力は格段に落ちる。

このレベルなら対応出来なくはない。


僕は地面に魔法陣を展開して隆起させると、そのままアズの頭上高くまで飛び上がった。

空中には飛び出てしまうため対応力は低くなってしまうが、今のアズの攻撃力なら問題は無い。


それをアズも分かっていたようで、素早く木から飛び降りて僕の振り下ろしの一撃をかわした。

ただ攻撃を緩める気はないようで、アズはまた僕に向けて数発の矢を放ってくる。


流石アズだ。

弓矢の正確性と連射速度は目を見張るものがある。

僕は木の上にいるのに加えて、剣を振り下ろしたこともありがら空き。格好の狙い目を逃さない動作もまた、アズらしい。


確かに木の上にいるために、土属性の魔法は間に合いそうにない。ただ僕は風魔法も使えるのだ。

素早く風属性の魔力で壁を空中に作り出し、アズの攻撃を防いでみせる。


「へえ、やるじゃない。」


「アズも中々だね。」


僕はアズを追撃しようと木から飛び降りて、アズへの接近を試みる。

ただ休むことない弓矢の攻撃を防がなければいけないのに加え、アズの動きは素早く捉えるのが難しい。


やはり接近戦には持ち込めないか……。

普通の剣士ならば、この状況は詰みに等しいかもしれない。近づく隙はなく、たとえ頑張って近づいても逃げられる。


ただ僕は普通の剣士ではない。言ってしまえば魔法剣士。

僕の得意な距離は近距離かと言われれば、むしろ中距離。この距離は僕のテリトリーだ。


剣でアズの矢を弾きながら、地面を変形させて槍を作り出す。これを発射し……と思った瞬間、何とアズが一瞬で接近してきた。


裏を突かれた!?


アズは接近戦を得意としてない分、まさか距離を詰めてくるとは思えなかった。土で作った槍は遠方に飛ぶように設定してしまったため、使いものにならない。


アズのストレートな蹴りを、何とか剣で受け止める。

だが受け止めればこっちのもの、接近戦に持ち込んだことと相違無い。

ここで仕留め……と思ったが、何故かそのとき僕の体は宙に浮いていた。


「え!?」


後方にぶっ飛び地面を転がる。

無理やりその反動を使って立ち上がるも、アズとの距離は既に数十メートル離れていた。


くそっ、やられた。

どうやら蹴ると同時に、突風を生み出す風魔法を発動させていたらしい。本来ならば彼女の蹴りを真正面から受けた以上、十分耐えられる体勢。

蹴りの威力自体は無かったものの、無理やり風魔法でぶっ飛ばされてしまった。


「あら、フォス。そんなんじゃ一生私なんか、捕まえられないわよ。」


「あ〜ちょっと、今のはカチンときたよ。絶対捕まえる!」


そうは言っているものの、頭は至って冷静。カチンときたのは事実だが、すぐに言葉として出すことで発散している。これぞ感情をコントロール、僕なりの技。

ムーンのときみたいに、御せない時もあるんだけどね……。


追撃してくるアズの矢を剣で払い、足を踏み出す。

直線的に接近せず先ずは回り込むように走り、木を影にして弓矢の軌道から外れるように行動した。

完全にアズの弓矢が攻撃できない方角まで走ってから、一気に木まで距離を詰める。


アズも僕も互いに位置はわかっているが、視界には捉えていない。

こういうときこそ深呼吸して魔力を探る。どうやらアズとの距離は今10メートル程度らしい。木の影で地面に手をつくと、再び土の槍を形成し風魔法で飛ばした。


距離を正確に測ったこともあり土の槍は、見事にアズに到達する。

アズはステップを踏み、その攻撃をひらりとかわした。


だがそのときアズが回避行動をしたと言うことは、弓矢攻撃が止んだことを意味する。

僕はバっと木の影から出て、一気にアズとの距離を詰めた。

それはもちろんアズも読んでおり攻撃させる隙を与えないようにと弓矢を放つ。しかし僕が走りながら、剣で斬撃波を飛ばすことで相殺させる。


これで僕はアズの攻撃を防ぎながら、減速しないことを可能にした。

とうとう僕の剣の間合いまで、アズを近づけることに成功する。


「ちっ、」


アズは舌打ちして、簡易的な防御魔法の壁を作る。

これで僕の接近攻撃を受け止める気らしい。

ただそれにしては彼女の防御魔法は脆い。



そう、これこそがアズの弱点だ。


アズは基本的に弓矢を使うため、近距離戦には向いていない。

間合いをとるため常に走り回るし、攻撃は避けるのに徹する。


故に防御が疎かになりやすい。

これは別にアズの防御魔法が下手だと言っている訳では無い。防御魔法の技術は十分高いし、僕よりも強力かも。だが緊急時のときや、咄嗟に発動しなければならない瞬間のとき、アズの防御魔法は非常に脆い。


これは経験不足と言うのが大きいだろう。今までに接近戦はほとんど無く、攻撃も全て避けるのに徹しているからこそ、緊急時に対応できるまで仕上げられていない。

避けることはもちろん重要。ただ避けれない状況というのは、いつだってある。


今の状況しかり、弓が壊れキンググレートボアの突進を受けなければならないときや、僕が地下施設で廊下の最後まで追い詰められたときだってそう。


アズはきっと落ち着けば防御魔法をしっかりと発動できるはずなのだ。現に話を聞けばギルドでグリフォンギルドと戦闘になったとき、猛烈な攻撃を受け止めるために防御魔法を使っていたと言う。


ならばアズは本来扱える能力を、焦りからか十分に発揮できていないことを意味する。

アズがより進化すべきところは、きっとココだ。

瞬時の防御。

これを僕自身確認するためだけでなくアズに心から知らしめるために、この徽章鬼を選んだのだ。



僕は剣でアズの防御魔法を破壊すると、そのまま流れるように蹴りをいれた。

体術を用いた連続攻撃。剣に莫大な魔力を流して防御魔法ごとかち割る選択肢もあったが、それではもし何かがあったときに隙が生じてしまう。

よし。やっぱり僕は冷静だ。


僕の蹴りはアズの脇腹にクリーンヒットし、勢いよくぶっ飛ぶ。地面を何回か転がるも、先ほどの僕と同じようにアズはその反動を用いて立ち上がった。

僕と再び、大きな距離が広がる。


「げほっ、げほっ…あんた私に、躊躇ちゅうちょってものはないわけ?」


「弓矢を連射してたアズには、言われたくないな。」


再びアズのペースにする訳にはいかないので、すぐさま追撃に剣をぶん投げた。

これはアズも読めなかっただろう。

まさか僕の近接戦闘の要となる武器を、遠距離攻撃の武器に使うとは思わなっかたはず。

さっきはアズに裏を突かれたが、今度は僕が突く番。


ただ実はこの剣の軌道は、ちょっとした工夫がなされている。

アズの真正面に飛ぶのではなく、少し内側になるようになっているのだ。

理由は簡単、逃げられないため。


アズは今。外側の土の壁と中央の木の丁度真ん中に立っている。

もちろん中央の方が逃げるスペースが多く、外側の方が逃げるスペースは少ない。だからこそこの剣の投擲で、中央に逃げるのを防いだ。


アズは僕の思惑通り、外側に逃げて剣をかわす。

この行動にもアズの弱点が如実に表れている。


アズ自身もここは外側ではなく、内側に逃げなきゃいけないと分かっていたはずだ。

だがそれができなかった、防御魔法が十分ではないから。

内側に逃げるには、剣の投擲による一撃を防御魔法で受けなければならない。アズがもし瞬時に防御魔法を十分に構築できるスペックを持っていたなら、迷わずその選択肢を取っただろう。

もしかしたらさっきみたいな不十分な防御魔法でも発動させて、無理やり内側に逃げる選択肢の方が賢かったかもしれない。


けどアズは外側に逃げる選択肢をとった。いや頭よりも本能がそうさせてしまった。

防御魔法に絶対への自信がなかったが故に、そうさせられてしまったのだ。

経験不足からの自身の魔法に対する信頼の欠如。

そのためにアズは僕の手のひらで踊らされた。


即座に距離を詰めて、アズを外側の壁に追い詰める。

アズとの距離は二メートルもない。


「観念したらどう?」


「死んでも嫌ね。それにこれで追い詰めたなんて思わないでよ!」


アズはサイドにステップを踏み始める。

僕の脇から走って抜けるつもりらしい。

右に行ったり左に行ったり……まるでサッカーやバスケットボールをしているときの、ドリブルのよう。そしてアズは力強く右に踏み出した。

だが僕が反応する仕草を見せた瞬間、一気に左に駆け抜けようとする。

誰もが騙されそうな、完璧なフェイント。


ただそれが僕に通用するなんて、思われたら困る。

何年アズと一緒に冒険して来たと思っているんだ。

アズがどんなときでも、狡猾に行動することくらい分かっている。僕がすることなんて簡単。

フェイントに付き合う必要もない。両脇の逃げるスペースを封鎖すればいいだけの話なのだ。


閉じ込めるように土の壁を瞬間的に作り上げ、アズの逃げるスペースを塞いだ。

ザ・ウォールみたいな感じ、多分。

土の壁が生み出されたことにより、僕とアズが小さな空間に閉じ込められたようになる。


「……っ!?それならっ!」


アズは退路が塞がれたのを確認した瞬間、進路を一転させ僕に突撃して来た。

囲むように壁があるものの、僕の後ろには壁が無い。

アズとしても、そこから逃げる選択肢をとったのだろう。接近戦を仕掛けてくる。

確かに先ほどは見事に一本取られてしまったが、もう一回となればそうはいかせない。

吹き飛ばす風魔法を使うならば、僕も同じことをするまで。


剣に魔力を灯し、アズの蹴りを真正面から受ける。

アズの突風が生じるも、僕の剣から生まれる突風と相殺して消える。

だがアズはそのまま引き下がらない。

そのまま反対の足による蹴りに加え、パンチや投げ技なども試みてくる。

完全な接近戦闘に、持ち込んできたのだ。


アズは近接戦闘が苦手とは言ったが、弱いわけでは決してない。世界四大ギルドの金等級冒険者が近接戦闘を履修していなわけは無いし、アズは何に対しても平均以上の成績を収めてしまう天才だ。

その才能のおかげか、近接戦闘は完全に様になっている。


だがもちろん僕の方が、近接戦闘は分がある。

幼少の頃から経験してきたのに加え、シルフギルドに入ってからクリスタに死ぬほど叩き込まれた。

ここでは負けられない。


アズのパンチを避けながら、肘をアズの鳩尾に打ち込む。

僕はアズと違って、守ることも避けることもできるのさ。


「ぐっ……」


僕の肘打ちが完全に入り、アズはそう声を漏らして尻もちをついた。

そのまま数秒動かなくなる。


かなり痛いであろうことは分かっているが、アズに攻撃をためらうことなどできない。

少しでも甘えを見せれば、必ず利用され逆転される。

僕はアズの実力を心から認めているからこそ、手加減はできないのだ。


生成した壁を素早く変形させて無数の手の形にすると、動けないように完全にアズを拘束した。

何本もの土の手が、アズに綿密に絡まり身動きを封じる。

なんかこれ見方によっては、煽情的だな……。あんまり見ないようにしようかな。


「くそっ、はぁはぁ、今…何分よ?五分経ったんじゃない?」


「残念ながら3分経過、あと2分残ってるよ。」


「あーもう、くそっ、私の負けよ!何してんのよ?早く徽章を取りなさいよ、ほら!」


負けたとは言ってるものの、そのアズの目つきは獣のようだ。

じたばたと動き、何とか拘束から抜け出そうとしている。

やっぱアズのこの顔、超怖い。狼か何かですか?

完全に人を殺す目だ。


ただアズが負けを認めた通り、ここで僕の勝利はほぼ確実。

だがここで油断するのは、三流冒険者だ。

勝利を確信した人間ほど、隙が生じるものではない。

冷静に判断し、完全に僕が負ける状況を最後まで考慮しなければならない。


もし僕が今のアズの立場だったらどうする?

諦めるか?そんな訳ない。アズだってそのはずだ。

五年も一緒にいたら意識しなくたって分かってる、アズはいつだって諦めることなんてない。

限界まで考えるはずだ。細い勝ち筋を手繰り寄せる方法を。


例えば、ここで僕が徽章に手をかけたときに嚙みつくなんてどうだ?


ただの噛みつき攻撃かよ…なんて思うかもしれないが、魔力を大量に込めれば肉ごと食いちぎることだって容易だ。負けたと言って油断させ、そこをガブっ!

悪くない逆転手段だ。


痛みで拘束の魔法が解ける可能性も十分高いし。

それに首付近に手を近づけなければならない以上、狙いやすい。


僕はそう言った反撃を一切封じる手段を講じなければならない。

ならばそうだな……この方法でいくか。


「アズ、もしかしてちょっとメイクした?」


「は!?はぁ!?何よいきなり!?そりゃ…その、ちょっとやってみたりはしたけど……。」


「やっぱり。こうやってしっかりと真正面から見る機会が無かったら、気付かなかったよ。似合ってるね。」


「な、なななななななな……何よ!う、うっさい。って……あ!?」


僕はパッとアズの首から徽章をとった。

これぞ褒めて隙を生じさせる、まさにアズに対してのみ有効な必殺技。


アズのパワハラ対策として褒めることが有効であると分かったときに、ちょっと気付いたのだ。

可愛いだとか綺麗だとか、似合ってるだとか……アズはとにかく褒められるのに慣れてないらしい。

それで隙を生じさせることも、可能なのではないかと?

結果はこの通り、大成功だ。


拘束から解いてあげると、アズはそのまま野原に寝そべり空を見上げていた。

ただ何も言わずに、拳を何度も地面に打ち付けている。

よく見ると、目に薄っすらと涙が浮かんでいるのが見えた。


やっぱり悔しいらしい。

アズが勝負ことに対して引かない性格なのも知っているし、負けず嫌いなことも知ってる。


「あ~もう最悪。負けたのにちょっと褒められた嬉しさも混じってるのが、何よりも気持ち悪くて最悪だわ。くそっ!悔しい!全てが悔しい!悔しい!悔しい!悔しい!」


アズの声は少し震えていた。

そのため言葉が聞き取りづらくはあるが、悔しいと連呼してることくらい分かった。

そんなに悔しいって言われちゃうと、だがそれでいい!って言いたくなっちゃうな。


そのままアズは三十秒くらい何も言わずに、大の字で空を見ながら寝そべっていた。

僕もアズの徽章を持ちながら、ぼ~っと流れていく雲を見上げる。


……っと、突然起き上がって僕の手から徽章をふんだくった。

勢いすごくてちょっとバランスを崩しそうになる。

まあ、逆上して殴られるよりはましだ。


「はぁ、負けたわよ。認めるわ。この勝負であんたが言いたいことは大体分かったわよ。私の弱点は瞬時の防御魔法でしょ?くそっ……合ってるわよね?」


僕は何も言わずに、その場で頷いた。

言葉で言われるより何倍もアズの心には染み渡ったことだろう。

徽章鬼をやって良かった、そんな感じがする。


「はぁ……マジで最悪。で、あんたの願いってのは何なのよ?」


「え!?願い……?」


「は?忘れたの?勝負で勝った方が、相手に何でも一つ命令できるって決めたでしょ!」


「あ、ああ……。」


そんなことすっかり忘れた。

そう言えばアズが乗り気になるならと思って、そんなルールを設けた気がする。


やべ……どうしよう。何も考えてない。

だからと言って無いとか言ったら、絶対蹴られるよな。

勝負ごとに対してアズは絶対曲げない性格だし。


して欲しいこと……して欲しいこと……


そう言えば夏らしいことしたいな~とか思ってたな。

ただ海とか遠いし、やっぱり面倒。

他に夏らしいこと……あっ!


「アズ、イーグル街で二週間後くらいに夏祭りあるの知ってる?」


「夏祭り?……そう言えばそんな広告、掲示板に貼ってあったわね。」


「それ一緒に行こうよ。」


「え?えっと……本当にそれでいいの?何でもの命令にしては弱くないかしら?」


「いや。逆に命令じゃないと、一緒に行ってくれないだろ?面倒とか言って。」


「そ、そんなことないわよ!まったく……もう変更無しね!夏祭りで決定!」


「う、うん。よろしく。」


とりあえず、夏祭りに行くことに決定した。

夏祭りとか行くの久しぶりだな……幼少の頃に行ったくらいかな。

けど夏っぽいしいいよね。


今年の夏は、いつもの夏とは一味違くなる予感がする。

アズも女性と言えば女性。女性と二人で夏祭り……うん、めちゃくちゃリア充っぽいな。


「結局デートできるなら、結果オーライかしら……。」


「ん?何か言った?」


「い、言ってないわよ!」


「痛っ!?」


何か良く分からないけど、いきなり殴られた。

こんな唐突な暴力には、パワハラ対策を習得した僕でも流石に対応できなかった……。


読んで頂き感謝申し上げます。

感想、ブックマーク登録等して頂ければ幸いです。

モチベに繋がるので、感想頂けると嬉しいです。

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